人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

黒澤明監督「生きものの記録」を観る ~ 原水爆の恐怖から逃れるためにブラジル行きを決断した男とその家族の葛藤の物語:新文芸坐

2021年01月13日 07時22分39秒 | 日記

13日(水)。わが家に来てから今日で2295日目を迎え、北朝鮮の朝鮮労働党は10日、金正恩党委員長を党総書記に推戴するとの決定書を採択したが、祖父の金日成、父の金正日の権威と並ぶことで「最高尊厳」としての地位をより固める狙いとみられる  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     金正恩が委員長から総書記に昇格したことで 北朝鮮の国民は幸せになれるのかね?

 

         

 

昨日、夕食に勝浦市在住の大学時代の友人S君が送ってくれた鯵を塩焼きにして、「生野菜とアボカドのサラダ」「具沢山味噌汁(人参、大根、里芋、ジャガイモ)」を作り、前日の鍋料理の残り物とともに食べました 鯵は大振りで美味しかったです

 

     

 

         

 

新文芸坐で上映中だった「銀幕に甦れ!黒澤&三船 日本映画最高のコンビ」特集(全12本)は昨日が最終日でした 私にとって最後の12本目となる 橋本忍・小國英雄・黒澤明脚本、黒澤明監督による1955年製作映画「生きものの記録」(モノクロ・103分)を観ました

歯科医の原田(志村喬)は、家庭裁判所の調停委員をしている 彼はある日、家族から出された中島喜一(三船敏郎)への準禁治産者申し立ての裁判を担当することになる 鋳物工場を経営する喜一は、原水爆の恐怖から逃れるためと称して、ブラジル移住を計画し、そのために全財産を投げ打とうとしていた 家族は、喜一の放射能に対する被害妄想を強く訴え、喜一を準禁治産者にしなければ生活が崩壊すると主張する しかし、喜一は裁判を無視してブラジル移住を性急に進め、ブラジル移民の老人(東野英治郎)を連れてきて、家族の前で現地のフィルムを見せて唖然とさせる 喜一の「死ぬのはやむを得ん、だが殺されるのは嫌だ」という言葉に心を動かされた原田は、彼に理解を示すも、結局は申し立てを認めるしかなかった 準禁治産者となった喜一は財産を自由に使えなくなり、計画は挫折した。彼は家族に手をついてブラジル行きを懇願した後に倒れる 意識を回復した喜一は、家族が「工場があるうちは日本を離れない」という言葉を耳にし、夜半に工場に放火する 工場で働く職人たちから「自分たちさえ良ければ我々はどうなってもいいのか」と詰め寄られ、「お前達もブラジルに連れて行く」と言うが、家族から「そんな金はどこにあるんだ」と呆れられる 精神病院に収容された喜一を原田が見舞いに行くと、喜一は明るい顔をしていた 彼は地球を脱出して別の惑星にきたと思っていたのだった 病室の窓から太陽を見て、喜一は原田に「地球が燃えとる」と叫んだ

 

     

 

この映画は、米ソの核軍備競争やビキニ環礁での第五福竜丸被爆事件などで加熱した反核世相に触発されて、原水爆の恐怖を真正面から取り上げた社会派ドラマです 60歳の主人公・中島喜一を演じた三船敏郎は当時35歳でした しかし、映像からは60歳にしか見えません 三船敏郎という俳優は大したものだとあらためて思いました

この作品の構想は、「七人の侍」の撮影中に黒澤明が友人の作曲家・早坂文雄宅を訪れたときに、ビキニ環礁の水爆実験のニュースを聞いた早坂が「こう生命を脅かされちゃ、仕事はできないねぇ」と言い出したことがきっかけとなったといいます 音楽は早坂が担当していますが、この作品の音楽が遺作となりました

この映画は興行的に失敗し、黒澤も「自身の映画の中で唯一赤字だった」と語っていますが、その理由を「日本人が現実を直視しなかったからではないか」と分析しています しかし、その56年後の2011年の東日本大震災に伴う東京電力 福島原発の「メルトダウン」事故を経験した日本人、特に 何の罪もないのに故郷を追われた福島の人たちにとっては、リアルな極めてリアルな問題として捉えられると思います とても主人公の中島喜一を「誇大妄想狂」と笑うことはできないでしょう あと2か月すると東日本大震災の発生から10年になります

 

     

コメント
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