人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

黒澤明監督「七人の侍」を観る ~ 早坂文雄の音楽は「ライトモチーフ」方式を採用:理屈抜きで面白い映画! ~ 新文芸坐

2021年01月08日 07時37分02秒 | 日記

8日(金)。その2.よい子は「その1」も見てね。モコタロはそちらに出演しています

昨日、新文芸坐で黒澤明・橋本忍・小國英雄脚本、黒澤明監督による1954年製作映画「七人の侍」(モノクロ・207分)を観ました

この映画は、戦国時代の天正年間(1586年頃)を舞台として、野武士の略奪に悩む百姓に雇われた7人の侍が、身分差による軋轢を乗り越えながら協力して野武士の襲撃から村を守るというストーリーです    全体は前半部と後半部の2部構成になっており、前半部では主に百姓による侍集めと戦の準備の様子が、後半部では野武士との本格的な決戦が描かれています

百姓たちは最初に、ある事件をきっかけに知将・島田勘兵衛(志村喬)を説得し承諾を得る その勘兵衛が軍学が出来る片山五郎兵衛(稲葉義男)、勘兵衛のかつての戦友・七郎次(加藤大介)、薪割りが得意の明るい浪人・林田平八(千秋実)、凄腕の剣客・久蔵(宮口精二)を次々と仲間に引き入れ、最初は子供扱いして相手にしなかった育ちの良い最年少の半人前の浪人・岡本勝四郎(木村功)も仲間に入れる そして、最後に勘兵衛の強さに惹かれて勝手に着いてくる百姓上りの菊千代(三船敏郎)も加わり7人が揃う 勘兵衛は村の地形を生かした作戦を立て、侍と村人は馬でやってくる野武士たちを分断し、一人ひとり殺していく 翌日、豪雨が降りしきる中、夜明けに残りの13騎の野武士たちが襲来するが、野武士を討ち取る一方で侍も討ち取られる 死闘の末 生き残ったのは勘兵衛、七郎次、勝四郎の3人だけだった   村に平和が訪れ、村人は田植歌を口ずさみながら稲を植えていく 勘兵衛は「今度もまた、負け戦だったな」とつぶやき、怪訝な顔をする七郎次に「勝ったのはあの百姓たちだ。わしらではない」と語り、墓地の丘を見上げる。その頂上には、墓標代わりに刀が突きたてられた4つの土饅頭があった

 

     

 

この映画も何回も観ましたが、こんなシーンもあったのか、という場面がいくつかありました 野武士たちの襲来を受ける前に、数名で敵陣に乗り込むシーンなどがそうです ここでは音楽を担当した早坂文雄がどんな仕事をしたかについてご紹介します 彼は当時、肺結核を患っていましたが、他の仕事と並行して1年かけてデッサンを描いたそうです 彼は書き溜めた曲を、黒澤の前で1曲1曲ピアノで弾き、黒澤のダメ出しを受けながら修正して曲のアウトラインを決めたとのことです 音楽は単純明快な表現にするため「ライトモチーフ」方式を採用しました 「ライトモチーフ」とはワーグナーの楽劇などでもお馴染みですが、「特定の人物や状況などと結び付けられ、繰り返し使われる短い主題や動機」のことです 主題曲ともいえるのは「侍のテーマ」です 勇壮なマーチ風の音楽ですが、最初に早坂が用意したデッサンはすべて却下されたため、ゴミ箱に捨てた楽譜をピアノで弾いたところ黒澤が気に入り採用されたそうです 一方、「百姓のテーマ」は百姓の恐怖のうめきを男声のハミングコーラスで表現しています タイトルバックの「野武士のテーマ」は太鼓と弓弦で不気味さを醸し出しています 百姓上りの破天荒な「菊千代のテーマ」はボンゴやサックスで演奏されます

「七人の侍」は世界で最も有名な日本映画と言っても過言ではないでしょう 1954年の第15回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞しています 1960年にはアメリカで西部劇「荒野の七人」(ユル・ブリンナー、デンゼル・ワシントン他 出演)としてリメイクされました 2018年にBBCが発表した「史上最高の外国語映画ベスト100」では第1位に選ばれています

とにかく理屈抜きに面白い それが黒澤映画の最大の特徴です

 

     

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緊急事態宣言を受けクラシック界「現状維持」求め要望書提出 / 黒澤明監督「酔いどれ天使」を観る 〜 黒澤 ✕ 三船の最初の作品:音楽は「コントラプンクト」の手法を採用 ~ 新文芸坐

2021年01月08日 07時12分43秒 | 日記

8日(金)。その1.昨日の朝日夕刊に「クラシック『現状維持』求め要望書」という見出しの記事が載っていました 超訳すると、

「首都圏4都県に対し7日 緊急事態宣言が発出されたことを受け、時短営業の要請をなるべく避けたいクラシックの業界団体などは5日、西村経済再生相宛てに緊急要望書を提出した 感染予防策を徹底した結果、年末年始を含めた約3か月間、客席でのクラスターが確認されていないとし、『引き続きの現状維持』を求めている 午後8時の終了を要請された場合、すでに発券されている公演に関しては、開始時間の前倒しや時短についての告知を徹底できる可能性が低く、中止になるケースが想定されている 映画館は、シネコン大手のTOHOシネマズが座席指定券の事前販売を一時休止。多くのミニシアターは午後8時までに上映が終わるよう、タイムスケジュールを組み替えて対応している

私はコンサート会場にも映画館にも通っていますが、検温、手指のアルコール消毒、換気対策など、徹底的にコロナ感染予防措置が採られています    その点 業界団体などの要望には合理性があると思います 政府には要望どおり「現状維持」でいくよう求めたいと思います

ということで、わが家に来てから今日で2290日目を迎え、米連邦議会でバイデン次期大統領を正式に選出する会議を開いていた連邦議会議事堂内に6日、トランプ大統領の支持者が大量に乱入して約3時間にわたって占拠し会議を中断させ 少なくとも1人が死亡したが、トランプ氏は集会で支持者に議事堂に抗議に向かうよう促していた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプの常軌を逸した言動は  もはや狂っているとしか言いようがないレベルだ

 

         

 

昨日、夕食に「チキンステーキ」と「キャベツとハムの中華スープ」を作りました チキンステーキは何度食べても飽きません

 

     

 

         

 

昨日、新文芸坐で黒澤明監督「酔いどれ天使」と「七人の侍」を観ました(2本立てではありません)。ここでは植草圭之介・黒澤明脚本、黒澤明監督による1948年製作映画「酔いどれ天使」(モノクロ・98分)について書きます

反骨精神旺盛だが一途な貧乏医師・真田(志村喬)は、闇市のやくざ・松永(三船敏郎)の鉄砲傷を手当てしたことがきっかけで、松永が結核に冒されているのを知り、必死に治療を試みる しかし若く血気盛んな松永は素直になれず威勢を張るばかりだった 更に、出獄してきた兄貴分の岡田(山本礼三郎)との縄張り争いや情婦・奈々江(小暮美千代)を巡る確執の中で急激に命を縮めていく 弱り果てていく松永は吐血し真田の診療所に運び込まれ、一旦は養生を試みるが、結局は窮余の殴り込みを仕掛けた末、返り討ちに遭って死ぬ 真田はそんな松永の死を、毒舌の裏で哀れみ悼む。闇市は松永など元からいなかったかのように、賑わい活気づいている。真田は結核を治癒したと微笑む女学生(久我美子)に再会し、一縷の光を見い出した気分で去る

 

     

 

この映画は、黒澤 ✕ 三船コンビの最初の作品であり、志村が黒澤作品で初主演した作品です 志村のその後の黒澤映画での活躍を彷彿とさせる見事な演技力です 準主役の三船敏郎は、眼力が鋭い苦み走ったイイ男を演じています

ところで、以前この映画を観た時にも気が付いたのですが、映画の終盤で 松永の死を知らない真田が「あいつに栄養をつけてやろう」と言って闇市で卵を買うシーンがあります 張り紙には「産みたて卵  1コ18円」と書かれていました 先日コンビニで10個入りの卵を買ったら税込みで214円でした。1個当たり21円強になります    この映画が製作された1948年から73年も経っているのに、消費税を除けばほとんど変わっていません  「玉子は物価の優等生」とはよく言ったものです 黒澤映画を観ると、当時の世相が反映していて興味深いものがあります

落ちぶれた松永が結核に苦しみながら闇市をさすらう暗い場面で、ヨハン・エマヌエル・ヨナ―ソン作曲「カッコウワルツ」が能天気に流れますが、悲しい場面であえて明るい音楽を流すことによって悲しみを一層際立たせる「コントラプンクト」の手法です

この映画の音楽を担当しているのは早坂文雄ですが、黒澤と初めてコンビを組んだのがこの作品です 劇中で流れる音楽は1946年に設立された「東宝交響楽団」が演奏していますが、1951年に「東京交響楽団」と改称され、現在に至っています 個人的なことですが、昨日この映画を観る前に、東京交響楽団あて「2021‐2022シーズン定期会員 年間会費」をコンビニ経由で払い込んでおきました

黒澤映画は単に面白いだけでなく、勉強になることが多いと思います

 

     

コメント (2)
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