人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

黒澤明監督「赤ひげ」を観る ~ 原作者・山本周五郎をして「原作よりいい」と言わしめた名作:刀を持たなくてもサマになる三船敏郎の演技 ~ 新文芸坐

2021年01月11日 08時09分45秒 | 日記

10日(月・祝)その2.よい子は「その1」も見てね    モコタロはそちらに出演しています

昨日、新文芸坐で、井出雅人・小國英雄・菊島隆三・黒澤明脚本、黒澤明監督による1965年製作映画「赤ひげ」(モノクロ・185分)を観ました

若き見習い医師の保本登(加山雄三)は、長崎への3年間の留学を終えて江戸に戻ってきた オランダ医学を修めた彼は幕府の御番医になるという夢を持っていたが、登が赴任することになったのは町の小さな診療所「小石川養生所」だった しかも、登の許婚だったちぐさ(藤山陽子)は、登が長崎にいる間に他の男と子供を作っていた 登の前に現れたのは養生所の所長で通称「赤ひげ」と呼ばれる新出去定(にいできょじょう:三船敏郎)だった 赤ひげは早速、登に本日からこの養生所で見習いとして勤務することを告げる。不満たらたらの登は御仕着を着ず、酒を飲むなど不真面目な態度を取り、養生所から追い出されることを期待していた ある日 登は、人を3人も殺して養生所内の薬草園の中の座敷牢に幽閉されている精神を病んだ女(香川京子)を見る しばらくして、赤ひげが不在の時、その女が牢を脱走し登の部屋に忍び込んで、登を殺そうとするが、間一髪で駆けつけた赤ひげに助けられる 赤ひげは登を叱ることはせず、「恥じることはないが、懲りるだけは懲りろ」と忠告する。数日後、登は赤ひげが執刀する手術の現場に立ち会い、あまりの凄まじさに失神してしまう それからというもの、登は赤ひげに付き添い、様々な患者の人間模様を身をもって知ることになる ある時、危篤状態の癌患者を診た時、病状を巡って登は赤ひげに論破され、自らの不甲斐なさを思い知らされる 赤ひげは、医療はあらゆる病気を治すことは出来ず、医療の問題は貧困と無知であると諭し、病の陰には常に人間の不幸が隠れていると語る 赤ひげの姿勢に心打たれた登は、着なかった御仕着を着るようになり、積極的に赤ひげの往診に同行するようになる。赤ひげは位の高い武家や金持ちからは法外な治療代を取り、その金を貧しい人々の治療費に充てていた 赤ひげは、貧困と無知さえ何とかできれば病気の大半は起こらずに済むと考えていた 登は初めて担当患者として12歳のおとよ(二木てるみ)を診ることになる。女郎屋で虐待を受け心身に深い傷を負い、誰にも心を開こうとしないおとよの姿に、登はかつての生意気だった頃の自分の姿を重ねていた 登は昼夜問わずおとよを看病し、ついに看病疲れから倒れて寝込んでしまう するとおとよは次第に心を開き、今度はおとよが登の看病に当たるようになる 人間としても医師としても成長した登は、元許婚だった ちぐさの妹・まさえ(内藤洋子)と結婚することになる    登はこの時、幕府のお目見得医への推薦が決まっていたが、小石川養生所での勤務を続ける意思を固めており、まさえに豊かな生活は期待できないと告げる。するとまさえは優しく微笑むのだった     登は赤ひげに意志を伝えると、赤ひげは自分は決して尊敬される人物ではないと言い、「お前は必ず後悔する」と反対する しかし、登の意志は固く「試してみましょう」と答える 2人は小石川養生所の門をくぐって行った

 

     

 

この映画は江戸時代後期の享保の改革で徳川幕府が設立した小石川養生所を舞台に、そこに集まった貧しく病む者とそこで懸命に治療する医師との交流を描いています

赤ひげたちが遊郭から おとよ を養生所に連れて行こうとした時、三船敏郎演じる赤ひげは素手で何人もの用心棒たちをボコボコにやっつけて骨折させますが、「いかん、医者たるものはこんな乱暴をはたらいてはいかん」と口にします その姿がカッコよく、刀を持たなくても三船の姿はサマになっています 本作はモノクロ映画にも関わらず、三船は本当にひげを赤く染めて1年半も演技をしたといいます この演技で「用心棒」に次いで2度目となるヴェネツィア国際映画祭・男優賞を受賞しています

おとよを演じた二木てるみの”目の演技”が素晴らしく、まさえを演じた内藤洋子を見て懐かしく感じました 中学生の時にテレビで観た「氷点」を思い出しました

物語は山本周五郎の「赤ひげ診療譚」を基盤としていますが、後半のおとよ(二木てるみ)の物語はドストエフスキーの「虐げられた人びと」をベースにしています 原作者の山本周五郎をして「原作よりもいい」と言わしめた本作は興行的に大ヒットを収め、この年の日本映画の興行収入ランキング第1位となりました

ところで、個人的なことですが、今から30年数年前、この映画の舞台となっている「小石川養生所」の近くに住んでいました 正確に言うと「小石川植物園」の近く(文京区白山4丁目)に住んでいました。「小石川植物園」の歴史を振り返ると、1638年(寛永15年)に徳川幕府が江戸の南(現在の南麻布)と北(現在の護国寺付近)に薬園を開設しますが、護国寺の設立に伴い、麻布南植物園に移設します その後、1684年(貞亭元年)に麻布南薬園を小石川御殿内の北側に移します そして1722年(享保7年)に小石川薬園内に養生所を開設します。これがこの映画の舞台となっている「小石川養生所」です その後、1875年(明治8年)に文部省所轄教育博物館付属・小石川植物園と改称され、1877年(明治10年)に東京大学の設立に伴い、法理文三学部付属植物園と改称されます 現在は東京大学大学院理学系研究科の付属施設となっています 子どもたちが幼い頃は、2~3月には梅を観に、3~4月には桜を観に行きました。当時は「赤ひげ」のことを知らなかったので、映画の舞台がこんな近くにあったとは気が付きませんでした
新文芸坐で上映中の「開館20周年記念番組 銀幕に甦れ! 黒澤&三船」特集も今日と明日を残すのみとなりました 私は本日「天国と地獄」を、明日「生きものの記録」を観ます

 

     

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黒澤明監督「隠し砦の三悪人」を観る ~ ジョージ・ルーカス「スター・ウォーズ」にも影響を与えた名作:新文芸坐

2021年01月11日 07時21分32秒 | 日記

11日(月・祝)。その1.わが家に来てから今日で2293日目を迎え、ツイッター社が「重大な規約違反がある」としてトランプ米大統領のアカウントを永久停止したことを受けて、トランプ氏は8日夜、米大統領の別のアカウントから「ツイッターの従業員たちは民主党員や急進左翼と連携し、私や私に投票した7500万人を黙らせるため、私のアカウントを削除した」などと反論したが、ツイッター社はこの投稿もすぐに削除した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     最後の最後まで 自分の愚かさに気が付かないようだ  トランプは墓穴を掘っただけ

     

         

 

昨日、新文芸坐で黒澤明監督「隠し砦の三悪人」と「赤ひげ」を観ました 2本立てではありません。ここでは、菊島隆三・小國英雄・橋本忍・黒澤明脚本、黒澤明監督による1958年製作映画「隠し砦の三悪人」(モノクロ・139分)について書きます

時は戦国時代。荒涼たる土地を百姓の太平(千秋実)と又七(藤原鎌足)が歩いている 報償目当てに山名と秋月の戦いに参加したが、結局戦うこともなく 秋月の城は落ち、むなしく戦場から逃れてきたのだ 歩きながらお互いに毒づき合っていたが、目の前で武士が一人殺され、慌てて方向を変えて走り出す 喧嘩の末に別々の道を辿るが、2人とも山名の捕虜になってしまう 埋蔵金探しで働かされる。夜になると、捕虜たちが暴動を起こしたため2人は再会する。2人とも逃げ出すことが出来、たどり着いた川辺で一息つく 食事をしようと火を起こすが、薪が燃えない。腹が立って放り投げると金属音がする 改めて調べるとその中に金の延べ棒が隠されていた 2人は慌てて他の薪を調べるが、気が付くと剛健な身体つきの男が立っていた その男は姿を消すが、夜中にまた現れ、2人に「なぜここにいるのか」と問いただす 太平は「秋月から山名領に入って、そこから早川領に入るつもりだ」と適当なことを言って誤魔化すが、男は妙に感心する 男の正体は秋月の侍大将・真壁六郎太(三船敏郎)で、薪に見せかけた金の延べ棒も彼が隠したものだった 真壁は秋月城の落城後、大量の金を薪に仕込んで泉の底に隠し、秋月家の生き残りである雪姫(上原美佐)や重臣らとともに、山中の隠し砦に身を潜めていたが、秋月家の再興のため、同盟国の早川領へ逃げ延びる方策を思案していたのだった 真壁は太平の言う、一度 敵の山名領に入ってから早川領に抜けるというルートで 雪姫と大量の金を運ぶことを決め、太平と又七を手伝いとして連れて行くことにする 2人は報償に目がくらみこれを承諾、彼らの旅が始まる 最初の関所で怪しまれるが、六郎太の機転で突破する さらに騎馬武者が一同の正体に感づき 陣地に知らせに行こうとするが、六郎太が馬で追いかけて斬り捨てる しかし、残りの一騎を追ううちに馬が敵陣に乗り込んでしまう そこには六郎太のライバルである山名の侍大将・田所兵衛(藤田進)がいて、2人は槍で決闘することになるが、六郎太が勝ち、難を逃れる     途中の村で祭りがあり、六郎太は思うところがあり参加することにする そして運んできた延べ棒入りの薪を燃やす。翌朝、延べ棒だけを拾い上げ、また旅を続ける しかし、山名が迫り、太平と又七は逃亡する 姫と六郎太は捕まるが、雪姫が「姫は楽しかった。清く死にたい」と腹をくくり、六郎太も男泣きすると、兵衛はそれに心を動かされ、処刑の日、「裏切り御免」と宣言して姫と六郎太を解放し、3人は馬で早川領に逃げ延びる その後、太平と又七は早川の城に呼び出され、侍姿の六郎太、雪姫、兵衛に再会し、やっと彼らの素性を明かされて仰天する 六郎太は褒美として2人に大判1枚を渡す。金にこだわり続けていた2人だったが、今は褒美の大判を譲り合いながら仲良く家路につくのだった

 

     

 

この作品の脚本の第1稿は菊島隆三が手掛けたのものの30枚程度書いたところで招集がかかり、小國英雄・橋本忍・黒澤明の3人が加わり、4人で共同執筆しました 劇中、いくつもの難所が待ち構えていますが、敵中突破などの方法は、黒澤が次々と困難な状況を設定し、その解決方法をみんなで考えながら書き進めたといいます それだけに、面白さがハンパありません ヒロインの雪姫役は、若くてお姫様らしい気品と野性味があるというイメージに合う人物を探すため、全国から4000人もの応募者を集めてオーディションをしたものの候補者は見つからず、全国の東宝系社員にも探させて、ようやく社員がスカウトをした上原美佐が抜擢されたとのことです 上原は演技経験のない素人のため、あまり喋らせないようにするため、口が利けない設定にしてあります そうは言うものの、台詞のあるシーンでも「気品があるが気が強い」姫を堂々と主張していて立派でした 三船演じる真壁が敵の騎馬武者を馬で追いかけて斬り捨てるシーンは、スタントマンを使わず、三船本人が騎乗し、両手で刀を握り八双の構えをとり、脚だけで疾走する馬を制御して馬上の戦いに挑んでいます このシーンは3台の望遠レンズ付きのカメラで撮影されており、ダイナミックな映像表現になっています 1977年公開のジョージ・ルーカス監督「スター・ウォーズ エピソード4・新たなる希望」は、本作を基にしていることをルーカス自身が認めています 「スター・ウォーズ」の C-3PO と R2-D2 が、本作冒頭の百姓コンビの 太平 と 又七 をモデルにしていることも認めています

昨日は日曜日ということもあってか、朝からかなりの数の観衆が集まっていました

 

     

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