6日(日)その2.よい子は「その1」から見てね。モコタロはそちらに出演しています
昨日 午後4時から東京国際フォーラム・ホールCで「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2018」第3日目の「公演番号M344」のコンサートを聴きました プログラムは①モーツアルト:歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲、②ショパン「ピアノ協奏曲第1番ホ短調」です 管弦楽=ロイヤル・ノーザン・シンフォニア、指揮と②のピアノ=ラルス・フォークトです
自席は1階16列24番、センターブロック右から4つ目です
ステージ中央にはグランドピアノが、鍵盤が見えるように設置されています。つまりフォークトはピアノを弾きながら指揮をする(弾き振り)ことになります
1曲目はモーツァルト(1756-1791)の歌劇「皇帝ティートの慈悲K.621」序曲です このオペラは、モーツアルト最晩年の1791年に、レオポルト2世がボヘミア王としてプラハで戴冠式を挙行する際の祝祭オペラとして作曲されました
フォークトの指揮で演奏が開始されます。オーボエとフルートが素晴らしい この曲を聴いていて、数年前にMETライブでこのオペラを歌ったメゾソプラノ、ガランチャのことを思い出しました
2曲目はショパン(1810-1849)の「ピアノ協奏曲第1番ホ短調」です この作品は1830年(ショパン20歳の時)に作曲されました。第1番とされていますが、これは出版順の番号で、実質的には第2番に当たります 第1楽章「アレグロ・マエストーソ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「ロンド:ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります
聴衆に背を向けピアノに対峙するフォークトの合図で第1楽章が開始されます 重厚な長い序奏が続き、フォークトのピアノが入ります。普通のピアニストはこの時、気合を入れてドーンと入りますが、ラクリンは肩の力を抜いてごく自然に入ります ベルリン・フィル初のレジデント・ピアニストとなったフォークトの特徴は、この自然体でしょうか 第2楽章は、一音一音の粒立ちがとても綺麗で、抒情的に演奏されます 第3楽章に入ると、これも自然体で軽やかに演奏します 会場いっぱいの聴衆から、”ホンモノ”のピアニスト兼指揮者に対して心からの拍手が送られました
次いで、午後6時15分からホールCで「公演番号M345」のコンサートを聴きました プログラムは貴志康一「交響曲『仏陀』」です 管弦楽=東京シティ・フィル、指揮=ベトナム国立交響楽団音楽監督・首席指揮者の本名徹次です
自席は1階16列27番、センターブロック右通路側です。作品が地味なせいか、会場の後方はがら空きです。何とももったいない話です
オケのメンバーが配置に着きます。弦は左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。コンマスは戸澤哲夫氏です
この曲は貴志康一(1909-37)が幼いころから親しんできた仏教を動機として作曲されました 第1楽章「モルト・ソステヌート~アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アダージョ」の4楽章から成ります 1934年初演時のパンフレットに各楽章の説明が記されているとのことで、第1楽章「アジアの果てしない広がりとブッダの登場」、第2楽章「気高く慈悲深いマヤ夫人」、第3楽章「閻魔が亡者を裁く地獄」、第4楽章「ブッダの死」となっています
この曲は1934年に貴志の指揮、ベルリン・フィルによって初演されました。指揮者としても高く評価されていた貴志でしたが、28歳の若さで病死しました
本名徹次の指揮で第1楽章が低弦と金管によって重々しく開始されます そうかと思っていると、急に「ヒーロー登場」といった躍動感あふれる曲想に転換し 驚きます いかにも現代そのものです。第2楽章はフルート、オーボエが慈愛に満ちたメロディーを美しく奏でます スケルツォ風の第3楽章では、ファゴットが活躍しますが、何となくデュカスの「魔法使いの弟子」の音楽を彷彿とさせます 第4楽章では荘厳かつ悲しみに満ちた曲想が展開しますが、コンマス戸澤氏のソロが素晴らしい 静かに穏やかに迎えるフィナーレではトロンボーンの抑制された演奏が感動を呼びました
全体を聴いた印象は、思っていたよりもずっと聴きやすい曲で、とても80年も前に作曲された作品とは思えないほど身近に感じました 東京シティ・フィルの熱演に拍手を送ります
最後に、午後8時15分からホールCで「公演番号M346」のコンサートを聴きました プログラムは①ブリテン「ラクリメ」、②モーツアルト「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K.364」です ヴァイオリン・ヴィオラ・指揮=ジュリアン・ラクリン、ヴィオラ=サラ・マクエルレイヴィ、管弦楽=ロイヤル・ノーザン・シンフォニアです
自席は1階16列24番、センターブロック右から4つ目です
1曲目のブリテン(1913-1976)の「ラクリメ」は、イギリスの作曲家ジョン・ダウランド(1563-1626)のリュート歌曲「もしぼくの嘆きが」から採られています
ロイヤル・ノーザン・シンフォニアの首席客員指揮者を務めるジュリアン・ラクリンがヴィオラを弾き振りをします バックは弦楽器のみ16人態勢です。全体的に悲しみに満ちた曲想ですが、聴いていて同じブリテンの歌劇「ピーター・グライムズ」の間奏曲を思い出しました 曲の醸し出す雰囲気が何となくそんな風に感じました
2曲目はモーツアルト「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K.364」です この曲は1777年9月から79年1月にかけての「マンハイム・パリ旅行」からザルツブルクに帰郷後に作曲されました 第1楽章「アレグロ・マエストーソ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「プレスト」の3楽章から成ります
ラクリンは今度はヴァイオリンを弾き振りします ヴィオラはクリーヴランド音楽院出身のサラ・マクエルレイヴィですが、とても背の高いスマートな美人です
ラクリンの合図で第1楽章が開始されます。彼はオケの方を向き直って指揮をとったり、客席の方に向いて演奏したりと、忙しなく動きます ヴァイオリンの演奏も指揮もアグレッシブです ヴィオラのサラとの丁々発止の掛け合いが楽しく、「これこそモーツアルト」と思わせます。モーツアルトの演奏はこうでなければなりません コンマス以下、オケのメンバーも楽しそうに演奏しています。第2楽章は、ヴァイオリンとヴィオラがまるでテノールとアルトがゆったりしたテンポで会話を交わしているように感じました そして、第3楽章ではヴァイオリン、ヴィオラ、オーケストラが一体となって愉悦間に満ちた演奏を展開し、熱狂の中で曲を閉じました
このモーツアルトをもって今年のラ・フォル・ジュルネを締めくくることが出来て本当に良かったと思います あっという間の3日間でした
今年もL.F.Jの記念に公式CDを買いました。私は2006年の第2回目から毎年聴いてきてその都度CDを購入してきたので、これで13枚目になります