14日(月)。わが家に来てから443日目を迎え、お兄ちゃんと闘牛ごっこをして遊ぶモコタロです
ほれほれ こっちだ こっちだ かかってこい!
あっ そらされた いいとこ見せようと思ったのに
遊んであげたのに お兄ちゃん どっかにいっちゃったよ
閑話休題
昨日、サントリーホールで東京交響楽団の第636回定期演奏会を聴きました プログラムは①ムソルグスキー「交響詩”禿山の一夜」(リムスキー・コルサコフ編)、②ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」、③チャイコフスキー「交響曲第5番ホ短調」です。指揮は2002年に巨匠スヴェトラーノフの後任としてロシア国立交響楽団の首席指揮者に就任しているマルク・ゴレンシュテイン、②のピアノ独奏はモスクワ音楽院出身のセルゲイ・カスプロフです
1曲目のムソルグスキーの交響詩「禿山の一夜」は、リムスキー・コルサコフの編曲によるバージョンで演奏されます この作品は、もともとムソルグスキーがゴーゴリの短編「聖ヨハネ祭前夜」にインスピレーションを受けてオペラを作ろうとしたものの完成に至らず、1867年にオーケストラ用に作曲したものです。それは現在「原典版」と呼ばれています その後、リムスキー・コルサコフがこの作品を「洗練さに欠ける」として編曲したということです
コンマスのグレブ・二キティンのもとチューニングが行われ、指揮者ゴレンシュテインが登場します。一見、80年代にマーラーブームの一角を担ったガリー・ベルティー二に風貌が似ています ゴレンシュテインのタクトで「禿山の一夜」の不気味な音楽が始まります これはこれで良いのですが、私はかつて一度聴いた、洗練されていない荒々しい「原典版」による演奏の方が好きです いかにも42歳の誕生日にブランデーの大瓶を一気飲みして発作を起こし急逝したムソルグスキーらしい曲だと思います。良い人でした。面識はありませんが。惜しい人を亡くしました
段差が付いた第1ヴァイオリンの床がコンピュータ制御により平らにならされ、ステージ左サイドにあったグランドピアノがセンターに移動します。2曲目のラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」を演奏するため、ソリストのセルゲイ・カスプロフが指揮者とともに登場します かなりの長身です。ピアノの前で会場に一礼したかと思ったら、ニコリともせずにすぐにピアノに向かいました。多くのピアニストは指揮者やコンマスと握手をしたりして、おもむろにピアノに向かいますが、この人は直球勝負の人のようです。あるいは緊張しているのかもしれません
この曲の名前にある「パガニーニの主題」とはパガニーニの「24の奇想曲」の最後の第24番の「主題と変奏」の「主題」のことを指します カスプロフはゴレンシュテインの確かなサポートのもと、高度なテクニックによって変奏曲を紡いでいきます この曲で一番有名な第18変奏「アンダンテ・カンタービレ」こそラフマニノフのロマンティシズムが凝縮された曲です 何度聴いても背筋が寒くなるほど感動します
会場いっぱいの拍手とブラボーに、カスプロフはいきなり高音部での超高速演奏を始めました。何の曲か知りませんが、人間の手でこんな高速演奏が可能なのだろうか と思うほど超絶技巧・超高速で最後まで弾き切りました あとでロビーの掲示で確かめたらヴィラ・ロボス作曲「赤ちゃん族」第1組曲「お人形たち」~7「道化人形」とのことでした プログラムに掲載された彼のプロフィールによると、リヒテル国際ピアノコンクールでは、審査員長の鬼才ヴァレリー・アファナシエフから絶賛されたとのこと。さもありなん、です
プログラム後半はチャイコフスキー「交響曲第5番ホ短調」です。この曲の大きな特徴は、第1楽章に登場する「運命」の主題が、最初は絶望的な雰囲気の曲想なのに、第4楽章に登場するときは勝利のテーマとして現れるということです ベートーヴェンの「苦悩から歓喜へ」「闇から光へ」というテーマを思い出します
この曲で一番好きなのは第2楽章「アンダンテ・カンタービレ コン・アルクーナ・リチェンツァ」です 「コン~」というのは「ある程度自由に」という意味だそうです。ホルンが抒情的なテーマを奏で、クラリネットとオーボエが絡んで演奏されますが、メロディー・メーカー、チャイコフスキーの面目躍如といったところです
最後の第4楽章「フィナーレ」は勝利の音楽です。第1楽章で「暗いMAX」だったテーマが、この楽章では堂々たる「勝利MAX」のテーマに変貌しています
最後まで聴いてみて思います。マルク・ゴレンシュテインのタクトさばきは見事でした