中小企業診断協会の月刊誌「企業診断」の書評を二年間続けさせていただきました。
診断士の書いた書籍について書評を付けるというもの。
顔写真入りで書評が掲載されるため、けっこうプレッシャーです。
三回読み、ポイントを抽出し、著者の当該図書に込めた想いに想像を巡らしながら書評を打ち込んでいきました。
新しい情報が入ること、図書をいただけること、文章を書けること、それが活字になって雑誌に掲載されること等、書評書きにはさまざまなメリットがありました。
興味深い図書には、著者と直接連絡を取りあったりして、その文脈を知ることができました。
今回の書評は、高橋美紀さんの新刊。
バリバリのキャリア女史。
魂のこもった一冊でした。
新しいワークデザインを提示する同書のコンテンツは、近い将来現実のものとなるかもしれません。
企業診断2013年4月号より
「コマギレ勤務」が社会を変える 多様な働き方を目指して~
高橋美紀著 労働調査会
多様な雇用形態の社員が活き活きと働き、成果を産みだし、社会に貢献し続ける組織・・・これは、会社の理想型、ユートピアである。
ワークライフバランス、男女参画社会などの掛け声はあるものの、現実問題として日本の雇用環境は、「健康な男性、長期勤務、長時間労働」という同質的な価値観の中のあるといっても過言ではない。労働法や人事労務制度も正社員という眼鏡でしか捉えられなくなる危険性を秘めているのである。
著者の提唱している「コマギレ勤務」社員とは、短時間勤務する正社員のこと。コマギレ八時間労働がスタンダードとなっている日本の雇用環境の中で、コマギレ勤務社員を組み込むことによりニッポンの会社、社会が変わると提言。
非正規社員が労働者人口の三分の一を占めるようになった今、フルタイム労働を標準に制度や仕組みは考えられない。同一労働同一価値の思想を軸にして雇用制度を再考しなければならない時期に来ているのである。本書では、コマギレ勤務を会社組織の中に組み込むための施策についても解説しており、仕事の効率化・改善、体制整備、就業場所の多様化などの方法論について検討できる切り口も提示されている。
本書が単なる「あるべき」論でないことは、あとがきからも推察される。均等法とともに女性の総合職として働き、結婚し、子育てをする・・・その中で体感したニッポンの会社の雇用の偏りを喝破している。今や女性、障がい者、外国人、高齢者はマイノリティではない。彼彼女たちが、その持てる能力や才能をフルに発揮し社会に貢献するソーシャル・カンパニーがスタンダードとなる時代を向かえている。従来のステレオタイプを切り替えるためにも一読いただきたい一冊である。
機会があれば、また、書評書きに取り組んでみたいと思います。