人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

東京春祭チェンバー・オーケストラ「室内楽特別コンサート」を聴く~メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲」他

2016年03月21日 09時25分18秒 | 日記

21日(月)。わが家に来てから540日目を迎え、マガジンラックでくつろぐモコタロです

 

          

             マガジンつっても TIMEじゃなくて ひかりTV じゃん

 

  閑話休題  

 

今年も「東京・春・音楽祭」の季節が到来しました。この音楽祭が始まると「ああ、春が来たなぁ」と思います 昨日、上野の東京文化会館小ホールで「東京春祭チェンバー・オーケストラ 室内楽特別コンサート」を聴きました 

プログラムは①テレマン「4つのヴァイオリンのための協奏曲ハ長調」、②同「同・ニ長調」、③ドヴォルザーク「三重奏曲ハ長調」、④同「弦楽五重奏曲第2番ト長調」、⑤メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲変ホ長調」。出演はヴァイオリン=漆原啓子、川田知子、小林美恵、島田真千子、玉井菜採、ヴィオラ=佐々木亮(N響)、篠崎友美(新日本フィル)、チェロ=銅銀久弥(N響)、藤村俊介(同)、コントラバス=池松宏(都響)です

 

          

 

自席はF列20番、センターブロック左通路側です。会場は8割方埋まっている感じでしょうか 1曲目と2曲目のテレマン「4つのヴァイオリンのための協奏曲」は、逆説的ながら珍しい編成です 4人のヴァイオリニストが登場し、左から島田、玉井、川田、小林という態勢をとります。赤、青、白、ベージュと色とりどりの衣装が春らしさを醸し出しています 一番 後輩格の島田のリードで演奏されますが、同属の楽器による掛け合いが楽しい音楽です 次いで2曲目のハ長調の協奏曲に入りますが、一部メンバーが入れ替わり左から玉井、小林、漆原、島田の態勢をとります この曲もテレマンらしい楽しい曲です。演奏者も楽しんでいるように見受けられます

ところで、会場入口で「東京・春・音楽祭」の総合プログラム(216ページ。500円)を買ったのですが、このコンサートについて解説している中で、「テレマンは社会的な成功とは裏腹に、家庭的には恵まれなかった 大恋愛の末に結ばれた最初の妻とわずか15か月で死別、5年後に再婚したが、後妻は陰気な性格の博打好きで、その散財は留まるところを知らず、遂に借金の額は、相当の報酬を得ていたはずの、夫の年収の数倍に達した テレマンは破産の危機に瀕したが、地元の商人たちの尽力で辛くも回避したという出来事もあった」と書かれていました

テレマンと言えばバッハ、ヘンデルと並ぶ音楽界の当時のスーパースターでしたが、その当時は天下のJ.S.バッハを凌ぐ大人気者だったようです 

「テレマンさん、恵まれない家庭にも関わらず、音楽家としては凄い人気でしたね」と褒め称えたら、

「いや~、そんなに褒められたら照レマンがな」と答えた、かな。

それを聞いていたヘンデルが、

「テレマンさん、大阪弁はちょっと変デル」と突っ込んだ、かな

 

          

 

さて、3曲目のドヴォルザーク「三重奏曲ハ長調」はヴァイオリン2本とヴィオラ1本という極めて珍しい編成の曲です ヴァイオリンの川田、玉井にN響の首席ヴィオラ・佐々木が加わります。この曲は作曲者が45歳の充実していた時期の曲だけに、ドヴォルザークらしい曲想が現れます

前半最後の曲はドヴォルザーク「弦楽五重奏曲第2番」です。弦楽五重奏曲はヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ1という編成が多いのですが、この曲はヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ1、コントラバス1という編成をとります 左から小林、島田、池松、銅銀、篠崎という態勢をとります。この曲では、随所にドヴォルザークの民族主義的な曲想が現れます

この曲は ここ数日、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団+ヨーゼフ・ヘルマンの演奏によるCDで予習してきたので、メロディーは頭に入っています 何回か繰り返し聴いているうちにこの曲の良さが分かってきて、そのうえで生演奏を聴くことができて良かったと思います

 

          

 

休憩後は待ちに待った 大好きなメンデルスゾーン「弦楽八重奏曲変ホ長調」です 弦楽だけの八重奏曲は滅多にない編成ですが、若干16歳の青年がこの曲を作ったとはどうしても信じられないくらい充実した曲です 生命力に溢れた名曲です 8人が左右対称に並びます。左から漆原、小林、佐々木、藤村、銅銀、篠崎、玉井、川田という編成です

第1楽章の冒頭から、聴いていてワクワクします この曲は前へ前へという推進力に満ちています。16歳の青年の目前に 明るい未来が開けているかのようです 第3楽章のスケルツォでは「真夏の夜の夢」の妖精が飛び回ります。そして、第4楽章プレストは、チェロからヴィオラ、ヴィオラからヴァイオリンへと8人の奏者がフーガのように力強い演奏を繰り広げ、後半のフィナーレに突入します この爽快感は聴かなければ分からないでしょう 8人の奏者は全力投球の熱演でした

 

          

 

8人は「弦楽八重奏曲」の第3楽章「スケルツォ」をアンコールに演奏し、コンサートを締めくくりました。「東京・春・音楽祭」の幕開けに相応しい明るく楽しいコンサートでした

 

          

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飯森範親+東京交響楽団でモーツアルトとフォーレの「レクイエム」を聴く

2016年03月20日 08時52分31秒 | 日記

20日(日)。わが家に来てから539日目を迎え、不服そうな顔をしているモコタロです

 

          

           この家はいろいろなものが散らかってるなぁ 何だこりゃ?

 

  閑話休題  

 

昨夜は、息子の大学卒業を祝って なだ万のお弁当でお祝いをしました

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日、初台の東京オペラシティコンサートホールで東京交響楽団のオペラシティシリーズ第90回演奏会を聴きました プログラムは①フォーレ「レクイエム ニ短調」、②モーツアルト「レクイエム ニ短調K626」です 出演は、ソプラノ=森麻季、メゾソプラノ=在原泉、テノール=与儀巧、バリトン=甲斐栄次郎、合唱は東響コーラス、指揮は飯森範親です

 

          

 

オケと合唱団約100名がスタンバイし、グレブ・二キティンの合図でチューニングが始まります 通常はオーボエに合わせるのに、2階席のパイプオルガンに合わせて音を出しました。そう、フォーレは「レクイエム」にオーボエを使わなかったのです

バリトンの甲斐栄次郎が指揮者・飯森範親とともに登場し、スタンバイします。この曲は第1曲「イントロイトゥス(入祭唱)とキリエ(憐みの讃歌)」から第7曲「イン・パラディスム(天国にて)までの7曲から成りますが、第1曲はコーラスだけで歌われます 第2曲「オフェルトリウム(奉納唱)」では甲斐のバリトンが会場に良く響きます。第3曲「サンクトゥス(聖なるかな)」を合唱が歌っている時、2階正面左サイドから 黒のシックな衣装に身を包まれたソプラノの森麻季が静かに登場しパイプオルガン脇にスタンバイします そして第4曲「ピエ・イエス(ああ、イエスよ)を美しいソプラノで歌います

フォーレの「レクィエム」には、モーツアルトの「レクイエム」にはある「ディエス・イレ(怒りの日)」がありません あくまでも静かに穏やかに天国的に音楽が流れます。それがこの曲の特徴です

フォーレの「レクィエム」というと、ミシェル・コルボ指揮ローザンヌ合唱団による名演を思い出します 5月のラ・フォル・ジュルネ音楽祭に毎年登場していたコルボの出番が今年ないのは寂しい限りです

 

          

 

休憩後はモーツアルト「レクイエム ニ短調」です。モーツアルトの最後の曲ですが、未完のまま人生を閉じました この曲はヴァルゼック=シュトゥパハという伯爵の依頼により書かれましたが、未完のまま残された「レクィエム」は弟子のジュスマイヤーによって補筆されました

第1曲「イントロイトゥス(入祭唱)」から第8曲「コンム二オ(聖体拝領唱)」までの8曲からなりますが、第3曲「セクエンツァ(続唱)」は①ディエス・イレ(怒りの日)から⑦ラクリモーサ(涙にくれる、その日)まで7曲あります

ソリスト陣は4人とも素晴らしかったですが、とくに森麻季は美しい声で、まるで天使が歌っているような純粋さが伝わってきました また、ウィーン国立歌劇場の専属歌手として活躍した実力者・甲斐栄次郎は説得力のある歌声で素晴らしいバリトンを聴かせてくれました

東響コーラスの皆さんは迫力のある歌声で聴衆を魅了しました モーツアルトの「怒りの日」「恐るべき威厳の王よ」などは力強く、感情がこもっていました

 

          

 

さて、プログラムを見ていて、残念なお知らせが載っていました 東響のソロ・コンサートマスター・大谷康子さんが3月いっぱいで契約満了により退団するというニュースです 大谷さんは1995年(平成7年)4月1日に入団し、21年にわたりコンサートミストレスとして活躍してきました 彼女の演奏で一番印象に残っているのは、ユベール・スダーンが指揮をしてシューベルトの交響曲全曲演奏会をやった時、何番の交響曲か忘れましたが、ヴァイオリン・セクションの音が大谷康子さんの身体に集まり、それが大谷さんのヴァイオリンから一つの音となって聴こえてきたことです これにはビックリしましたが、これぞ本物のコンミスだ と思いました これからはソリストとして活躍されるようですが、頑張ってほしいと思います

 

          

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「ヘンシェル弦楽四重奏団」「クラシカル・プレイヤーズ東京」「室内楽の魅力」のチケットを買う

2016年03月19日 08時51分12秒 | 日記

19日(土)。わが家に来てから今日で538日目を迎え、ドラクロワの絵のモデルになったつもりで澄ましているモコタロです

 

          

           絵と写真は 光と影の対比だべさ 音楽では長調と短調かな

 

  閑話休題  

 

昨日は、息子の通う大学の卒業式が日本武道館で開かれたので参列しました 春らしい暖かな日で良かったと思います。会場を見渡すと、振袖姿の女子学生をちらほら見かけます。リケジョが比較的多いのは薬学部が筆頭のようです 式典は大学管弦楽団によるワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から「第1幕への前奏曲」によって幕が開きました 演奏者には振袖姿の女子卒業生も混じっています

 

          

 

卒業式なので、学位記・修了証書授与が大半を占めますが、数千人いる卒業生全員に授与するわけにはいかないので、各学部・学科の総代に授与します それでも理科系に特化した大学とはいえ学部・学科が多いのでかなりの時間がかかります 予定より10分遅れの12:45に開会宣言があり、閉会したのは14:20過ぎでした 「これでやっと息子も大学を卒業か」と考えると感慨深いものがあります。まるで自分が大学を卒業するような気分です

さて、息子は式典後 学校に戻り謝恩会に参加するので夕食はいらないと言うし、娘は帰りが遅くなるので外食すると言うので、昨日はウィークデーにも関わらず夕食は作らないことにしました たまにはこういう日があってもいいかな、専業主夫としては

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

当ブログ読者Nさんからいただいた「ブロワ珈琲焙煎所」のコーヒーのうち4袋目、インドネシアのトラジャ・コーヒーを冷凍庫から取り出して封を切りました 今このブログを書きながら飲んでいるのですが、独特の風味があってすごく美味しいです

 

          

          

 

  最後の、閑話休題  

 

チケットを3枚買いました 1枚目は、5月8日(日)午後3時から東京藝大奏楽堂で開かれる「ドイツ正統派クァルテット~ヘンシェル弦楽四重奏団を迎えて」公演です これは文部科学省国立大学機能強化事業「国際共同プロジェクト」の一環として開かれる公演です。プログラムは①モーツアルト「弦楽五重奏曲第3番K515」、②ヒナステラ「弦楽四重奏曲第1番」、③シューマン「ピアノ五重奏曲 作品44」で、①のヴィオラは渡部咲耶、③のピアノは矢野雄太です 全席自由で3,000円は安いと思います

 

          

 

2枚目は7月1日(金)午後7時から池袋の東京芸術劇場大ホールで開かれる「クラシカル・プレイヤーズ東京」のコンサートです プログラムは①モーツアルト「交響曲第32番ト長調」②ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番ト長調」、③モーツアルト「交響曲第40番ト短調」です。②のピアノ独奏は仲道郁代、指揮は有田正広です 

このオーケストラは古楽器によって演奏するのが特徴です。S席=4,000円、A席=3,000円、B席=2,000円は格安です 私はこのコンサートを聴きに行くため、同日に予定が入っていた新国立オペラ「夕鶴」を翌7月2日に振り替えました

 

          

 

3枚目は9月25日(日)午後2時から晴海の第一生命ホールで開かれる「室内楽の魅力~ブラームス第5回”音楽家たちとの友情”」公演です プログラムは①ドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲イ長調」、②ブラームス「ピアノ五重奏曲ヘ短調」です。ヴァイオリン=豊嶋泰嗣、矢部達哉、ヴィオラ=川本嘉子、チェロ=上村昇、ピアノ=小山実稚恵です チケット代はS席=5,000円、A席4,500円、B席=3,500円です

いずれもコンサート・スケジュールが発表され次第チケットの手配をしないと、とんでもない席しか取れなくなります 救急車とチケットの手配は早めが肝心です

 

          

【追伸】

息子の卒業式があった昨日、当ブログの登録読者が800人に達しました ご覧いただいている読者の皆さまにお礼を申し上げます これからも休むことなく毎日 toraブログを書いて参ります。モットーは「継続は力なり」です

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ローター・ツァグロゼク+読売日響でベートーヴェン「交響曲第3番”英雄”」他を聴く

2016年03月18日 07時57分58秒 | 日記

18日(金)。わが家に来てから今日で537日目を迎え、おしっこ防止用シーツの上でスタンバイするモコタロです

 

          

            おしっこするところ撮らないで! 逮捕するよ しっこー猶予付きだけど

 

  閑話休題  

 

昨日は、今日卒業式を迎える息子のために 夕食にステーキを焼きました あとはいつもの「生野菜とワカメとシラスのサラダ」です

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日、早稲田松竹で「夏をゆく人々」と「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」の2本立てを観ました

「夏をゆく人々」は2014年、イタリアの若き女性監督A.ロルヴァケルによるイタリア・スイス・ドイツ合作の映画です 

光と緑あふれるイタリアのトスカーナ地方の人里離れた土地で、昔ながらの方法で養蜂業を営む一家のひと夏の物語です 4人姉妹の長女ジェルソミーナを演じたマリア・アレクサンドラ・ルングが素晴らしい 更生施設から一家が預かった少年が口笛を吹くと、ジェルソミーナの口から蜜蜂が出てくるシーンはサプライズです この作品は第67回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞しています

 

          

          

 

2本目の「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」は2013年、ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル監督によるアメリカ映画です

2007年、シカゴ在住の青年ジョン・マルーフがオークションで大量の古い写真ネガを落札した。その一部をブログにアップしたところ大きな反響を呼び、いずれ世界の主要メディアも絶賛するようになった ジョンが撮影者を調べると、ヴィヴィアン・マイヤーという女性であることが判ったが、すでに故人となっていた 職業を調べるとナニ-(乳母)だったことが判る。彼女は15万枚以上の作品を残しながら生前1枚も公表することはなかった

映画に登場する写真を見ると、シャッター・チャンスといい、構図といい、どれもが素晴らしい作品ばかりで驚きます 映画では、生前のヴィヴィアンに関わりのあった人々へのインタビューが行われていますが、共通しているのは「変わった人だった」という評価です。また、写真を撮るときにそばにいた人へのインタビューでは「彼女は被写体にポーズを取るように注文を付けていた」という人もいれば、「あるがまま自然に撮っていた」という人もいます。ケース・バイ・ケースだったのかも知れません また、プロの写真家へのインタビューで、「なぜ被写体がすぐ近くにいるのに 構えているように映っていないのか」の理由について、「カメラを目の位置で写そうとすると 構えられてしまうが、彼女の使用カメラは古いタイプで、上からファインダーを覗き込むタイプのカメラ(下のチラシ)なので、彼女が下を向いた姿勢で写すことになる。したがって相手は自分が写されえいるとは気が付かない場合がある」と答えていました

どこかで写真展をやってくれたら是非観に行きたいと思います

 

          

          

 

  最後の、閑話休題  

 

昨夕、サントリーホールで読売日響の第556回定期演奏会を聴きました 偶然かもしれませんが、前日に同じ会場で聴いた新日本フィルも第556回定期演奏会でした。プログラムは①ベンジャミン「ダンス・フィギュアズ」(日本初演)、②コダーイ「ハーリ・ヤーノシュ」、③ベートーヴェン「交響曲第3番変ホ長調”英雄”」です 指揮はドイツ出身のローター・ツァグロゼクです

 

          

 

この日のプログラミングは、1曲目は別として、2曲目と3曲目はナポレオンが共通のキーワードのようです コダーイの組曲「ハーリ・ヤーノシュ」は第4曲が「戦争とナポレオンの敗北」というタイトルが付けられており、一方、ベートーヴェンの「交響曲第3番”英雄”」は当初、ナポレオン・ボナパルトに献呈しようとして「ボナパルト」と名付けましたが、ナポレオンが皇帝に即位したことを知って表紙を破り、代わりに「英雄交響曲~ひとりの偉大な人物の思い出を記念して」と書き換えました

オケのメンバーが登場します。最初から100人規模のフル・オーケストラ態勢ですが、通常よりも打楽器が多くスタンバイしています コンマスはウィーン・フィルのコンマスの一人 ダニエル・ゲーデです

第1曲目の「ダンス・フィギュアズ」の作曲者であるベンジャミンは1960イギリス生まれです。つい先日亡くなったピエール・ブーレーズの招聘によりフランス国立音響音楽研究所(IRCAM)でコンピュータを使用した作曲に従事した経歴があります 「ダンス・フィギュアズ」はダンス作品のために構想した9つの小品からなる楽曲ですが、1つが1分から3分半程度の極めて短い曲から成ります ツァグロゼクのタクトで1曲目の Spell が弦楽器の弱音で開始されます。全体を通して聴いた感じでは、現代音楽にしては聴きやすいと思いました

オケのメンバーが一部入れ替わり、ツィンバロム(弦をバチで叩いて音を出す楽器)がステージ中央にスタンバイします 2曲目はコダーイの組曲「ハーリ・ヤーノシュ」です。コダーイはバルトークとともにハンガリー民謡の採譜と録音を行い、作品に反映させました この曲は、ハンガリーでは知らない人がいない人物ハーリを主人公とした物語です。19世紀初頭にオーストリア帝国軍に従軍したのち故郷に戻り、様々な手柄話を面白可笑しく語ったものを音楽にしたものです 第1曲”前奏曲 おとぎ話は始まる”は、オーケストラ全体で大きなくしゃみを表す音楽で開始されます これは「聞いている者がくしゃみをすれば本当の話」というハンガリーの言い伝えに由来します。「さあ、本当の話が始まるよ」といった感じでしょうか。この開始は、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」の出だしに似ています。オケが「昔々あるところにティルといういたずら小僧がいました~」と語り始めます

第3曲は冒頭 ヴィオラ独奏により瞑想的な音楽が奏でられますが、首席・鈴木康治の演奏はなかなか聴かせてくれました 舞台中央で構えるツィンバロムが活躍します 第5曲はこの曲で一番有名な音楽です。そして最後の第6曲の勇ましく賑やかな音楽で最高潮に達します

ツァグロゼクは歌劇場での経歴が豊富なようなので、こうした「物語風」の音楽も得意なのかも知れません テンポ感が良く キビキビした指揮ぶりで音による物語を語っていきます

 

          

 

休憩時間に 当ブログ読者ゆえさんと2階のホワイエでコーヒーを飲みました 彼女は同じく当ブログ読者Nさんの代理で聴きに来ています ゆえさんはオケの背後のP席からステージを見下ろすような形で音を聴いていたわけですが、打楽器が近いこともあり、「最初の曲で 一度も見たこともない楽器があった 黒くて丸いものがいくつか並んでいる楽器で・・・」と、プログラムに掲載された「楽器編成」を見ながら「ログドラムという楽器かなあ」と推測していました 私は現代音楽の場合、どんな楽器が使われているのか さほど興味がないので、そんな楽器あったかなあ、という感じで聞いていました それにしても、現代音楽って、これまでの作曲家が使わなかった音を出そうと独創性を求めるため、どんどん変わった楽器を加えがちだと思います あらためて「ダンス・フィギュアズ」の楽器編成を見たら、「ギロ」「ラチェット」「アンビル」「ヴィブラスラップ」「ログドラム」という訳の分からない楽器のほか、「銅鐸」「木魚」まであり、さらに驚くのは「釣り用リール」とありました。これで聴衆の心を釣り上げようという魂胆でしょうか

15分しか休憩時間がなかったので、あまり話が出来なくて残念でした 今度ゆっくりね

 

          

 

休憩後はベートーヴェン「交響曲第3番変ホ長調”英雄”」です。1803~04年に作曲され、1805年にウィーンで初演されました 前半のフル・オーケストラ態勢から 打楽器を中心に大幅に退場したため、オケがスリムになりました

第1楽章冒頭の2つの勇壮な和音から曲が開始されます。全体的な印象としては速めのテンポによりグングン前進させていき 引き締まった演奏に徹している感じを受けました あらためてツァグロゼクのプロフィールを見ると、ザルツブルクでカラヤンのアシスタントを務めた経験があるようです 彼のテンポ設定はカラヤンの影響があるのかも知れません 派手なところはまったくなく、いかにもドイツの質実剛健の指揮者という感じを受ける指揮ぶりでした

読売日響は弦楽器も管楽器も打楽器も、集中力に満ちたレヴェルの高い演奏を展開しました

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上岡敏之+新日本フィルでマーラーとシューベルトの「交響曲第1番」を聴く~第556回定期演奏会

2016年03月17日 07時58分13秒 | 日記

17日(木)。息子の通う大学から大学院入学関係書類が送られてきました。入学金と初年度学費については前もって通知が来て、すでに振り込み済みなので、あと親に関係があるのは保証人の印を押せとかそうした事務手続きだろう、と気軽に「入学のしおり」を見ていたら、「入学初年度の学費等納入について」の項目に「後期分学費の振込依頼書は8月上旬に保証人に送付します」と書かれていました。思わず「えっ!この前 振り込んだのは1年分の学費じゃなかったの」と驚いて、控えを見たら、確かに小さな字で「後期学費は別途納入となります」と書かれていました 「理科系の大学院の学費が大学の学費の半額であるはずはないよな」と、自分の早トチリに舌打ちしました

というわけで、わが家に来てから536日目を迎え、久々にアップで登場のモコタロです

 

          

            カメラさん それ以上近づかないで! 風邪がうつるから

 

  閑話休題  

 

昨日は、夕食に「メカジキのソテー」「生野菜とワカメとシラスのサラダ」「インゲンのお浸し」を作りました サラダには、ブロッコリ、アスパラガス、サニーレタス、トマト、ミニトマト、キュウリ、ワカメ、シラスが入っています

 

          

          

  も一度、閑話休題  

 

昨夕、サントリーホールで新日本フィル第556回定期演奏会を聴きました プログラムは①シューベルト「交響曲第1番ニ長調」、②マーラー「交響曲第1番ニ長調」。指揮は次期音楽監督の上岡敏之です

上岡敏之は1960年東京生まれ。東京藝大からハンブルク音楽大学に進みました その後、ヘッセン州立歌劇場の音楽総監督、北西ドイツフィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、ヴッパータール市立歌劇場の音楽総監督、ザールランド州立歌劇場の音楽総監督などを歴任しました 私は上岡敏之+ヴッパータール市立歌劇場管弦楽団が来日したときサントリーホールで凱旋公演を聴いています。その時もマーラーを振りました

 

          

 

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その奧にコントラバスという態勢をとります。コンマスはチェ・ムンスです

1曲目のシューベルト「交響曲第1番ニ長調」は作曲者が16歳の時に作曲されましたが、演奏時間にして30分はかかる大作です この曲を生演奏で聴くのは 数年前にユベール・スダーンが東響を振ったシューベルト『交響曲全曲演奏シリーズ』以来です

オケがチューニングを終えスタンバイする中、上岡敏之が登場します にこやかに会場に一礼しオケに向かいます。この時、多くの指揮者は緊張感に満ちた表情を見せるのですが、上岡の場合は”リラックス”しているように見えます。落語家の柳家喜田八師匠が高座に上がるときの雰囲気に似ています。やる気があるようなないような独特の雰囲気です。上岡の場合は やる気がないのではなく オケも聴衆も呑んでリラックスしているという感じです

この曲は、16歳の少年が作ったとは思えないほど充実した響きがあります 4つの楽章から成りますが、全体を通してひと言で言えば「爽快感」かも知れません 上岡はタクトで細かい指示を出し、若きシューベルトの青春の交響曲を紡いでいきます 指揮の途中、指揮台に設置された転倒防止用の柵の横バーにもたれかかったり、右手で指揮をしながら左手でバーをつかんだりして激しい指揮ぶりを見せていました 日本で一番横バーに接触する回数が多い指揮者は、ひょっとして上岡敏之かも知れません かつて指揮中に時折 横バーにつかまって指揮しているマエストロを思い出しました。天才カルロス・クライバーです 上岡の指揮を見ていると、実に楽しそうです 考えようによっては、この会場で演奏を一番演奏を楽しんでいるのは指揮者自身かも知れません。新日本フィルは躍動感に満ちた清々しい演奏を展開しました

会場一杯の拍手に、上岡はまずコントラバスを立たせ、次いで第2ヴァイオリン、チェロ、第1ヴァイオリン、管楽器の順に立たせました これは他の指揮者が立たせる順番の逆です こういうところにも上岡敏之という人の特徴があります。”縁の下の力持ち”を優先させて脚光を浴びせさせる独特のやり方です

 

          

 

休憩後はマーラーの「交響曲第1番ニ長調」です。1888年に完成しました 初めは5楽章から成る交響詩として構想されましたが、「花の章」が除かれ4楽章になりました。また当初この曲には「巨人」というタイトルが付けられていましたが、これはマーラーが愛読していたドイツの作家ジャン・パウルの長編小説に由来しています しかし、マーラーは、標題を付けることは聴衆の音楽解釈を歪めるとして後に削除しています

第1楽章が、神秘的な雰囲気で開始されます。そしてクラリネットがカッコウの鳴き声を模倣します 第2楽章のトリオ部分では、上岡はヴァイオリンとチェロに下から上へずり上がるような弾き方を求め、この曲のエキセントリックな性格を音で表しました

第3楽章は、冒頭ティンパ二が刻む葬送のリズムにのせ、コントラバスがソロで「フレール・ジャック」の陰鬱なメロディーを奏でますが、上岡は極力 音を抑え気味に指示します この楽章が 息が絶えるように終わると、普通の指揮者は間髪入れずに第4楽章の「嵐」に突入するのですが、上岡はタクトを上げた姿勢をしばらく保ち、「いつ爆発するのか?」という期待感を高めたうえで、いきなりタクトを降ろし「嵐」の第4楽章に突入します 上岡はタクトで、右に 左に 奧に 突き刺すような指示を出します。この楽章における「動」と「静」の対比は実に見事でした フィナーレでは、マーラーの指示通り、ホルン8人、トロンボーン1人、トランペット1人を立たせ ベルアップで演奏させました。これは壮観です

最後の音が鳴り終わると間髪入れずに「ブラボー」がかかり、大きな拍手が会場を見たしました 「ブラボー」はフライング気味でしたが、あの圧倒的なフィナーレを聴いたら無理もないかな、と思ってしまうほど興奮状態にありました

上岡は、今度はホルンから順に管楽器を立たせてから弦楽器に移りましたが、やはりコントラバス、チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンの順に立たせました

上岡はこの日、2曲とも暗譜で振りましたが、指示は細かく、的確でした 新日本フィルのメンバーは上岡の指揮に化学反応を起こし、熱い演奏を繰り広げました

上岡は9月から新日本フィルの音楽監督に就任しますが、トリフォニー・シリーズもサントリーホール・シリーズも、マーラーが1曲も入っていない中で、いかに聴衆を引き付けていくか、手腕が問われます

 

          

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「がんばろう!日本 スーパーオーケストラ」毎日希望奨学金チャリティーコンサートを聴く 

2016年03月16日 08時01分42秒 | 日記

16日(水)。風邪薬を飲んでいるせいで眠いです。わが家に来てから535日目を迎え、ヒーターの前で暖を取るモコタロです

 

          

               毎日温度が変わって 三寒四温どころじゃないよね

 

  閑話休題  

 

新日本フィルの2016/2017シーズンへの会員継続をすることにしました ただし現在のサントリーホール・シリーズからトリフォニー・シリーズに移ります。どちらのシリーズもマーラーの曲が入っていないので不満があるのですが、在京オケの中で一番 演奏者の顔と名前が一致する新日本フィルはやはり継続しておこうと思いました 両シリーズの内容を比較してみてトリフォニーの方が魅力があったので、こちらを選びました。最大の決め手は4月定期公演で お気に入りのピアニスト、アンヌ・ケフェレックがモーツアルトの「ピアノ協奏曲第27番K595」を弾くことです また 曲としては10月公演のドヴォルザーク「スターバト・マーテル」、来年6月公演のハイドン「オラトリオ”天地創造”」、同7月公演のサン=サーンス「ピアノ協奏曲第5番”エジプト風”」が面白いと思います

トリフォニー・シリーズは、金曜と土曜の2回 同一プログラムによる公演がありますが、どちらにするか迷っています 取り合えず、シリーズ変更だけ通知しておき、4月17日以降、座席指定の連絡の際に伝えようと思っています

 

          

          

          

          

 

  も一度、閑話休題  

 

昨夕、サントリーホールで「がんばろう!日本 スーパーオーケストラ 毎日希望奨学金チャリティーコンサート」を聴きました プログラムは①ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、②サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」、③オーレ・ブル「セーテルの娘の日曜日」、④プッチーニ「私のお父さん」、⑤ラヴェル「ボレロ」です ①のピアノ独奏は小山実稚恵、②~④のヴァイオリン独奏は松田理奈、指揮は本名徹次です オケは全国のオケからの寄せ集め集団で、コンマスは読響コンマスの小森谷巧です

 

          

 

自席は2階RC6列6番、センター寄り右ブロック右通路側席です。会場はほぼ満席 司会進行役の小森谷徹がマイクを持って登場し、このコンサートの趣旨を説明します。3.11東日本大震災の年に始めて今回が6回目を迎えるとのことで、オケのメンバーは全員ノーギャラでの出演ということです

弦楽器は左奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、右にチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります 出演者をプログラムのメンバー表で確かめると、一番多いのがNHK交響楽団(元N響を含め23人)、次いで読売日響(元読響を含め14人)で、あとは都響をはじめとする在京オケ、そして地方のオケからも参加しています。本名徹次氏が音楽監督・首席指揮者を務めるベトナム国立交響楽団のコンミス、ダオ・マイ・アインさんも第1ヴァイオリンに加わっています

1曲目のラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」を演奏するためソリストの小山実稚恵がダークブルーの衣装で登場、ピアノに対峙します 本名氏のタクトで第1楽章が開始されますが、冒頭 ピアノがロシア正教の鐘を模した厳かな音を奏でます それからは、まさにラフマニノフのロマンティシズムまっしぐらという感じで、うねるような音楽が続きます

仙台で生まれ3歳から盛岡で育った小山実稚恵ほどこのコンサートに相応しいソリストはいないでしょう 震災の年から毎年被災地で演奏活動を行っているとのことです チャイコフスキー国際コンクールとショパン国際ピアノコンクールの両方に入賞しているピアニストは日本では彼女だけです。現在は世界のピアノ・コンクールの審査員を引き受ける一方で、被災地の小学校にピアノを送る活動なども行っているそうです この日の演奏にはそんな彼女の自信と希望が現れていたように思います。人間的に素晴らしい人なのだと思います

インタビューで、ラフマニノフが好きな理由を尋ねられ「寒いところで育ったから親近感があるのかも知れませんね」と答えていました 彼女は学生時代にラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」を聴かないと眠れなかったほど、ラフマニノフが好きだったそうです

会場一杯の拍手に、スクリャービンの「左手のための2つの小品」から「ノクターン」を静かにロマンティックに演奏しました

 

          

 

休憩後は、ヴァイオリ二スト松田理奈を迎えて、最初にノルウェーの作曲家オーレ・ブル作曲・スヴェンセン編曲による「セーテルの娘の日曜日」を あくまでも優しく演奏しましたが、衣裳がまるでチョコレートにカラフルな花模様を描いたケーキのような鮮やかなロング・ドレスだったので、一瞬「きゃりーぱみゅぱみゅかよ」と思いました。次いでプッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」から「私のお父さん」を いかにもおねだりするかのように甘えるように演奏しました

3曲目はサラサーテの名曲「ツィゴイネルワイゼン」です。前半はヴァイオリンを良く歌わせて、まるで「泣き節」のようなねっとりした演奏を展開しましたが、途中から一転し、超絶技巧の演奏に徹しました。2007年にサラサーテ国際コンクールでディプロマ賞に入賞しているだけのことはあります

演奏後のインタビューで「セーテルの娘の日曜日」は珍しいが、なぜこの曲を選んだのか、と聞かれ、松田は「この曲はヴァイオリンが一番喜ぶニ長調(シャープ2つ)で書かれているので、スーパーオーケストラと演奏するならヴァイオリンが響きやすい調性の曲を選ぼうと思ったからです」と答えていました。そう言われてみれば、ヴァイオリンの三大協奏曲であるベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーのコンチェルトはすべてニ長調で書かれています

司会がチョコレート・ケーキのような派手な衣装を見ながら「こう見えても3歳のお子さんのママなんですよね」と言ったので、のけぞりました きゃりーぱみゅぱみゅを撤回し、「松田聖子かよ!」に訂正します。どっちにしても古ッ

最後の曲に移る前に、ベトナムから参加しているヴァイオリンのダオ・マイ・アインさんへのインタビューがありました 5年前の震災の時のベトナムの様子から 現在こうして日本のオケの仲間と一緒に演奏できる幸せまでが、本名氏の”超訳”により紹介されました

フルオーケストラがスタンバイし、本名氏の合図でボレロが開始されます 小太鼓が小さくリズムを刻む中、ヴィオラとチェロの弱音のピツィカートに乗って最初はフルートがテーマを演奏し、クラリネットに受け継がれ、さらにファゴットに・・・と楽器を変えて同じテーマが奏でられていきます 曲自体が大きなクレッシェンドになっていて、演奏する楽器の数が増え 次第に音量が増していきます ピツィカートを奏でていたヴァイオリンがメロディーを弾くようになってから、それまでほとんど身体を動かさなかった本名が明確に分かるようにタクトを振り始めました

私はこの曲を聴きながら、前日観た映画「愛と哀しみのボレロ」におけるジョルジュ・ドンの「ボレロ」を思い起こしていました 最初は楽器も少なく小さな音だったのが、次第に楽器が増え、音が大きくなっていくという意味では、東日本大震災からの復興を目指す東北地方の現在を表していると言えるかも知れません

1年に一度限りのために組織されるオーケストラによる総力を挙げての集中力に満ちた渾身の演奏でした 満席の会場からは大きな拍手とブラボーが寄せられました

最後に、毎年恒例になっている「ふるさと」をオケの演奏にのせてピアニストの小山、ヴァイオリニストの松田も交えて聴衆全員で歌い、コンサートに幕を降ろしました

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「愛と哀しみのボレロ」を観る~カラヤン、ヌレエフ、ピアフ、グレン・ミラーの人生がモデル

2016年03月15日 07時56分43秒 | 日記

15日(火)。わが家に来てから534日目を迎え、今日もゲージから外を見るだけで外に出ようとしないモコタロです

 

          

            おお しもじもの暮しも大変じゃのう よきにはからえ

 

  閑話休題  

 

昨夕、娘のリクエストで久しぶりにカレーライスを作りました いつも通り 牛肉は切り落とし、ジャガイモとニンジンは皮付きです。息子と私はお代わりしました

 

         

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日はホワイトデーでした。1か月前のバレンタインデーに娘からチョコをもらったので、手帳に「チョコレート」と書いておきながら すっかり忘れていて、外出から家に帰って初めて気が付き、再度 冷たい雨が降る中をチョコレートを買いに出かけました 娘に渡すと「あっ そうだったね」とこちらも初めて気が付いたようでした。さっそくいただきました、私も

 

          

 

  またまた、閑話休題  

 

新国立劇場から「オペラ『ウェルテル』ゲネプロ見学会のご案内」が届きました これは新国立劇場「ジ・アトレ」の特典サービスの一つで、抽選により何人かに当たるものです。私も目出度く当選したわけです 昨年はコルンゴルトのオペラ「死の都」のゲネプロに当選したので、2年連続です 私は、当たる景品にいくつか選択肢がある場合は あまり人気のないものを選ぶようにしています 例えば、同じゲネプロでもプッチーニの「トスカ」とマスネの「ウェルテル」のどちらかを選んでよいということなら、マスネを選びます。その方が競争率が低く、当選確率が高いからです

 

          

 

ゲネプロは3月31日(木)午後1時半~45分にオペラパレスに集合とのことです。マスネのオペラ「ウェルテル」はCDを持っていないので、予習のつもりで観ることにします

 

          

 

  最後の、閑話休題  

 

昨日、池袋の新文芸坐で「愛と哀しみのボレロ」を観ました この映画は1981年にフランスのクロード・ルルーシュ監督が制作した、1930年代から80年代に至るドイツ、ソビエト(ロシア)、フランス、アメリカを舞台に活躍した音楽界のスーパー・スターの人生をモデルに描いた3時間4分に及ぶ壮大なドラマです そのモデルとは、指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン、バレエダンサー・ルドルフ・ヌレエフ、シャンソン歌手エディット・ピアフ、楽団指揮者グレン・ミラーの4人です

 

          

 

実を言うと、私はこの映画を観るのは2回目だと思い込んでいました ところが、3時間にも及ぶ4つの物語を観ているうちに、最初から最後まで通して観たのは今回が初めてだということに気が付きました その原因は明らかです。それは映画の冒頭と最後に踊られる天才バレエダンサー、ジョルジュ・ドンによるラヴェルの「ボレロ」の印象が異常なまでに強いからです 20世紀バレエ団のモーリス・ベジャールの振付による「ボレロ」を踊るジョルジュ・ドンは、肉体そのものが芸術のように思われるほど 躍動感に溢れています 私は多分、テレビか何かであの有名な「ボレロ」のシーンを何度か観て「愛と哀しみのボレロ」全体を観たと勘違いしていたのだと思います

ヌレエフに扮するジョルジュ・ドンは「ボレロ」を冒頭と最後に踊るほか、パリ・オペラ座公演のシーンでベートーヴェンの「交響曲第7番」の第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」を息もつかせぬスピードで見事に踊り切ります 本物のヌレエフはこの公演を機に西側に亡命しています

この映画では、いくつかクラシック音楽が流れます ナチの軍楽隊長カールはヒトラーの前でベートーヴェンの「月光ソナタ」を弾いて認められます。その後、指揮者に転じた彼はニューヨークのメトロポリタン歌劇場で米初公演に臨みますが、チケットは売り切れているのに会場に集まったのはたったの2人という中でブラームスの「交響曲第1番」を指揮します ユダヤ系アメリカ人がチケットを買い占めていたのです。その後、フランスの凱旋門の屋上で、リストの「前奏曲」を指揮します

クラシック音楽好きにはたまらない1本です  新文芸坐では今日(15日)が最後です。11:30から、15:05から、18:40から の3回上映されます。興味のある方は是非お出かけください

 

          

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クァルテット・エクセルシオ+柳瀬省太でモーツアルト「弦楽五重奏曲第3番K.515」他を聴く

2016年03月14日 07時56分28秒 | 日記

14日(月)。また風邪を引いたのかもしれない 喉が少し痛いし咳も出かかる。熱もいつもより若干高い。クリニックに行ってこよう ということでわが家に来てから533日目を迎え、風邪知らずのモコタロです

 

          

             その黒い物体は何かって? フン 知るものか!

 

  閑話休題  

 

昨日、晴海の第一生命ホールでクァルテット・エクセルシオの「アラウンド・モーツアルト Vol.1 未来への輝き」を聴きました プログラムは①サンマルティーニ「弦楽のためのシンフォニア ト長調」、②モーツアルト「弦楽四重奏曲第6番変ロ長調K159」、③サリエリ「4楽器によるフーガ風スケルツォ」より第2番、第4番、④モーツアルト「弦楽四重奏曲第14番ト長調K387”春”」、⑤同「弦楽五重奏曲第3番ハ長調K.515」です 出演は、約1年間の療養休業明けの西野ゆか(第1ヴァイオリン)、山田百子(第2ヴァイオリン)、吉田有紀子(ヴィオラ)、大友肇(チェロ)、そしてゲスト演奏者の柳瀬省太(⑤の第一ヴィオラ。読響首席)です

「アラウンド・モーツアルト」の趣旨は、「モーツアルトとその周辺」とでも言うべき 彼の同時代の作曲家の曲も併せて紹介することによりモーツアルトの音楽を浮かび上がらせようという試みです

 

          

 

自席は1階5列13番、センターブロック左通路側です。会場は8割方入っているでしょうか 弦楽四重奏団でこれだけの動員をかけられるのは常設クァルテットであるエクセルシオだけでしょう 4人の登場です。女性陣はデザインは異なるものの淡いピンクの衣装で統一しています 西野ゆかは本当に久しぶりです。「おかえりなさい ゆかさん」という気持ちを込めた大きな拍手が起こりました

1曲目は、サンマルティーニの「弦楽のためのシンフォニア ト長調」です サンマルティーニは1770年に14歳のモーツアルトが父レオポルドとともにミラノを訪れたときに、神童の演奏に接し温かく支援したことで知られています 言ってみればモーツアルトのイタリアにおける目標だったかも知れません。この曲は4つの楽章から成りますが、第1楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」冒頭の演奏を聴いた時、何と柔らかい音だろうか と思いました。4人の一人一人が柔らかい音なのです。これがエクの魅力かも知れません。ソフトで優雅です 曲はいかにもイタリアの青空を感じさせるような明るい曲です

2曲目はモーツアルト「弦楽四重奏曲第6番変ロ長調K159」です。3つの楽章から成りますが、小曲ながら優雅でモーツアルトらしい歌心に溢れた曲です

3曲目はサリエリの「4楽器によるフーガ風スケルツォ」から第2曲と第4曲です。サリエリは モーツアルトの暗殺を描いた「アマデウス」で有名になったイタリアの宮廷作曲家ですが、今ではモーツアルトを暗殺したのはサリエリではなく、妻コンスタンツェとその母親であることが分かっています(女は怖いですね)。この曲はとても面白い曲ですが、モーツアルトはこういう風には作らないだろうな、と思うような音楽です

次いで、プログラム前半最後の曲、モーツアルト「弦楽四重奏曲第14番ト長調K387」です。この曲から第19番”不協和音”までの6曲は 尊敬する大先輩ハイドンに捧げた いわゆる”ハイドン・セット”と言われる作品群です 第1楽章冒頭から明るく清々しい音楽が展開します その瞬間、ああ生きてて良かったと思います。生きてモーツアルトを聴ける喜び 第3楽章「アンダンテ・カンタービレ」における西野ゆかのヴァイオリン独奏は歌心溢れる素晴らしい演奏でした 

すごく良い気持ちで聴いていると、右側後方からイビキが聞こえてきます。イビキの音質から高齢男性であることが想像できます 隣の人は注意しないのだろうか?と不思議に思いました。演奏がフォルテの時はよいのですが、ピアノの時は、確実にイビキが演奏者にも聞こえています これは演奏者に対しても、同じ聴衆に対しても極めて失礼な行為です。隣か後ろの人は本人の足を蹴るなり、肩をゆするなり、首を絞めるなり(よい子はやめてね!)して、イビキを止めさせなければなりません

私には、前から6列目のほぼ 真ん中の席を指定する人が演奏中にイビキをかくということが理解できません 高校生が 苦手な物理の時間に一番後ろの席で机につっぷしてイビキをかいて寝ているのとは訳が違うのです コンサートホールはどんなに小さな音でも大きく響く音響特性を持っていることは室内楽を聴きにくる人は特に十分理解しているのだと思うのですが、いい年した大のオトナが本当に恥ずかしいと思います。さすがに、楽章の間に隣の人が注意したのでしょう、イビキはやっと止みました 誰かが鼻に濡れタオルをかぶせたのでしょうか 当のご本人は さぞ日常生活がご多忙で 週末にはお疲れになりがちな紳士でいらっしゃるのでしょう。周囲の聴衆に成り代わってひと言申し上げます。顔を洗って出直して来い

 

          

 

休憩後はモーツアルト「弦楽五重奏曲第3番ハ長調K515」です。演奏を前にして、第2ヴァイオリンの山田百子とゲストのヴィオラ奏者・柳瀬省太がステージに登場しました。山田さんが柳瀬氏にインタビューする形で話が進められましたが、柳瀬氏とエクセルシオとは同世代で、エクのチェリスト・大友肇氏と柳瀬省太氏は小学5年以来の友人とのことで、昔から「しょうちゃん」「はっちゃん」と呼び合う間柄だそうです。ちっとも知りませんでした また、柳瀬氏は、小5の時にテレビでモーツアルトの生涯をドラマ化した番組(12時間位の長時間)を観て すっかりモーツアルト・ファンになったそうです 実は、私もその番組を観ました。今から35年くらい前の11月3日でした。なぜ覚えているかと言うと、文化の日で休日だったから、そしてある女性と初デートの日だったからです したがって、朝に幼少のモーツアルトのドラマを観て、デートから帰ってきて死ぬ間際のモーツアルトのドラマを観たことになります 途中が抜けてしまったので、後でレーザー・ディスクの何枚組かのセットを買って見直しましたが、1度観ただけで、ディスク・プレーヤーが壊れてしまったのでディスクは売り払いました

柳瀬氏が加わったことにより、5人は左から西野、山田、大友、吉田、柳瀬という態勢をとります。演奏に入ろうとしたとき、山田さんが西野さんや大友氏に何やら話しかけています。どういう内容なのかこちらには聞こえません。そのうち何事もなかったように第1楽章の演奏に入りました

この曲は4つの楽章から成りますが、第1楽章「アレグロ」の冒頭部分、和音の刻みが独特ですね そして、第2楽章以降に移っていくのですが、何か変です 第3楽章まで聴いてきて、やっぱりおかしいと思いました。あっという間に第4楽章に来ています 一瞬、「第2楽章を飛ばして演奏したのでは、でも まさかそんなことはあるまいな」と思いながら最後のフィナーレを迎えました

これは演奏後、ホール入口に掲示されたお知らせを見て、「何か変だ」という理由が分かりました。それによると、「演奏者の都合によりモーツアルト『弦楽五重奏曲第3番』は第1楽章、第3楽章、第2楽章、第4楽章の順に演奏しました」とありました これで、演奏前に山田さんが西野さんや大友氏に話しかけた理由が分かりました。山田さんは「演奏する前に演奏順を一部変えることをアナウンスすべきではないか」と問いかけたのです。たぶん、他の2人は「その必要はない」と答えたのでしょう エクのコンサートに来る人たちはモーツアルトの弦楽四重奏曲や弦楽五重奏曲などについては良く知っている人たちばかりだから、演奏を聴けば順番を変えたんだなと分かるはずだ、と考えたのかもしれません。しかし、これはどうなんでしょう。演奏する楽章の順番を変えるには相当の理由があるはず 通常であれば、このような行為は作曲者の意図に反するわけですから許されないと思います。それをあえて順番を変えて演奏するのですから、演奏者の明確な意図があるはず。事前に説明すべきだったと思います。あるいはプログラムに「お知らせ」を1枚挟み込んでおくべきだったと思います

そうは言うものの、やっぱりエクせエルシオのモーツアルトは素晴らしい この演奏では特に、3番目に演奏された第2楽章「アンダンテ」における西野ゆかとヴィオラの柳瀬省太とのダブルコンチェルト的な掛け合いが実に素晴らしかったと思います

エクはベートーヴェンも素晴らしい 今度、6月にサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデンで演奏するベートーヴェン「弦楽四重奏曲全曲演奏会」がとても楽しみです。もちろん全部聴きます

 

               

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オリヴァー・サックス著「音楽嗜好症~脳神経科医と音楽に憑かれた人々」を読む

2016年03月13日 08時21分18秒 | 日記

13日(日)。昨日は、前夜のハシゴ酒が影響して 朝から不調のどん底でした とはいうものの午前10時からマンション管理組合の理事会があり、理事長なので出席しないわけにもいかず、朦朧とした頭を抱えて出席しました 今回の理事会は、①管理員の土曜出勤の中止の件、②管理費長期滞納者に対する訴訟に関する件、③共用スペースの照明のLED化の件、④定時会員総会議事の件・・・・と盛りだくさんのうえ、「天井で水の落ちる音がするので調べてほしい」という住人が飛び入りで参加して事情を説明、それについても意見交換したので、いつもは1時間以内に終わる会議が倍以上かかってしまいました。もう、ヘロヘロです

午後は、土曜日のルーティーン・ワークである①1週間分のワイシャツにアイロンをかける、②部屋と廊下に掃除機をかける、③風呂の掃除をして水を入れ替えるーーを済ませてから、ベッドに寝転がってリストの「巡礼の年」、ワーグナーの「ラインの黄金」、メンデルスゾーン「弦楽四重奏曲集」、モーツアルト「ヴァイオリン協奏曲第5番」などを聴きながら新聞2紙と本を読みました 身体が疲れて背中が痛いので、普段は”至福の時間”なのですが そういう気分になれませんでした  もうヘロヘロです

ということで、わが家に来てから532日目を迎え、お菓子の箱の中身を確かめるモコタロです

 

          

           ぼくにも食べられるのかなぁ? 食べられないとヘロヘロになりそう 

          

  閑話休題  

 

当ブログの読者Nさんから戴いた「ブロワ珈琲焙煎所」の第3弾「コロンビア」を冷凍庫から出して封を切りました 今回は娘と一緒に飲みましたが、「すごく美味しい」ということで意見が一致しました

 

          

          

 

  も一度、閑話休題  

 

もうヘロヘロとはいうものの そうとばかりも言っていられないので、オリヴァー・サックス著「音楽嗜好症~脳神経科医と音楽に憑かれた人々」(早川文庫。542ページ)を読みました オリヴァー・サックスは1933年ロンドン生まれ。オックスフォード大学を卒業後、渡米し、脳神経科医として診療を行うかたわら、作家活動を展開し数多くの医学エッセイを発表しています 映画「レナードの朝」の原作者と言えば分かり易いでしょうか

 

          

 

原題の「Musicophilia:Tale of Music and the Brain」の邦訳として「音楽嗜好症」と名付けている訳ですが、「-philia」は「〇〇びいき」や「〇〇マニア」という、何かに対する偏愛を意味する接尾語として使われ、医学用語では、例えば小児性愛のような病的な嗜好を表現することもあるそうです  これに”music”を組み合わせた言葉は、単に音楽が好きというよりも、日常生活に支障をきたすほど音楽にのめり込むことを意味すると考えられるとのことです さしあたってオレのことか

何しろ540ページを超える大作なので、この本に書かれていることをくまなくご紹介することは不可能です いくつか印象に残ったところをピックアップしてご紹介したいと思います

まず第1章「青天の霹靂ー突発性音楽嗜好症」では、雷に打たれ 蘇生したと思ったら突然 音楽を渇望するようになった整形外科医のエピソードが紹介されています 雷に打たれ、文字通りぶっ飛んだチコリア(当時42歳)は、いわゆる”臨死体験”をします。その後、回復すると、突然ピアノ音楽に対する渇望が始まってレコードを買い集めるようになります その後、頭の中で作った音楽をピアノで弾いている自分に気が付きます 彼はこの現象について「周波数か、無線帯域みたいな感じです。私が心の扉を開けば、それがやってくるんです。モーツアルトが言っているように『天から降りてくる』という感じですね」と述べています

これが本当だとすれば、いつの世も天才は存在するということです モーツアルトは父親あての手紙の中で「頭に浮かんだ音楽を、ただ譜面に書き取るだけです」というようなことを書いています。あるいは モーツアルトは幼少の頃、ザルツブルクで雷に打たれたのだろうか? と想像してしまいます

一方、第4章「脳の中の音楽ー心象と想像」では、次のように書いています

「一般にプロの演奏家は、音楽をイメージする優れた能力とされるものをもっている 実際、最初だけにせよ終わりまでにせよ、楽器を使わずに頭の中で作曲する作曲家は多い。その最たる例がベートーヴェンだ。彼はまったく耳が聞こえなくなってから何年間も作曲を続けた(そして、その作品はどんどん高いレベルに上がっていった)。彼の音楽をイメージする力は、耳が聞こえないことでかえって強められた可能性がある。というのも、通常の聴覚入力がなくなると、聴覚皮質が異常に敏感になり、頭に浮かぶ音楽(時に幻聴)が強まる可能性がある 作曲家、とくにベートーヴェンのように非常に込み入った構成の音楽を作る作曲家は、高度に抽象的な音楽思考力も駆使しなければならない。そして、そのような知力を要する複雑さこそが、ベートーヴェンの後期の作品を特徴づけているかもしれない

これを読むと、モーツアルトのような”天才”ではなく、逆境に乗り越えていく”努力の人・不屈の人”ベートーヴェンを思い浮かべます

第11章「生きたステレオ装置ーなぜ耳は二つあるのか」には興味深いことが書かれています 

聴神経腫を切除したノルウェーの医師ヨルゲンセンは、右耳の聴力を失ってから、コンサートでマーラーの「交響曲第7番」を聴いた時「音楽の特性ー音高や音色ーの知覚は変わらなかったのに、音楽の感情表現を受け取ることができなくなった。妙に平板で、二次元しかない感じだった」と語っています

これについてサックスは、次のような解説を加えています

「視覚にしても聴覚にしても、二つの別々の目や耳によって伝えられるものの差異ー目の場合は空間の差異、耳の場合は時間の差異ーから、奥行きと距離(そして丸み、ゆったり感、ボリューム感などの特性)を推測する、脳の能力に依存している ここでいう差異はとても小さく、視覚の場合の空間的差異は2、3秒角(1秒角は3,600分の1度)、聴覚の場合の時間的差異は2、3マイクロ秒(1マイクロ秒は100万分の1秒)だ。この能力によって、フクロウのような夜行性の捕食者をはじめとする動物は、周囲の環境をまさに音で把握することができる 私たち人間はこのレベルには届かないが、それでも、自分の位置を確認し、周囲に何があるかという判断やイメージづくりをするのに、視覚的な手掛かりと同じくらい両耳の知覚の差異を利用する。立体音響効果があるからこそ、コンサートに行く人は、できるだけ豊かに、繊細に、立体的に聴くことが出来るように設計されたコンサートホールで、オーケストラや合唱団の複雑で豊かな楽音と壮麗な音響を楽しむことができるのだ・・・・人はステレオの世界を当たり前と思う傾向があり、ヨルゲン医師のような災難に見舞われて初めて、耳が二つあるという当たり前に思えることが、じつはとても重要なことなのだと、突然はっきりと痛感する

この文章を読むまで、耳が二つあることが音楽を聴くうえでどれだけ重要なことであるかに気が付きませんでした

このほか、ナポリ民謡を聴くと発作を起こす女性の話など、必ずしも音楽が人間に対して良い影響を与えるとは限らない事例なども紹介されています サックスは脳神経医だけに数多くの事例をもとに人間と音楽の関係について述べています 専門的な用語が出てきますが、各章の終わりに「注」の形でフォローしているので、そこまで読まないという人は「注」を飛ばしてどんどん読み進めることをお勧めします。音楽好きにはたまらなく面白い本です。お薦めします

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ひのまどか著「モーツアルト~作曲家の物語」を読む~平易な文章で解説

2016年03月12日 09時23分19秒 | 日記

12日(土)。昨年10月末まで勤務していたNPCのU顧問から先日メールが届き、「たまには会社に顔を出したらどうだい」という出頭命令が書かれていたので、昨日 NPCビル8階の管理事務所を訪ねました。事務所内のレイアウトがすっかり変わっていて驚きました 相次ぐ定年退職者を見据えた人事異動に伴ってレイアウト変更したようです。U顧問、飲み仲間だった元総務部長X氏と話をし、K君からは春に相応しい嬉しい報告を聞くことができました また、7階のパントリーにも顔を出して、読み終わって溜まった本を置いてきました。これは現役時代からの習わしです そのあと防災センターを訪ねS隊長、I 副隊長、K隊員に挨拶をしました。みな相変わらず元気そうで良かったです 5時半以降、地下1階のK(元・焼き鳥R)でX氏、T君、K君と4人で飲んで、同じ階の焼鳥Oに移って飲み、K君と別れて3人で西新橋のSに行ってまた飲みました。そんな訳で今日は久しぶりに朝から頭が頭痛です(ダブってね?) 

ということで、わが家に来てから531日目を迎え、CDラックを邪険にするモコタロです

 

          

            後ろのCDラックと同じのが4本並んでて邪魔なんだよ 散歩に

         

  閑話休題  

 

昨日は、夕食に「鶏ひき肉とキャベツの卵とじ」と「生野菜サラダ」を作りました はっきり言って、これも作り過ぎです

 

          

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

ひのまどか著「モーツアルト~作曲家の物語」(新潮文庫)を読み終わりました ひのまどかは1942年東京生まれ、東京藝大器楽科(ヴァイオリン専攻)卒。東京ゾリステンなどでヴァイオリニストとして活躍し、その後 作曲家の伝記や小説、音楽解説等の執筆活動を展開しています

 

          

 

この本の中身を読むまでは、てっきりモーツアルトの解説本かと思っていました しかし、実際に読んでみるとモーツアルトの波乱の生涯を描いた「伝記小説」であることが分かります

モーツアルトは35年の生涯のうち3分の1を演奏旅行で過ごしましたが、教育パパであるレオポルトとヨーロッパ諸国を巡った旅、母親とのパリへの旅、それらを中心に”物語”仕立てによって、モーツアルトが作曲した作品を散りばめながら、その生涯を描いています また、生まれ故郷のザルツブルクのコロレド大司教との確執や、最晩年の借金生活の様子も描かれています

作品の紹介では、オペラの話を中心に進めていきます 当時はドイツではなくイタリアが音楽の中心であり、イタリアでオペラが認められなければ成功しないことなどが綴られています

最後に「そして、いま」という章が設けられていますが、そこでモーツアルトに対する妻コンスタンツェの態度について触れています

「・・・モーツアルトが愛し、大切にした女性のこの許しがたい言動については、彼女の生前からきびしく非難されていたが、本人はそれに臆することなく、死後急激に高まった夫の名声と、それに伴って入る財産を享受しつつ79歳の長寿をまっとうして、ザルツブルクに没した。その16年前に亡くなった2度目の夫ニッセンに対しては、彼女は墓の上にりっぱな記念碑まで建てている。これらのことが問わず語りに教えてくれる真実。それは、『コンスタンツェは夫を愛していなかった』という一事である。モーツアルトが妻にあてた愛情あふれる手紙はたくさん残されているが、その反対のものは一通もない」

モーツアルトについて知っているつもりで知らなかったことも書かれていて、面白く読みました 平易な文章で書かれており、モーツアルティアンはもちろんのこと、広くクラシックファンにお薦めします 今後は「ベートーヴェン」の刊行が予定されているとのことですが、楽しみに待ちたいと思います

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