雇用をめぐる安倍政権の打ち出し、企業経営を巡る環境変化で大きな岐路に立っているニッポンの雇用。
9割がリーマンになっているわが国、少子高齢社会に突入した今、様々な課題が浮き彫りになっています。
「雇用改革の真実」
大内伸哉著
日経プレミアシリーズ 日本経済新聞出版社 850円+税
著者は、神戸大学大学院法学研究科教授。
労働法の切り口から雇用について解説していきます。
全体的にかなり辛口でストレート。
そこまで言っちゃっていいの?という快刀ぶりです。
整理解雇の4要件、労働契約法などでガンジガラメになっている解雇法制ですが、日本のルールは欧州のそれに近いこと、解雇しないかわりに人事権が広いこと、金銭解決の方向性もあることを主張します。
第1章では、正論を述べて暗殺されたイタリアの労働法学者のことも書かれており、なかなか読みごたえありの一冊です。
さらに有期雇用を規制しても正社員が増えないことにも言及。
有期労働者を守るはずのルールが雇用を不安定にしていること、無期転換ルールがかえって契約打ち切りを招いていることとします。
これは、民主党政権時の社会実験でも「失敗」という実験結果が出ており、正社員の数はドンドン減少している状況にあります。
産業を支える労働のベースをきっちり作り込むことが、
ニッポンが国際社会を生き抜いていくために必要不可欠なことのように思えます。
目次
1.解雇しやすくなれば働くチャンスが広がる
2.限定正社員が働き方を変える
3.有期雇用を規制しても正社員は増えない
4.派遣はむしろもっと活用すべき
5.政府が賃上げさせても労働者は豊かにならない
6.ホワイトカラーエグゼンプションは悪法ではない!
7.育児休業の充実は女性にとって朗報か
8.定年延長で若者が犠牲になる
最終章では、定年延長問題と若年層の雇用の問題について取り上げています。
米国のように成果を出し続けている限り定年のない社会・・・実力主義社会について解説。
高年齢者にプロ野球選手のような働き方を取り入れれば、若年層との共存も可能であることを解説。
また、若年層に対する支援を強化すること、若年層と同じように猛烈に働けない高年齢者に配慮した弾力的な勤務形態の導入といった解決策について提言しています。
9割がリーマンのニッポンは、組織雇用の社会。
個人的には、会社人間だけを育成するサラリーパースン養成教育システムの中に、
すこしでもいいから自営業、起業を志向する人たちを育成する教育システムがあっていいような気がします。
事務をキチンとこなす役人はたくさん輩出できても、
アップルやフェイスブックのようなイノベーションがなかなか出てこないニッポン社会。
廃業率が開業率を上回り続けている日本産業界。そこからの脱却という視点が大切なようにも思います。