人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ヴィム・ヴェンダース監督・役所広司主演「PERFECT DAYS」を観る ~ 渋谷の公共トイレを清掃する寡黙な男の日常生活を淡々と描いた作品

2024年01月12日 00時54分42秒 | 日記

12日(金)。わが家に来てから今日で3285日目を迎え、米大統領選の野党・共和党指名争いでリードするトランプ前大統領は10日、副大統領に誰を指名するか決めていると明らかにし、党内の他の候補者から選ぶことに前向きな姿勢をうかがわせた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプの条件は「絶対服従」だから 誰が引き受けるかな ヘイリーさんどうする?

 

         

 

昨日、夕食に「サーロインステーキ」を焼きました ステーキソースは、息子が帰省中に作りおいてくれたものを使いました ステーキは柔らかくてとても美味しかったです

 

     

 

          

 

昨日、TOHOシネマズ新宿でヴィム・ヴェンダース監督による2023年製作映画「PERFECT  DAYS」(124分)を観ました

平山正木(役所広司)は東京・渋谷でトイレの清掃員として働いている 淡々とした同じ毎日を繰り返しているように見えるが、彼にとっての毎日は常に新鮮な小さな喜びに満ちている 昔からカセットテープで聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように同じ木々の写真を撮っていた そんなある日、思いがけない妹と姪との再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく

 

     

 

この映画は、東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的なクリエイターが改修する「THE  TOKYO  TOILET  プロジェクト」に賛同したヴェンダースが、東京・渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた作品です

平山は東京スカイツリーが近くに見える下町の古いアパートに独りで住んでいます 毎日、近所の老婆が道を掃除する竹箒の音で目を覚まし、布団をたたみ、歯磨きをして髭を剃ります いくつもの植木鉢の植物にスプレーで水を噴射し、仕事着に着替え、車の鍵、ガラケー、小型フィルムカメラ、小銭などを持ってアパートを出て自動販売機でいつもの缶コーヒーを買い、清掃道具を積んだワゴン車に乗り込み、お気に入りのカセットテープをかけ、公共トイレに向かいます 数カ所の清掃を済ませ、途中、神社の境内でサンドイッチの昼食を取り、カメラでいつもの木々を撮影します 仕事を終えて帰ってくると、近所の銭湯で身体を洗い、自転車で浅草駅地下の古い飲み屋街にある行きつけの店に行き、座ると出てくるいつものサワーとつまみを取りながら、テレビで放映されているプロ野球や大相撲を観て、自転車で家に帰ってきます そして、大好きな文庫本を読みながら就寝します・・・平山の日常生活はこんな単純なルーティーンの繰り返しで、ほとんど人と話すことはなく寡黙な日々を送っています カメラはそんな普段の平山の行動を追っていきます

ちょっとした動きといえば、彼の姪っ子ニコ(中野有紗)が突然訪ねてきて、アパートに泊まることになりますが、彼女は家出をしてきたと言います 翌日、仕事に同行したいというニコと共にトイレ掃除に向かいます。平山はニコに内緒で、自分の妹でありニコの母親でもあるケイコ(麻生祐未)に電話して事情を説明すると、その夜、ケイコが運転手付き高級車でニコを迎えにきます そして、「兄さん、こんなところに住んでいるんだ 本当にトイレ掃除をやっているの?  父さん、昔と違っているから、いつでも戻ってきて」と言います ここで、平山は裕福な家の出であり、父親との関係が悪くて家を出て今の仕事に携わっていることが分かります

また、仕事がいい加減な同僚の若いタカシ(柄本時生)が登場しますが、彼はガールズバーで働くアヤ(アオイヤマダ)に夢中です いつも金欠なタカシは平山が持っているカセットテープが高値で売れることを知り、それを売ってアヤとのデートのために金を貸してくれと頼みますが、平山は拒否し現金を渡します ここに「昔から馴染んできた大切なものは簡単には手放さない」という平山の価値観が表われています

さて、音楽の話です 最初に平山がワゴン車に乗ってかけたカセットテープは、アメリカ民謡でアニマルズの歌でヒットした「朝日の当たる家」です ヴェンダース監督はこの歌が好きなようで、後に平山が訪ねるスナックのママ(石川さゆり)にギター伴奏で歌わせています(歌詞は浅川マキ・バージョンらしい)。平山のお気に入りは、カセットテープ全盛時代に流行った曲のようですが、私にはほとんど分かりませんでした

エンドロールの直前、「日本では、森林などの木立から太陽の日差しが漏れる光景のことを”木漏れ日”という」という映像が映し出されます 本編の中でも、平山が神社の境内で空を見上げてカメラで木々を撮る時に”木漏れ日”が見えていました ベンダース監督は小津安二郎監督を尊敬しており、映画製作上も影響を受けているようですが、私は黒澤明の「羅生門」におけるモノクロ映像による”木漏れ日”を思い浮かべました

本作では平山が読む本として3冊の文庫本が登場します 幸田文「木」、ウィリアム・フォークナー「野生の棕櫚(しゅろ)」、パトリシア・ハイスミス「11の物語」です 今度、書店に行く時のリストに加えておこうと思います

この作品は2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、役所広司が日本人俳優としては「誰も知らない」の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞しました 台詞が限りなく少なく、顔の表情や体の動作によって寡黙な平山という一人の男を演じることがいかに難しいか それを考えると当然の受賞だと思います

この映画は、毎日同じようなことが繰り返される日常生活の中にも、小さな喜びを見出し、何よりも健康で真面目に生きていくことがどれほど大切なことかが伝わってきます

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする