人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

黒澤明監督「蜘蛛巣城」を観る 〜 シェイクスピア「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えた傑作:黒澤 ✕ 三船は時代劇が一段と素晴らしい!

2021年01月06日 07時43分16秒 | 日記

6日(水)その2.よい子は「その1」から見てね モコタロはそちらに出演しています

昨日、新文芸坐で 小國英雄・橋本忍・菊島隆三・黒澤明脚本、黒澤明監督による1957年製作映画「蜘蛛巣城」(モノクロ・110分)を観ました

北の館の主・藤巻の謀反を鎮圧した武将、鷲津武時(三船敏郎)と三木義明(千秋実)は、喜ぶ主君・都築国春(佐々木孝丸)に召し呼ばれ、蜘蛛巣城へ馬を走らせていたが、雷鳴の中、慣れているはずの「蜘蛛手の森」で道に迷い、奇妙な老婆(浪花千恵子)と出会う 老婆(物の怪の妖婆)は、武時はやがて北の館の主に、そして蜘蛛巣城の城主になることを、義明は一の砦の大将となり、やがて子が蜘蛛巣城の城主になることを告げる 2人は一笑に伏すが、主君が与えた褒章は、武時を北の館の主に、義明を一の砦の大将に任ずるというものだった

武時から一部始終を聞いた妻・浅茅(山田五十鈴)は、老婆の予言を国春が知ればこちらが危ない と、謀反をそそのかし、武時の心は揺れ動く 折しも、国春が、藤巻の謀反の黒幕・隣国の乾を討ったために北の館へやってくる。その夜、浅茅は見張りの兵士たちを痺れ薬入りの酒で眠らせ、武時は眠っている国春を殺す 主君殺しの濡れ衣を着せられた臣下・小田倉則安(志村喬)は国春の嫡男・国丸(太刀川洋一)を擁し、蜘蛛巣城に至るが、蜘蛛巣城の留守を預かっていた義明は開門せず、弓矢で攻撃してきたため、2人は逃亡する

義明の強い推挙もあって、蜘蛛巣城の城主となった武時だったが、子がないために、老婆の予言通り 義明の嫡男・義照(久保明)を養子に迎えようとする しかし浅茅はこれを拒み、自身の懐妊を告げたため、武時の心は又しても変わる 義明親子が姿を見せないまま養子縁組の宴が始まるが、その中で武時は、死装束に身を包んだ義明の亡霊を見て抜刀して錯乱する 浅茅が客を引き上げさせると、一人の武者が現れ、義明は殺害したが 義照は取り逃がしたと報告する

嵐の夜、浅茅は死産し、国丸、則安、義照を擁した乾の軍勢が攻め込んできたという報が入る 無策の家臣たちに苛立った武時は、轟く雷鳴を聞いて森の老婆のことを思い出し、一人で蜘蛛手の森へ馬を走らせる 現れた老婆は「蜘蛛手の森が城に寄せて来ぬ限り、お前様は戦に敗れることはない」と予言する 蜘蛛巣城を包囲され動揺する将兵に、武時は老婆の予言を語って聞かせ、士気を高めるが、野鳥の群れが城に飛び込むなど不穏な夜がふける 翌日、浅茅は発狂し、「血が取れぬ」と両手を洗い続ける そして、兵士たちは押し寄せてくる蜘蛛手の森に恐れを抱く 持ち場に戻れと怒鳴る武時めがけて味方たちの中から無数の矢が放たれる

 

     

 

この映画は、シェイクスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えた作品ですが、「能」の様式美を取り入れています この映画は何回観たか思い出せませんが、強く印象に残っているのは山田五十鈴が演じる浅茅が「血が取れぬ」と言って何度も両手を洗おうとするシーンです 能面のような顔の浅茅の目が大きく開かれ、まるで妖婆が乗り移り 気が狂ったかのようです もう一つは、三船敏郎が演じる武時が、味方の兵士から次々と射られる矢を浴びるラスト・シーンです このシーンで三船は、演技と言うより本当に死に物狂いの形相を見せていますが、それもそのはず、黒澤監督は、実際に三船やその周囲を目掛けて本物の矢を射って撮影したと言われています 撮影終了後、三船は黒澤のことを「ぶっ殺してやると思った」と語っています とにかく面白い映画です。黒澤 ✕ 三船はやっぱり時代劇が一段と素晴らしいと思います

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

緊急時代宣言 ~ コンサートはどうなる? / 黒澤明監督「悪い奴ほどよく眠る」を観る 〜 公団と民間企業の癒着を題材に権力腐敗に対する激しい怒りを込めた渾身の作品:新文芸坐

2021年01月06日 07時22分27秒 | 日記

6日(水)その1。昨日の朝日朝刊第1面に「緊急事態宣言  7日にも決定 4都県で1か月検討」という見出しの記事が載っていました 記事によると、「政府高官の話では、今回は飲食店の営業時間短縮などを重視する考えで、コンサートやスポーツなどのイベントは観客数を減らすなど開催用件を厳しくし、全面的な開催制限は求めないことで調整している」とのことです コンサートが全面的に中止になると困りますが、観客数を減らすだけなら まだマシだというところでしょうか いずれにしても、政府には科学的な根拠に基づいて判断・決定してほしいと思います

ということで、わが家に来てから今日で2288日目を迎え、日本相撲協会は5日、横綱白鵬が新型コロナウイルスに感染したと発表したが、初場所の休場が濃厚とみられる  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     怪我の次はコロナで休場ですか?  力士相手に闘う前に コロナに不戦敗したわけね

 

         

 

昨日、勝浦市在住の大学時代の友人S君が送ってくれた金目鯛を煮つけました あとはジャガイモと玉ねぎの味噌汁です。金目鯛は煮崩れてしまい形は変形していますが、味はとても美味しかったです

 

     

     

         

 

昨日、新文芸坐で黒澤明監督「悪い奴ほどよく眠る」と「蜘蛛の巣城」を観ました(2本立てではありません) ここでは小國英雄・久板栄二郎・黒澤明・菊島隆三・橋本忍脚本、黒澤明監督による1960年製作映画「悪い奴ほどよく眠る」(モノクロ・151分)について書きます

一流ホテルの一室で厳かに結婚披露宴が行われている。花嫁は日本未利用土地開発公団総裁・岩淵(森雅之)の娘・佳子(香川京子)、花婿は岩淵の秘書・西光一(三船敏郎)である この頃、日本未利用土地開発公団の課長補佐・和田(藤原鎌足)が汚職がらみで逮捕されたばかりだったので、報道陣が押し寄せていた ウエディング・ケーキが運び込まれるが、そのケーキは公団のビルそっくりな形で、ある窓に薔薇の花が挿してあった それは数年前、当時の公団課長補佐・古谷が自殺の際に飛び降りた窓だった

警察は数人の職員に対し入札に絡む贈賄に関する尋問を行うが、その内の一人、課長補佐・和田は、上司の命令を忖度し自殺を覚悟する 身を投げようと火山の火口の縁へ進む彼の前に、西が立ちふさがる 実は 西は自殺した古谷の息子であり、板倉(加藤武)と戸籍を交換し、父親を死に追いやった公団関係者への復讐を目論んでいたのだ    西は最初に契約課長・白井(西村晃)を標的にする。金庫の中に公団ビルの写真を入れたり、死んだと思われている和田の姿を見せたりして白井を精神的に動揺させ、狂気に追いやる    管理部長の守山(志村喬)が自分の正体に気付いたことから、西は守山を次のターゲットにする。しかし、守山のせいで公団側は西が一連の事件の犯人だと気づく さらに、守山を監禁している軍事工場跡に西の妻・佳子が姿を見せ、事態は紛糾する その上、佳子は西の行動を父親の岩淵に話してしまい、アジトがばれてしまう 西は薬を注射され、車に押し込められた末に、列車との衝突事故に偽装されて殺害されてしまう 公団の面目を保ち、安堵した岩淵だったが、心がズタズタになった娘の佳子は廃人のようになってしまう

 

     

 

黒澤明、橋本忍ら5人の名だたる脚本家が6回も合宿を重ねて練り上げたというサスペンス仕立ての復讐劇は、時間の経つのを忘れるほど面白く、これぞ黒澤映画だと言いたくなります この作品には、公団と民間企業の癒着を題材として権力腐敗に対する激しい怒りが込められています この映画の主人公を演じる三船敏郎は、眼鏡をかけた真面目なエリートサラリーマンといった雰囲気をまとっています しかし、一旦復讐を遂げようと追い詰めた相手には容赦なく迫ります 白井課長を監禁し、「窓から飛び降りるか、毒入りウイスキーを煽るかどちらかを選べ」と迫り、飛び降りに抵抗する白井に無理やりウイスキーを飲ませますが、自分でもそれを飲んでしまいます。板倉は「あっ」と驚きますが、西は「毒など入っていない」と種明かしします。こういうところは脚本が冴えていると思います

主人公を演じた三船敏郎の演技力とともに、白井課長を演じた西村晃の狂気迫る演技が光っていました

さて音楽は、冒頭の結婚披露宴のシーンではヨハン・シュトラウスのワルツが優雅に流れ、新郎新婦の入場シーンでは、お約束のようにメンデルスゾーンの「結婚行進曲」が流れていました

この映画が扱っているのは公団と民間企業の汚職事件ですが、権力腐敗と言えば、総理大臣がお友だちだけを優遇したり、官僚が総理大臣に忖度して公文書を改ざんしたり、大臣が民間企業から金を貰い業界に有利な発言をしたりと、いつの時代も権力を握る人間の腐敗は尽きないものです

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする