高齢者の雇用、若年層の雇用、女性の雇用、外国人の雇用・・・。
今、ニッポンの雇用は、大きな転機を向かえています。
年金支給の65歳化、若者の就職難、非正規雇用の増加・・・どこかでつながっているような気がします。
「雇用再生 持続可能な働き方を考える」
清家篤著 NHK出版 1000円+税
著者は、慶応義塾塾長。
政府の委員なども務めた労働経済学の第一人者。
多用な職務の中で著書を出されることは凄いことだと思います。
同書は、豊富なデータやグラフを示しながら、雇用問題のコアに迫ろうとする取り組み。
学者としてのニュートラルな視点から、スタンダードなロジックが展開されています。
・失業率が2%台で推移していたものの1993年ころから上昇基調。今では4%台。
・国際的にみるとイタリアやフランスは失業率は10%。日本は決して高いとはいえない(統計の取り方が違うにせよ)。
・増える非正規雇用、減少する正規雇用者。今や4:6の比率に近づく。
・高齢者・・・60歳~64歳の労働力率が日本は突出して高い。
・今やリーマン9割、自営業1割。1960年ころに逆転して日本は雇用社会に突入。
・若年層の失業率。日本7.9%。スペイン53%!。イタリア35%、フランス23%。新卒一括採用が機能している。
・正規雇用者は1995年をピークに減少。いまや3340万人に。
さまざまな視点からの労働経済的な分析が、日本の雇用の課題をあぶりだしていくように構成されています。
目次
1.いまなぜ、働き方を考えるのか
2.経済の構造変化と雇用制度
3.終身雇用制度のゆくえ
4.年功賃金をどう見直せばよいのか
5.対等な労使関係をどう築くか
6.格差是正は可能か
7.付加価値生産性を高める
最終章で、これからのニッポンの雇用について言及していますが、これがなかなか興味深い話になっています。
これからの日本を支える人材・・・それは3種類
1.オタク(ギーク)
2.精神分析家(シュリンク)
3.匠(タクミ)
IT、デジタル、サービス分野の産業が拡張していくこれから、
「才ある個が組織の中で働く時代」が来ると提言しています。
ニッポンの雇用について考えるには、ニュートラルでスタンダードな一冊だと思います。