7日(月)。わが家に来てから436日目を迎え、人間の衣装を着てポーズを取るディズニーのキャラクターを不思議そうに見つめるモコタロです
なんでアヒルやネズミが服を着てるんだ???
閑話休題
昨日の朝日朝刊第1面の鷲田清一氏のコラム『折々のことば』は「傷つきやすいというのも能力の一つです」という打楽器奏者・山本毅氏の言葉を紹介しています
「『どーだ』とばかりに、自信満々の演奏をする人がいる。それはそれで立派だが、競争を勝ち抜かないと職につけない音楽界の現状がそうさせているところがあると、打楽器奏者は言う 音楽は人を励まし、奮い立たせもするが、人を慈しみ、慰めるものである。傷ついた心によく共振するのは、傷つきやすい繊細な感受性だ。そもそも音楽は競い合うようなものではない」
音楽とは何か?と言った時に、その答えは人それぞれでしょう コラムニストの言うように、ある人にとっては「励まし、奮い立たせる」ものかも知れないし、ある人にとっては「慈しみ、慰める」ものかも知れません。ただ、共通して言えるのは最後の言葉「そもそも音楽は争い合うようなものではない」ということだと思います
私自身が音楽をどのように思っているかと言えば、「何の役にも立たないもの。でも、無くては生きていけないもの」です 同じ芸術でも『美術』は作品を目で見ることが出来て、後に残るけれど、『音楽』は演奏するそばから音が消えていく。CDなどの音のパッケージは別として、2度と同じ演奏は出来ない。そこが良いと思っています。私が生の演奏にこだわるのはそういうところにあります
も一度、閑話休題
昨日、ミューザ川崎で「第6回音楽大学オーケストラ・フェスティバル」を聴きました ミューザ川崎でも巨大なクリスマス・ツリーがお出迎えです。
さて、この日のコンサートは①田中良和+東邦音楽大学がシベリウス「交響曲第2番ニ長調」を、②現田茂夫+東京音楽大学がムソルグスキー/ラヴェル「組曲”展覧会の絵”」を、③尾高忠明+国立音楽大学がラフマニノフ「交響曲第2番ホ短調」を、それぞれ演奏しました
自席は2階の2LB5列12番、左ブロック右通路側です。会場は7割方埋まっている感じでしょうか 最初は東邦音楽大学の演奏です。演奏に先立ち、お互いのエールの交換ということで、国立音楽大学のブラスにより同大・紺野君作曲によるファンファーレが華々しく演奏されました
学生たちが登場します。総勢60数人でしょうか。学生オケにしては小規模です。何人か学生ではないベテランが混じっています ステージに登場した指揮者・田中良和を見たとき、「彼も随分老けたなあ、あまり覇気を感じないなあ」と思いました
シベリウスの「交響曲第2番ニ長調」は1902年3月8日、ヘルシンキ大学で作曲者自身の指揮により初演されました。その当時から好評を博したようで、現代まで人気が続いています
オーケストラというのは指揮者に左右されるようで 、どうも若く溌剌とした覇気を感じません それでも、後半にいくにしたがって管楽器、弦楽器、打楽器とも熱を帯びた演奏を展開し、感動のフィナーレを飾りました 演奏後、オケのメンバーは立って拍手を受けますが、指揮者が退場してもコンマスが座らないのでオケのメンバーが困った様子でした これも学生オケの演奏会ならではのことで、微笑ましくさえ思いました
20分の休憩をはさんで2番目は東京音楽大学の演奏です 演奏に先立って東邦音大のブラスにより同大・福角さん作曲によるファンファーレが清々しく演奏されました
学生たちが登場します。今度は打って変わって100人規模の大オーケストラです 原田茂夫が登場し、ムソルグスキー作曲ラヴェル編曲による「展覧会の絵」の演奏に入ります 彼は指揮棒を持たず暗譜で指揮をします。この大学は伝統的にブラス・セクションが充実しており、そうした特性を生かした選曲だと思われます
狙い通り、管楽器によるソロの部分は素晴らしく、とくにトランペット奏者の「サミュエル・ゴルデンべルクとシュムイレ」における速吹きはプロ顔負けの演奏でした 100人規模の総合力によってマスとしての力を発揮し、会場の聴衆を圧倒しました
再び20分の休憩を置いて、最後は国立音楽大学の演奏です。最初に東京音大のブラスによって同大・熊谷君の作曲によるファンファーレが高らかに演奏されました
学生たちが登場します。東京音大ほどではないにしても、90人規模の威容を誇ります この日演奏した3つのオケの中で、学生以外の演奏者が一番多かったのがこのオケです。低弦を中心に年嵩の演奏者が目立ちました 考えようによっては、それらのセクションを専攻する学生が少ないということでしょうか? オケの態勢を見て分かったのは、3つのオーケストラに共通していたのは、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスというオーソドックスな編成をとっていたということです
指揮者・尾高忠明が登場します。彼もタクトを持たず譜面もありません 演奏するのはラフマニノフ「交響曲第2番ホ短調」です。まさに尾高らしい選曲だと思います ラフマニノフがこの曲を作曲したのは、ロシア革命が終わった後の1906年~07年のことでした。この曲の特徴を一言で言い表すとすれば「ロマンティシズムの極致」です 4つの楽章から成り、それぞれの楽章に特徴がありますが、一番ラフマニノフらしいロマンティックな部分は第3楽章「アダージョ」でしょう クラリネットのソロと、弦楽器によるアンサンブルが素晴らしいロマンそのものの音楽です
学生たちは尾高の指揮のもと、流れるようなラフマニノフのロマンの音楽をダイナミックに、思い入れたっぷりに演奏し、感動の拍手を呼びました
午後3時に開演したこのコンサートは6時25分に幕を閉じました 3つのオケを聴いて気が付いたのは、昨年と比較して、どの学生オケも女子学生が多いことには変わりないものの、男子学生の比率が高くなったということです。これは今年の大きな特徴かもしれません
いずれにしても、学生たちの真摯な演奏は、プロ並みとも言えるようなレヴェルの高いものでした 私が常々言っているように「学生オケをバカにしてはいけない」ということです