2日(日).わが家に来てから今日で915日目を迎え,トランプ米大統領が貿易赤字の削減に向けた2つの大統領令に署名したというニュースを見て感想を述べるモコタロです
貿易不均衡と言うけど 原因はアメリカのメーカーの技術力が劣ってるからじゃないの?
「クラシックのとびら~作曲家・加藤昌則クラシック入門講座」のチケットを取りました 第1回は5月25日(木)で テーマは「室内楽」,第2回は9月14日(木)で テーマは「独奏」です 時間はいずれも午後7時開演の90分コース,場所は文京シビック・小ホールです 1講座2,000円ですが,2講座3,500円のセット券を取りました 音大を出ているわけでもなく,学生時代にブラスバンドをやっていたわけでもない私のような音楽素人にとって,こういう講座は有難く 勉強になります クラシック人口を増やす意味でも どんどんやって欲しいと思います
国民文化研究会/新潮社編「小林秀雄 学生との対話」(新潮文庫)を読み終わりました クラシック好きで小林秀雄の「モオツァルト」を読んだことのない人はいないでしょう 私などは何回繰り返し読んだか分からないほど読みました その名著を書いた小林秀雄は昭和36年から53年にかけて,雲仙や阿蘇など九州各地で5回ほど全国60余の大学から集まった3~400名の学生たちに講義を行い,終了後1時間程度質疑に応えていました 本書には講義のうち「文学の雑感」「信ずることと知ること」と,「現代思想について」他の講義後の学生との対話が収められています
学生たちからの質問に対する小林秀雄のスタンスが一番良く表れているのは,「講義『現代思想について』後の学生との対話」の冒頭での発言です
「さあ,何でも聞いてください.何でも聞いてくれてかまわないが,僕はどんな質問にも答えるということではありませんからね.僕の仕事は質問に答えることではないですから(会場笑).むしろ,僕はいつだって問題を出したい立場なのです.(途中略) うまく質問するのは,なかなか難しい.問題がなければ質問しないわけだが,その問題が間違っていたらどうしようもないでしょう.うまく問題を捉えて,質問をしなければならない.たとえば『自分はどう生活したらいいでしょうか?』と質問する.これは問題を捉えていない証拠ですね.うまく質問してください.何でも話しますから」
ひと言でいえば,ただ単に「分からないから質問する」のではなく「問題意識を持って質問をしなさい」ということだと思います
示唆に富むフレーズがそこかしこに登場するので,本がドッグイヤーだらけなのですが,ここではクラシック音楽にも通用しそうな対話をご紹介します 「講義『本居宣長をめぐって』後の学生との対話」の中で 学生が,
「先生は『歌をわかるためには何回も読んでみて,歌詠みの顔が現れてくるまで読まなくては,なかなかわかるものではない』とおっしゃいましたが,僕が歌を読む時,自分の身近なことや わずかな経験を通すことでしか理解できていないと感じます そういう読み方でいいのでしょうか?」
と質問した時,小林秀雄は次のように答えています
「あなたがいくら読んだって,あなたの今のレベルしかわからないよね.あなたが将来70歳になって同じ歌を読んだら,きっと面白いでしょう.今のあなたが分からなくても,経験を重ねて別のあなたになったらわかるかもしれない.昔の人の心ばえを知るということでも,今は知ることができないかもしれない.あなたが経験を積み重ねて,もっと年を取るとわかるかもしれません.それが古典なのです.古典が長生きするというのはそういうことです.子供だけが読んでいるのではない.人生がおしまいになろうとして,初めてわかる歌があります.そういうものです.古典を読むというのは,その場その場の取引です.だから,二度も三度も読めるのです.古典が生きているということは,君が生きているということなのです.ちっとも違いはありません.古典は,どんな君にも応じるんですよ.青年の君にも,壮年の君にも,『万葉集』は応じます」
小林秀雄は,ここで古典の代表として「万葉集」を例にとって語っていますが,「古典」を「クラシック音楽」と置き換えても通じるところがあると思います
彼の発言の一部を言い換えてみましょう
「クラシック音楽を聴くということは,その場その場の取引です.だから2度も3度も聴けるのです.クラシック音楽が生きているということは,聴いている君が生きているということなのです」
大作「本居宣長」が難しくても,この「対話」は小林秀雄の生の声を聞くようで,分かり易く書かれています.お薦めします