久々に映画館に行ってきました。
「生きる LIVING」
黒澤明監督の名作「生きる」の英国リメイク版です。
脚本はノーベル賞作家のカズオ・イシグロさん。
監督は、オリバー・ハーバーマスさん。
この映画は、今年のアカデミー賞候補に上っているとのことです。
日本人として、ちょっと嬉しいですね。
舞台は、1953年のロンドン。
黒澤監督が「いきる」を撮った時期に設定されています。
戦勝国も戦敗国と同じように、復興に向けて社会的な混乱が続いています。
主役は、ビル・ナイが演じる役所の公務員・市民課のウィリアムズ課長。
生真面目で冗談も言わない堅物管理職、その彼が末期がんの宣告を受けるところから物語は始まります。
ショックを受けた彼は、貯金の半分を降ろして旅に出たり、飲めない酒を飲み歩いたり、ナイトクラブに出入りしたりしますが、何の憂さ晴らしにもならないことを悟ります。
無断欠勤の後、やっと出勤。
そこから、今まで棚上げにしていた市民から陳情・児童公園の設置に向けて真剣に仕事を前に進めて行きます・・・。
この映画のキャッチコピーは、「最期を知り、人生が輝く」。
「人生を生きる」こととは、「自分の人生を生きる」ということ。
人生の最期に決して後悔しないことが、最高の幸せということをこの映画は伝えます。
自利より他利・・・世のため、人のため、社会のため、地域のために貢献することが、人生の最期に出来れば、それはベストということなんでしょう。
主演のビル・ナイさんは御年72歳・・・実に渋いです。
志村喬さんの英国ジェントルマン版です。
助演女優はエイミー・ルー・ウッドさん。
飛びぬけて明るい性格のサラリーウーマンを演じています。
長年のサラリーマン生活、社畜生活で、事務的仕事、役人的な働き方でコミュニケーションも取れないウィリアムズ課長は、彼女の性格に憧れます・・・どうすれば、そんな風になれるのか?
長年の社畜生活で身に着けた処世術や態度・・・そう簡単には脱皮出来ません。
「働いたフリ」「他責」「忙しいフリ」「上には逆らわない」「見ざる・言わざる・聞かざる」「保身」・・・。
長年サラリーマンをされてきた方々には、ぜひ観ていただきたい作品です。
黒澤監督の「生きる」で主演を演じた名優・志村喬さん。
ラストシーンは、雪が降る児童公園のブランコに乗って歌を歌い続けます。
「いのち短し、恋せよ乙女・・・」
英国版「生きる」も同じシチュエーション。
涙、涙のラストシーン・・・。
違う角度から人生を考えさせてくれる、おススメの作品です。