12日(火)。昨日は3月から4月にかけて上野で開かれる「東京・春・音楽祭2021」のチケットの第1弾の発売予定日でした 対象は4月2日と3日に東京文化会館で開かれるワーグナー「パルジファル」(演奏会形式)公演です その後は、第2弾として1月17日にリッカルド・ムーティ―指揮による「マクベス」(4月19日、21日)が、第3弾として1月24日にモーツアルト「レクイエム」(4月11日)、プッチーニ「ラ・ボエーム」(4月15日)が、第4弾として1月31日に残りのすべてのコンサートのチケットが、それぞれ発売される予定でした
しかし、残念ながら「東京・春・音楽祭2021」のホームページによると、「緊急事態宣言の発令を受け、1月11日以降に順次発売予定だった同音楽祭のすべてのチケット発売を延期する。新たなチケット発売日程は、2月上旬に当サイト及びSNS(Facebook、Twitter)、音楽祭のメールマガジンで案内する」となっています
1年前の同音楽祭は、前売りチケットは売れたものの、新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府による「大規模イベント自粛要請」と「緊急事態宣言」の影響を受けコンサートはほぼ全滅となり、数多くのチケット代払い戻しを余儀なくされました 主催者側としてはその二の舞は避けたいと考えるのはよく理解できます 同音楽祭がホームページで最初にプログラムの概要を発表したのは昨年12月4日でしたが、「新型コロナウイルス感染予防と拡散予防を徹底した上で実施する」旨を表明しており、また、これまでの「来場チケット」に加え、今回初めて「ライブ・ストリーミング配信視聴」も用意されているので、市松模様による座席配置で開催するものと思われます いずれにしても、払い戻しに次ぐ払い戻しは 今後一切まっぴらごめんです
ということで、わが家に来てから今日で2294日目を迎え、全米ゴルフ協会は10日、2022年にトランプ大統領の所有する東部ニュージャージー州のゴルフ場で開催予定だった全米プロ選手権の会場を変更すると発表したが、これは今月6日に発生したトランプ支持者による連邦議会議事堂乱入事件を受けた措置で、トランプ氏の名を冠した会場での開催は「協会のブランドに打撃となることが明らか」と説明している というニュースを見て感想を述べるモコタロです
やりたい放題やってきたが 権力から離れれば こういう事態がドミノ倒しで起こる
昨夕はあまりにも寒かったので夕食は「みそ鍋」にしました 材料は豚バラ肉、鶏肉団子、キャベツ、しめじ、モヤシ、豆腐です。お酒は熱燗ですね
昨日、新文芸坐で小國英雄・菊島隆三・久坂栄二郎・黒澤明脚本、黒澤明監督による1963年製作映画「天国と地獄」(モノクロ・143分)を観ました
ある日、「ナショナル・シューズ社」の常務・権藤金吾(三船敏郎)の元に、「子どもを預かった」という男からの電話が入る そこに息子の純が現れ、いたずらと思っていると住み込み運転手である青木の息子・進一がいない 誘拐犯は子供を間違えたのだが、そのまま身代金3000万円を権藤に要求する デパートの配送員に扮した刑事たちが到着し電話の盗聴に備える 妻の伶子(香川京子)や青木は身代金の支払いを権藤に懇願するが、権藤にはそれができない事情があった 権藤は密かに自社株を買い占め、近く開かれる株主総会で経営の実権を手に入れようと計画を進めていたのだ 翌日までに大阪へ5000万円送金しなければ必要としている株が揃わず、地位も財産もすべて失うことになる 権藤は誘拐犯の要求を無視しようとするが、その逡巡を見透かした秘書に裏切れられたため、一転して身代金を払うことを決意する 権藤は3000万円を入れた鞄を持って、犯人が指定した特急こだまに乗り込む しかし、同乗した刑事が見たところ車内に子どもはいない すると電話がかかり、犯人から「酒匂川の鉄橋が過ぎたところで、身代金の入ったカバンを窓から落とせ」と指示される 特急の窓は開かないと刑事が驚くが、洗面所の窓が、犯人の指定した鞄の厚み7センチだけ開くのだった 権藤は指示に従い、その後進一は無事に解放されたものの、身代金は奪われてしまう 戸倉警部(仲代達也)率いる捜査陣は、進一の証言や目撃情報、電話の録音などを頼りに捜査を進め、進一が捕らわれていたアジトを見つけ出すが、そこにいた共犯と思しき男女はすでにヘロイン中毒で死亡していた これを主犯による口封じと推理した戸倉は、新聞記者に協力を頼み、共犯者の死を伏せ、身代金として番号を控えていた札が市場で見つかったという嘘の情報を流す 新聞記事を見た主犯は身代金受け渡し用の鞄を焼却するが、鞄は燃やすと牡丹色の煙が発する仕掛けが施されており、捜査陣はそこから主犯が権藤邸の近所の下宿に住むインターンの竹内銀次郎(山崎努)という男であることを突き止める 竹内の犯罪に憤る戸倉は、確実に死刑にするためにあえて竹内を泳がせる。竹内は横浜の麻薬中毒者の巣窟で、純度の高い麻薬使用によるショック死の効果を実験した後、生きていると思った共犯者を殺しにアジトに来たところを逮捕される 後日、竹内の死刑が確定する。権藤は竹内の希望により面会する。最初こそ不敵な笑みを浮かべながら語る竹内だったが、権藤邸が天国、自分が地獄にいたという恨みを語ったのち、突然金網に掴みかかり、絶叫する 竹内は刑務官に取り押さえられ、2人の間にシャッターが下ろされる
この映画は、エド・マクベインの「キングの身代金」(1959年)に触発された黒澤明が、「徹底的に細部にこだわった推理映画を作りたい」ということと、「当時の誘拐犯罪に対する罪の軽さ(未成年者略奪誘拐罪で3か月以上5年以下の懲役《刑法第224条》、営利略取誘拐罪で1年以上10年以下の懲役《刑法第225条》に対する憤り」が製作の動機だといいます 映画は興行的には成功したものの、公開された3月以降、吉展ちゃん誘拐殺人事件など、日本国内で誘拐事件が多発しました 映画の公開は中止にはなりませんでしたが、国会でも問題として取り上げられ、1964年の刑法の一部改正(「身代金目的の略取(無期または3年以上の懲役)」を追加)のきっかけになりました
最初はビジネスの命運をかけた金を他人の子どもの身代金に使うことを絶対に認めない権藤でしたが、性格的にそれができない彼は最終的に払うことを決断します しかし、そのために会社内の権力抗争で失脚し担保にしていた家屋が差し押さえられてしまいます すると、それがマスコミで報道され、権藤に対する同情が寄せられ一躍時の人となります 戸倉警部は犯人を憎む心と 窮地の権藤を救いたい一心で、犯人の竹内を確実に死刑にするためにあえて泳がせますが、これは死刑に値するほどの重大事件を犯人に起こさせることになるわけで、非常に危険な賭けです まあ、映画だから許されるストーリー展開です
列車が酒匂川の鉄橋にさしかかるシーンの撮影で、民家の2階部分が邪魔になったため、依頼して撮影の1日だけ2階部分を取り払わせ、後日復元させたそうです 頼む方も頼む方ですが、応える方も応える方です。CG全盛の現代においてはとても考えられない手間のかかる仕事をやっていたわけです なお、この映画に登場する「特急こだま」は新幹線ではありません。「在来特急こだま号」です。当時はまだ新幹線は開業していませんでした
この映画はモノクロですが、一瞬だけカラーが使われています 身代金の入ったカバンを燃やすとピンク色を発する薬剤を仕込んであるという設定になっており、犯人がカバンを焼却炉に持ち込んだため煙突からピンクの煙が立ち上がったというシーンです これはモノクロ画面にマスキング合成で着色したそうです。黒澤監督は「椿三十郎」で「椿だけカラーで映したい」と希望したものの技術的に出来なかったのを、この映画で実現したのでした
この映画では、犯人がボロアパートの部屋の窓から高台にある権藤の邸宅を見上げるシーンで、シューベルト「五重奏曲 イ長調 ”ます”」の第4楽章の明るいテーマがラジオから流れます 地獄から天国を見上げるシーンですが、この音楽の使い方も一種の「コントラプンクト」(悲しい時に あえて楽しい音楽を流すことによって悲しさを倍増させる手法)でしょう
新文芸坐で上映中の「銀幕に甦れ! 黒澤&三船 日本映画最高のコンビ」特集も今日が最終日です 私は「生きものの記録」を観に行きます