25日(月)。昨日の朝日朝刊 国際面に 漫画「テルマエ・ロマエ」の作者で、イタリア人の夫を持つヤマザキマリさんのインタビュー記事が載っていました 超訳すると、
「イタリアにいる夫とは1年以上会えていない。観光に依存する国だが、ロックダウンの判断は早かった 『命が大事。お金は生きていれば何とかなる』とみな従った。しかし、国によって対応が違うのは自然。一人暮らしが多い日本で罰則付きのロックダウンをしたら、悩んで自殺する人も出るかもしれない ロックダウンは人を精神的に不安定にさせる。イタリアでも離婚やアルコール依存症、うつ病になる人が増えた 映画を観たり音楽を聴いたり、メンタル面の栄養を入れていくのは大事だ 状況を見極めるため、自らの頭で物事を考える訓練も怠ってはいけないと感じる 人間は精神にも栄養を与えなければ、総合的な健康維持も社会の安定も保てない生き物だということを忘れてはならないと思う」
映画を観たり音楽を聴いたりすることは「不要不急」ではなく、ヤマザキさんの言う「メンタル面の栄養」になるという点で「大事なもの」です これからも自分の体は自分で守ることを前提に、メンタル面の栄養を取り入れるためにも映画館に、コンサートに通うつもりです
ということで、わが家に来てから今日で2307日目を迎え、トランプ前大統領の時代にホワイトハウスの大統領執務室に設置されていた「赤色のボタン」がバイデン大統領の就任後に撤去されたとして話題になっているが、これは、押せばトランプ大統領の好物の「ダイエットコーク」が執務室に運ばれてくるボタンだった というニュースを見て感想を述べるモコタロです
トランプの傲慢さを象徴するボタンだけど つくづく「核兵器」用でなくて良かった
昨日、18時15分からミューザ川崎シンフォニーホールで東京交響楽団の第680回定期演奏会を聴きました これは当初、昨年5月30日に開催される予定だったものがコロナ禍の影響で日程が延期され、会場もサントリーホールからミューザ川崎に変更されたものですが、さらに 政府による緊急事態宣言を受けて、開演時間が45分間繰り上げられました プログラムは①ボッケリーニ(ベリオ編)「マドリードの夜の帰営ラッパ」、②ベルク「ヴァイオリン協奏曲 ”ある天使の思い出に” 」、③ベートーヴェン「フィデリオ」序曲、④⑤⑥同「レオノーレ」序曲第1番、第2番、第3番」です ②のヴァイオリン独奏=南紫音、指揮=下野竜也です
チラシの謳い文句は「Bに捧ぐ」です。ボッケリーニ(ベリオ編)、ベルク、ベートーヴェンとすべてBで始まります。こだわりの下野らしいプログラミングですね そういえば東京交響楽団は前日、「トスカ」の初日公演で新国立劇場のオーケストラ・ピットに入っていました 東響は ずいぶん人使いの荒いオケですね でもコンサートができなくて困るよりも、多少忙しくても演奏できる方が良いに決まっていますね
自席は2RB5列7番、2階右サイドブロックの右通路側です 会場はやっと3割といったところでしょうか サントリーホールでの定期会員が、川崎に会場変更になったことにより払い戻しが多かったのかもしれません
楽団員が配置に着きます オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの東響の並び。コンマスはグレヴ・二キティン(前日のオペラ公演は水谷晃)です 弦楽奏者は全員がマスク着用です
1曲目はボッケリーニ(ベリオ編)「マドリードの夜の帰営ラッパ」です 今野哲也氏のプログラムノートによると、この曲はルイジ・ボッケリーニ(1743‐1805)が1780年に作曲した「弦楽五重奏曲G324」(Gはジェラールの作品整理番号)の第5楽章「リティラータ」の通称とのことです それをルチアーノ・ベリオ(1925‐2003)が管弦楽用に編曲した作品です
下野の指揮で演奏が開始されます 曲は、軍楽隊が次第に近づき、やがて兵舎に戻って行くまでの様子を表しており、冒頭、小太鼓の刻みによってボレロ風の音楽が奏でられ、次第に楽器が増えて音が大きくなり、また、次第に音が小さくなっていきます これは非常に面白い曲でした
2曲目はベルク「ヴァイオリン協奏曲 ”ある天使の思い出に” 」です この曲はアルバン・ベルク(1885‐1935)がアメリカのヴァイオリニスト、ルイス・クライスナーの委嘱を受けて1935年に作曲、1936年4月にバルセロナで初演されました この曲の作曲中に、マーラーの未亡人アルマが再婚でもうけた娘マノンが19歳の若さで急逝したのを悼み、「ある天使の思い出に」と献辞を付けて贈りました 曲は第1部「アンダンテ ~ アレグレット」、第2部「アレグロ ~ アダージョ」の2部構成になっています
ソリストの南紫音は北九州市生まれ。2005年10月、ロン=ティボー国際音楽コンクールで第2位、2015年にはハノーファー国際ヴァイオリン・コンクールで第2位に入賞しています
南紫音が黒を基調としシルバーを配した鮮やかな衣装で登場、下野の指揮で演奏に入ります 曲は12音技法で書かれているので、私にとっては超苦手の音楽なのですが、南の緊張感の途切れない集中力に満ちた演奏には、思わず引き込まれました 下野の明確な指揮がソリストの名演に大きく貢献しました とくにフィナーレの演奏は、マノンが天に昇っていくような高揚感を感じました
プログラム後半は ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770‐1827)の唯一の歌劇「フィデリオ」のために作曲された4つの序曲です 1つのコンサートでまとめて序曲4曲を演奏しようとするのは、いかにも下野竜也らしいプログラミングです 岡田安樹浩氏のプログラムノートによると、4つの序曲は次のような順番で作曲されたようです
①1805年「レオノーレ序曲 第2番 作品138」 = 「フィデリオ」初演の際の序曲
②1806年「レオノーレ序曲 第3番 作品72a」 = 「フィデリオ」を「レオノーレ」と改訂して上演した際の序曲
③1806~07年「レオノーレ序曲 第1番 作品72b」 = プラハ上演のための序曲として作曲したが演奏は実現せず
④1814年「フィデリオ序曲 作品72」 = 「フィデリオ」に再改定して上演した際の序曲
複雑ですね この日は①フィデリオ序曲、②レオノーレ序曲:第1番、③同:第2番、④同:第3番の順に演奏されました
大雑把に言うと、レオノーレ序曲のうち第1番はトロンボーンが使用されていません また、第2番と第3番は楽曲展開が似ているのに対し、第1番はかなり異なります また、第2番と第3番では、オペラの中のシーンでフィデリオとフロレスタンが刑務所長のドン・ピツァロに追い詰められたところで、2人を救う大臣の到着を告げる信号ラッパを表すトランペットのファンファーレがどこからともなく鳴り響きます 本公演ではステージ左袖の扉が開かれ、舞台裏で吹いたトランペットの音が聴こえてきました
演奏で特に良かったのはフルート首席の相澤政宏、オーボエ首席の荒絵理子、ファゴット首席の福士マリ子の演奏です そして、何よりも下野竜也のメリハリの効いた気持ちの良い指揮ぶりが冴えていました 聴衆こそ少な目でしたが、下野 ✕ 東響の熱演に満場の拍手を送りました
終演後、下野氏から今月いっぱいで退団するオーボエ奏者・篠崎隆氏と女性2名(Vn、Va)に花束が贈られ、聴衆と楽団員から大きな拍手が送られました こういう風習はいいですね