日経ビジネス2013.2.4号に掲載されている「経営の原点を再考せよ」。
とても面白く読みました。
マイケル・ポーター博士(ハーバード大学教授)と「ほぼ日刊イトイ新聞」編集長の糸井重里さん。
2012年度のポーター賞を「ほぼ日」が受賞したことを契機とした対談ということでした。
このポーター賞は、一橋大学大学院国際企業戦略研究科が主催するもので、独自性、優位性のある企業を表彰するというものです。
今回は、味の素ファインテクノ電子材料事業部、クレディセゾン、リクルート旅行営業統括部と東京糸井重里事務所の4社が受賞したとのことでした。
この対談の中で、糸井さんは「仕事をするのが嫌というのが前提」と主張。
「本当は誰も働きたいなんて思ってないんじゃないか」という疑いから組織の在り方や仕事の仕方を考えてきたとのことでした。
少しワーカホリックなわれわれオジサンからすれば、かなりの違和感がありますが、今の若い世代のことを考えると、こうしたマネジメントこそが働く人のポテンシャルを引き出すのかなとも思います。
アップルやグーグル、ホディショップやパタゴニア・・・。
趣味、嗜好の延長上に得意技があると考える企業がユニークで独自性、優位性をキープしているように思います。
そうした中、独自のビジネスモデルを確立しつつある糸井さんの経営も、若手社員のパワー、やる気を引き出しているのではないかと思います。
自分自身、糸井さんに憧れて、最初に選んだのが広告代理店。
当時の「おいしい生活」「不思議、大好き」といった西武百貨店のコピーに大きな衝撃を受けるとともに、コピーライターの学校に通ったり、広告の本を読み漁ったり、その時代のヒーローでもありました。
仲畑さんや真木さんなど日本の広告界にはカリスマ・コピーライターが数多く存在していました。
糸井さんは、学生運動の闘士として活動、でも資本主義の権化たる広告業界で活躍・・・そのアンビバレントな魅力が当時の若者を引き付けていたのだと思います。
そして、今回の対談。
経済界から距離をおき、独自なビジネスを立ち上げ成功させた糸井さんが公募式のポーター賞に応募、しかも「競争戦略」のグルであるポーター博士と対談・・・。
そのギャップも面白いと思います。
昔であれば、「糸井もダラクしたな」とか「ひよったな」とかの批判が渦巻くところだと思いますが、
今はその落差、対極から対極へ振ることが、人々の興味、関心を惹くのだと思います。
ポーター賞への応募やポーター博士との対談も糸井さんの深い洞察力、マスメディア上の訴求力、社員へのインナープロモーション等の計算をしつくしての戦略だったのだと思います。
ポーター博士の偉業はスゴイし、その精緻な競争戦略理論は、「マーケティングの神様」と呼んでいいほどの天才です。
しかしながら、時代(次代)のキーワードは「ソーシャル」。
競争から共創へという流れがメインストリームなのです。
まだまだポーター理論は存続するとは思いますが、
今回の対談を読みながら、ポストポーターがどのようなものになるかを考えさせられた次第です。