「ユーミンの罪」
酒井順子著
講談社現代新書 800円+税
ユーミンに対しては、いい夢を見させてもらったという気持ちと、
あんな夢さえ見なければという気持ちが入り混じる感覚を抱く人が多いのではないでしょうか。
かくいう私もその一人。
ユーミンを聴かずにもっと自分の足元を見ていたら、違う人生もあったかもね、とも思います。
著者の酒井さんは、1966年生まれのエッセイスト。
ユーミン・・・松任谷由美さんの20のアルバムを時代の背景とともにコメントを入れていくという面白い構成の本です。
酒井さんは、時代の背景とともにユーミンのアルバムを有機的に結びつけ、女心と男心を客観的に分析しつつ、エッセイストとしてのエスプリとユーモアを交えて解説を展開します。
簡潔で軽快な文書は、なかなか素敵です。
現在、40歳代、50歳代の女性、そして昔、アッシーくん、ミツグくん、メッシーくんだった男性にぜひとも一読いただきたい一冊です。
目次
1.ひこうき雲 1973年 ・・・ 開かれたパンドラの箱
2.ミスリム 1974年 ・・・ ダイいから泣かない
3.コバルト アワー 1975年 近過去への郷愁
4.14番目の月 1976年 女性の自立と助手席と
5.流線型80 1978年 恋愛と自己愛のあいだ
6.オリーブ 1979年 除湿機能とポップ
7.悲しいほどお天気 1979年 外は革新、中は保守
8.サーフ&スノウ つれてって文化隆盛へ
9.昨晩お会いしましょう 1981年 祭りの終わり
10.パールピアス 1982年 ブスと嫉妬の調理法
11.リインカネーション 1983年 時を超越したい
12.ボイジャー 1983年 女に好かれる女
13.ノーサイド 1984年 恋愛格差と上から目線
14.ダディダ 1985年 負け犬の源流
15.アラームアラモード 1986年 1980年代の軽み
16.ダイヤモンドダストが消えぬまに 1987年 結婚という最終目的
17.ダィライトスライト・ライトキッス 1988年 恋愛のゲーム化
18.ラヴ・ウォーズ 1989年 欲しいものは奪い取れ
19.天国のドア 1990年 永遠と刹那、聖と俗
20.ダウンパープル 1991年 終わりと始まり
酒井さんのつけるアルバムのキャッチコピー・・・本当に鋭い切り口だと思います。
特に、日本経済のバブルの前後を解説するキャッチフレーズは、へたな経済学者が説く解説よりも説得力に溢れています。
ユーミンのアルバムを持つ全ての方に一読いただきたい一冊です。