人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

東京春祭チェンバー・オーケストラ演奏会を聴く~ヴィヴァルディ「調和の霊感」,グリーグ「ホルベアの時代より」,モーツアルト「交響曲第29番」

2017年03月21日 08時08分13秒 | 日記

21日(火).わが家に来てから今日で903日目を迎え,東京都の専門家会議が,豊洲市場施設内の地下水から環境基準の最大100倍のベンゼンなどの有害物質が検出されたことを公表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

                   築地市場にも 豊洲市場にも 安全性に問題があるみたい 心が千々乱れる小池知事 てか

 

  閑話休題  

 

昨日,上野の東京文化会館小ホールで「東京春祭チェンバー・オーケストラ ~ トップ奏者と煌めく才能が贈る極上のアンサンブル」公演を聴きました プログラムは①ヴィヴァルディ「合奏協奏曲集『調和の霊感』」より「第5番イ長調」,②同「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲変ロ長調」,③同「合奏協奏曲集『調和の霊感』」より「第8番イ短調」,④同「同 第10番ロ短調」,⑤グリーグ:組曲「ホルベアの時代より」,⑥モーツアルト「交響曲第29番イ長調K.201」です

 

       

 

自席はD28番,右ブロック左通路側です.会場は8~9割方埋まっているでしょうか

弦楽合奏のメンバーが登場し配置に着きます コンマスは元N響コンマスの堀正文.隣には東京藝大大学院在籍中の小川響子がスタンバイします.ヴィオラ首席にはN響首席の佐々木亮が,コントラバスは都響首席の池松宏がスタンバイし,それぞれオケの要を担います 全体は弦楽12人+チェンバロ1台という編成ですが,女性奏者はピンク系,ブルー系,グリーン系と彩りが鮮やかな衣装でステージが華やいでいます

プログラム前半はヴィヴァルディ特集です ヴィヴァルディは「急ー緩ー急」の3楽章形式による「協奏曲」のスタイルを確立した点で音楽史では重要な人物です

最初に「合奏協奏曲集『調和の霊感』」より「第5番イ長調」(2つのヴァイオリンのための協奏曲)が,桐朋学園大学2年在学中の北田千鶴と東京藝大大学院在学中の三輪莉子をソリストとして演奏されました 二人の掛け合いが気持ちよく聴けました.ヴィヴァルディは流麗です

次に東京藝大を首席で卒業したヴァイオリンの城戸かれんとチェロの辻本玲を独奏者に迎えて 「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲変ロ長調」が演奏されました 辻本玲は日本フィルのソロ・チェロ奏者だけあって存在感抜群の深みのある演奏を展開しました ヴィヴァルディは あの大バッハにも影響を与えたと言われていますが,よく分かります

次に,先日 芸劇ブランチコンサートで聴いた大江馨と,東京藝大モーニングコンサートで聴いた小林壱成をソリストに迎え,「合奏協奏曲集『調和の霊感』」より「第8番イ短調」(2つのヴァイオリンのための協奏曲)を演奏しました  二人の掛け合いが楽しく聴けました

プログラム前半の最後は,ヴァイオリンの小川響子,三輪莉子,北田千鶴,城戸かれんをソリストに迎え,「合奏協奏曲集『調和の霊感』」から 「第10番ロ短調」(4つのヴァイオリンのための協奏曲)を演奏しました この曲は短調の魅力がたっぷりの曲で,その昔,テープに録音して初代ウォークマンで良く聴いていました ヴィヴァルディは耳に心地よく響きます

何とここで前半終了にあたってアンコールがあり,いま演奏したばかりの4人だけでテレマンの「4つのヴァイオリンのための協奏曲ニ長調」から第1楽章が演奏されました メロディーがカノンのように4本のヴァイオリンを左から右へ,そして右から左へと移り変わっていく曲で,流れるような楽しい曲でした

ソリストとして登板しなかったヴァイオリンの枝並千花,外園萌香をはじめとする弦楽奏者の皆さんの演奏も素晴らしかったです

 

       

 

プログラム後半の最初はグリーグの組曲「ホルベアの時代より」です ホルベアというのは「デンマーク文学の父」と呼ばれた人のことです グリーグは彼の生誕200年記念祭のために,最初にピアノ版を作曲し,次いで弦楽合奏用に編曲しました この曲は①前奏曲,②サラバンド,③ガボット,④アリア,⑤リゴドンの5曲から成ります.堀氏をはじめ15人の弦楽合奏で演奏されました.この曲では,弦楽合奏はもちろんのこと,時にソロを務めたチェロの辻本玲の演奏と,コントラバスの池松宏の何気ないながらも心に響くピッチカートが印象的でした

最後の曲はモーツアルトの「交響曲第29番イ長調K.201」です この曲はモーツアルトが3回目のウィーンへの旅からザルツブルクに帰った翌年の1774年(18歳の時)に作曲されました 弦楽奏者たちは堀氏をはじめとして指揮者なしでも乱れることなく演奏します この曲で初めて登場したオーボエの蠣崎耕三と森枝繭子,ホルンの安倍麿と大槻香奈絵の演奏も素晴らしく,弦楽と見事なアンサンブルを奏でていました 全体としてこの曲の特徴である軽快で優雅な雰囲気が良く出ていました

アンコールにモーツアルトの「ディヴェルティメントK.334」から有名な「メヌエット」が優雅に演奏され,コンサートを締めくくりました 華やかで楽しいコンサートでした

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「 Voice’n Violin ~ アンドレアス・シャーガー & リディア・バイチ 」公演を聴く~拍手とブラボー鳴りやまず!

2017年03月20日 11時10分46秒 | 日記

20日(月・祝)その2.よい子は「その1」から読んでね.モコタロはそっちに出演しています

昨日午後7時から東京文化会館小ホールで「Voice’n Violin」コンサートを聴きました.これは「東京・春・音楽祭」参加公演です プログラムは①モーツアルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲(オケ),②同「魔笛」より「なんと美しい絵姿」(シャーガー),③同「ロンド  ハ長調K.373」(バイチ),④ワーグナー/モットル,フレッツベルガー編「ヴェーゼンドンク歌曲集」(シャーガ-),⑤サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」(バイチ),⑥レズ二チェク:歌劇「ドンナ・ディアナ」序曲(オケ),⑦J.シュトラウス2世:喜歌劇「ジプシー男爵」より「小さいときに孤児になり」(シャーガー),⑧リスト/バイチ,フレッツベルガ-編「愛の夢第3番変イ長調」(シャーガー&バイチ),⑨同「ハンガリー狂詩曲」(バイチ),⑩レハール:喜歌劇「ジュディッタ」より「友よ,人生は生きる価値がある」(シャーガー),⑪クライスラー/フレッツベルガー編「ウィーン奇想曲」~「愛の悲しみ」(バイチ),⑫J.シュトラウス2世/フレッツベルガー編「シュトラウス一家の作品によるメドレー」(シャーガー&バイチ)です

出演は,昨年の東京・春・音楽祭のワーグナー「ジークフリート」でタイトルロールを歌い,圧倒的な存在感を見せつけたオーストリア生まれのテノール,アンドレアス・シャーガー,ロシアのサンクトペテルブルク生まれで世界的に活躍するヴァイオリ二ストのリディア・バイチ,管弦楽はトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア,指揮はウィーン生まれのマティアス・フレッツベルガーです

 

       

 

自席はD列19番,左ブロック3列目の右通路側です.開演時間2分過ぎ,会場はすでに埋まっているのに,通路を挟んだすぐ右のセンターブロックの最前列の席が空いています.いや~な予感がしました 予感は当たるものです.やってきました,背中に大きな荷物を背負ったサスペンダー爺さん いつものように草履を履いての登場です.「また あんたかよ」という感じです.しかもすぐ近くの席だし そうでなくても目立つのに ほとんど目の前なので絶望的な景色です

さて,トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアの面々が登場し,配置に着きます.コンマスは東響コンマスの水谷晃,他にもどこかで見た顔がちらほら見受けられます それもそのはず,このオケは国内外のオーケストラやソロで活躍する日本人の若手演奏家の集団で,「トウキョウ・モーツアルト・プレイヤーズ」がその前身です 20人ほどのメンバーがステージ所狭しと並びます.指揮者マティアス・フレッツベルガーが登場し 早速1曲目のモーツアルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲の演奏に入ります.コンマス水谷の大きな動きに合わせて軽快な音楽が進行します

ここで,お待ちかね,昨年のハルサイ・リング「ジークフリート」でお馴染みのアンドレアス・シャーガーの登場です 多くの聴衆が昨年の「ジークフリート」を聴いた経験者らしく,熱狂的な拍手が送られました シャーガーは満面の笑みです まず手始めにモーツアルトの歌劇「魔笛」よりタミーノのアリア「なんと美しい絵姿」を歌いましたが,しょっぱなから度肝を抜かれました 前から3列目という好条件を抜きにしても,あまりの迫力です あの声だったら 3人の侍女の力を借りなくても 声の迫力で大蛇を倒すことができるだろうと思うほどです

次いで,ピンクの花模様のドレスを身にまとったリディア・バイチが登場しモーツアルトの「ロンド  ハ長調K.373」を演奏しました ヴァイオリンの音色が美しいと思ったら,オーストリア国立銀行から貸与されている1732年製のグァルネリ「エクス・ギレ」とのことでした.この人には華があります

次に再度シャーガーが登場,ワーグナー作曲モットルとフレッツベルガー編曲による「ヴェーゼンドンク歌曲集」を歌いました この曲は1857年当時,ワーグナーのパトロンだったベーゼンドンク夫人のマティルデから贈られた詩に曲を付けたものです 第1曲「天使」,第2曲「とまれ」,第3曲「温室にて」,第4曲「悩み」,第5曲「夢」の5つの歌から成ります.私は,この歌は女性が歌うものとばかり思っていましたが,そうではないのですね シャーガーは曲に応じて表情を変えながら 張りのある歌声で5曲を歌い上げました 最後の「夢」では,いつの間にか登場したバイチも演奏に加わり,シャーガーの歌に華を添えていました 会場はやんややんやの喝采です

プログラム前半の最後は,サン=サーンスが1863年に作曲した「序奏とロンド・カプリチオーソ」です バイチにより超絶技巧で演奏され,大きな拍手を受けました

 

       

 

プログラム後半の幕開けはウィーン出身の指揮者・作曲家レズ二チェクが作曲した歌劇「ドンナ・ディアナ」から序曲です 初めて聴きましたが,フルートをはじめ管楽器が大活躍するテンポの速い曲で,実に楽しい曲でした 同じウィーン出身の指揮者で編曲もするフレッツベルガーの強い意志で選ばれた曲でしょう 曲が終わると「どうですか,この曲,いいでしょう」といったドヤ顔が見られました

ここで再び大きな拍手に迎えられシャーガーが登場,J.シュトラウス2世が1885年に初演した喜歌劇「ジプシー男爵」より「小さいときに孤児になり」を迫力のある歌声で陽気に歌い上げました またしても度肝を抜かれました

次いで,シャーガーとバイチが揃って登場し,リスト作曲バイチとフレッツベルガ-編曲による「愛の夢第3番変イ長調」を 歌とヴァイオリンで演奏しロマンティックな世界を表出しました

次にバイチが再登場し,リストの「ハンガリー狂詩曲第2番嬰ハ短調」を超絶技巧で鮮やかに演奏しました

次いで,シャーガーが三度登場,レハールの喜歌劇「ジュディッタ」より「友よ,人生は生きる価値がある」を,またしてもド迫力で歌い上げ 会場を興奮の坩堝と化しました

次に三度バイチが登場,クライスラー/フレッツベルガー編「ウィーン奇想曲」と「愛の悲しみ」をニュアンス豊かに演奏しました

プログラムの最後は,まずバイチが登場し,J.シュトラウス2世/フレッツベルガー編「シュトラウス一家の作品によるメドレー」を演奏,途中からシャーガーが加わり,シュトラウスのオペレッタのアリアを歌い華を添えました

これで用意されたプログラムは終了ですが,指揮者のフレッツベルガーがニコニコ顔で聴衆に「サムシング・ワン・モア?」とアンコールを暗示します.もちろん聴衆は大拍手です すると「サムシング・ワーグナー?」と訊くので聴衆は熱狂的な拍手を送ります

会場割れんばかりの拍手の中シャーガーが登場,ワーグナー「ワルキューレ」から「冬の嵐は過ぎ去り」をヘルデンテノールで歌い上げ 会場を圧倒しました

次いでバイチが登場,ヴァイオリン曲のアンコール・ピースとしてお馴染みのモンティ「チャルダーシュ」を鮮やかに演奏し,大きな拍手を受けました

ここで誰も帰らないので,フレッツベルガーが「ワンモア?」と2曲目のアンコールを暗示するので,聴衆はさらに大きな拍手で応えると,フレッツベルガーは「ワン!」と最後の1曲であることを強調し,シャーガーとバイチを迎えました レハールの「メリーウィドウ」から「閉ざされた唇に」をバイチとオケの伴奏でシャーガーが歌い,熱狂的な拍手とブラボーが飛び交う中,コンサートを締めくくりました

このコンサートはS席8,700円,A席7,200円と 小ホールでの公演としては決して安くない料金でしたが,このコンサートを聴いた聴衆のほとんどは,それ以上の価値を見出していたと確信します  特に「最強のヘルデンテノール」アンドレアス・シャーガーの歌が聴けたことは最高の喜びです まだ3月ですが,今のところ今年のマイベストです

 

                         

 

さて,ここで気持ちよく終わりたかったのですが,どうしても書かなくてはならないことがあります.サスペンダー爺さんのことです

公演が終わって,聴衆が帰ろうとしているとき,最前列の中央席のサスペンダー爺さんが荷物を背負って立ちあがり隣のおばあさんと話を始めたので,客席前方の通路が塞がって人々が通りにくくなってしまったのです 皆「じゃまなんだよ この爺さん」という顔で爺さんを避けて通って行きます.それを見かねた係りの女性が飛んできて爺さんに注意をしていました 本人には背中に背負った荷物が見えませんから,他の人に迷惑をかけているとは夢にも思っていないのでしょうね 自己中を絵に描いたような爺さんです.この爺さん,草履を履いて 大きな荷物を背負って あちこちのコンサート会場に開演直前に登場して最前列に座るパフォーマンスで有名ですが,その有名は  famous  ではなく notorius の方だということを本人だけが理解していないようです   自己顕示欲と承認欲求の固まりの爺さんには多くの音楽愛好家が怒るとともに困り果てています

あ~やだやだ,毎回こんなことを書かなければならないなんて

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大友直人+萩原麻未+群馬交響楽団でチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」,ラフマニノフ「交響曲第2番」他を聴く

2017年03月20日 09時12分18秒 | 日記

20日(月)その1.わが家に来てから今日で902日目を迎え,ドイツで開かれていたG7財務相・中央銀行総裁会議が共同声明を採択して閉幕したが,最大の焦点だった貿易分野で,これまでの声明にあった「保護主義に対抗する」という文言が入らなかった,というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

         結局はアメリカの言いなりだな ほかの国もすべて保護主義に徹したらどうなるの?

 

  閑話休題  

 

昨日午後3時から すみだトリフォニーホールで「群馬交響楽団東京公演」を,7時から東京文化会館小ホールで「Voice 'n Violin~アンドレアス・シャーガー&リディア・バイチ」聴きました ここでは群馬交響楽団の公演について書きます

群馬交響楽団と言えば,1955年に,この楽団をモデルに製作された映画「ここに泉あり」で有名なオーケストラ.当ブログでもこの映画をご紹介しましたね

プログラムは①千住明:オペラ「滝の白糸」序曲,②チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」,③ラフマニノフ「交響曲第2番ホ短調」です ②のピアノ独奏は萩原麻未,指揮は群響音楽監督・大友直人です

 

       

 

自席は1階9列7番,左ブロック左から6つ目の席です 残念ながら通路側は押さえられませんでした.会場は9割方入っているでしょうか

オケのメンバーが入場し配置に着きます.このオケはオーソドックスな編成をとります.左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです 団員名簿によるとコンミスは伊藤文乃さんです

ライオン丸,もとい髪の毛がライオンのような形の大友直人が登場し指揮台に上がります.大友が楽員に向き合い,まさに演奏を始めようとした時,会場左ブロック前方で紙をカサカサする大きな音が響き渡りました 当然指揮者の耳にも入り,大友は上げた手を一旦下ろし,音が止むのを待ちました

いったいどういうつもりなんでしょうか これはハッキリ言って演奏妨害です 前日のケータイ着信音を演奏中に鳴らすバカ者といい,この日の紙でカサカサ音を出すバカ者といい,あまりにもバカが多すぎます 人に迷惑をかけているという自覚がないのでしょうね,バカだから

さて,気分を変えて話を本筋に戻しましょう 1曲目の千住明:オペラ「滝の白糸」序曲の演奏に入ります.このオペラは原作者・泉鏡花の故郷である金沢市とオーケストラ・アンサンブル金沢の委嘱により作曲され,2014年1月に初演されました 今回は改訂版による序曲が演奏されます

聴いた印象を一言で言えば「NHK大河ドラマ」のテーマ音楽に相応しいような日本的でスケール感のある曲でした 演奏後,会場にいた千住明氏がステージに呼ばれ,大きな拍手を受けました

2曲目は,私にとってはメインの,萩原麻未がソリストを務めるチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」です この曲はチャイコフスキーが34歳の,1874年11月から12月にかけて作曲されました.完成した曲の批評を親友で大ピアニストのニコライ・ルビンシテインに求めたところ「演奏不能」として酷評されたというエピソードは有名です チャイコフスキーは「1音たりとも変更しない」と宣言したそうですが,そうは言うものの,演奏されないのではお話しにならないので,細部に若干の手直しを入れたとのことです 意外なのは,この曲の初演がチャイコフスキーがアメリカへ演奏旅行に行った際,1875年10月13日にボストンでハンス・フォン・ビューローのピアノ独奏によって行われたことです 私はてっきりロシアで初演されたのだとばかり思っていました.今更ですが

さて,ソリストの萩原麻未は広島県出身で,2010年の第65回ジュネーヴ国際コンクール・ピアノ部門で日本人として初めて優勝し脚光を浴びました 広島音楽高等学校を卒業後,文化庁海外新進芸術家派遣員としてパリ国立音楽院に留学,修士課程を首席で修了し,同音楽院室内学科,パリ地方音楽院室内学科,モーツアルテウム音楽院を卒業しています.私が一押しの若手ピアニストです

グランド・ピアノがステージ中央に運ばれ,ソリストの登場を待ちます.萩原麻未が白の鮮やかなステージ衣装で登場,ピアノに対峙します 大友の合図で第1楽章序奏部の勇壮なテーマに入ります 自席から萩原麻未の演奏する運指が良く見えるのですが,思わず見入ってしまいます 彼女が速いパッセージを弾く時は聴いている私の身体が熱くなってきて胸がドキドキしてきます こういうピアニストは過去に1人しかいません.それはマルタ・アルゲリッチです 演奏を通じて人を自分の音楽に巻き込む力を持っているのです もう一つ 二人の共通点を挙げるとすれば,演奏に「天性のひらめき」があることです ただ単に弾くのが速いとかスケールが大きいとかいったことではなく,そこには詩情が漂っています.そんな彼女の演奏する第1楽章のカデンツァは萩原麻未の独壇場でした

そうした特徴は,第2楽章でも第3楽章でも変わりはありません 特に第2楽章「アンダンティーノ・センプリーチェ」では弱音による演奏が素晴らしく,音は小さくても芯があるので訴える力があります フィナーレは圧巻でした

萩原麻未はアンコールに,バッハの「無伴奏パルティータ」の「ガボット」(ラフマニノフ編曲版)を演奏し,会場いっぱいの拍手を受けました

 

       

 

プログラム後半は,ラフマニノフ「交響曲第2番ホ短調」です ラフマニノフ(1873-1943)は作曲家である前に大ピアニストとして有名でした 大きな手を生かしてヴィルトゥーゾ・ピアニストとして活躍していました したがって彼が作曲したピアノのための曲はすべて自分自身が演奏するための作品でした そんなラフマニノフが作曲した交響曲は3曲ありますが,この日演奏する第2番が一番演奏される機会の多い作品です

私がこの曲の良さを初めて知ったのは,数年前の5月,東京国際フォーラムのホールAで聴いたドミトリー・リス指揮ウラル・フィルによる演奏(ラ・フォル・ジュルネ音楽祭)です スケールの大きなダイナミックな演奏にすっかり魅了されてしまいました

この曲は4つの楽章から成ります.第1楽章では後の楽章で活躍する重要なテーマが顔を出します 第2楽章「アレグロ・モルト」は実質的にはスケルツォです.元気の良いホルンの演奏で開始されます 第3楽章「アダージョ」はこの交響曲の一番の聴きどころです ヴァイオリン・セクション,クラリネット,オーボエ,イングリッシュ・ホルンなどによって奏でられるロマンティックなメロディーが印象に残ります 特に弦楽合奏は見事でした.第4楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」はエネルギーに満ちた音楽が展開します 群響は弦楽セクションを中心にスケールの大きな音楽を展開しました

この後,上野の東京文化会館に向かいました.この続きは「その2」をご覧ください

 

       

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上岡敏之+河村幹子+新日本フィルでモーツアルト「ファゴット協奏曲」,シューマン「交響曲第2番」他を聴く / 新日フィル室内楽シリーズのチケットを買う

2017年03月19日 08時02分26秒 | 日記

19日(日).わが家に来てから今日で901日目を迎え,テレビ各局がしのぎを削る日曜夜の聴率競争で明暗がはっきり分かれている という記事を見て感想を述べるモコタロです

 

       

        その昔「面白くなければテレビじゃない」と宣言していた局は 今どうなってるの?

        お笑い番組ばかり作って垂れ流していた局も局だけど 観る方も観る方だと思うよ

 

  閑話休題   

 

新日本フィル室内楽シリーズ「ショスタコーヴィチとスターリン」のチケットを購入しました 5月9日(火)午後7時15分からトリフォニーホール(小ホール)で,プログラムは①ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲第3番ヘ長調」,②同「ピアノ五重奏曲ト短調」です 演奏はヴァイオリン=チェ・ムンス,ビルマン聡平,ヴィオラ=井上典子,チェロ=森澤泰,ピアノ=野田清隆です ピアノ五重奏曲は大好きです

 

       

       

 

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,すみだトリフォニーホールで新日本フィルの第570回トパーズ定期演奏会を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「交響曲第1番ハ長調」,②モーツアルト「ファゴット協奏曲変ロ長調K.191」,③シューマン「交響曲第2番ハ長調」です ②のファゴット独奏は首席の河村幹子,指揮は音楽監督の上岡敏之です

 

       

 

オケがスタンバイし,指揮者・上岡敏之が登場します 1曲目はベートーヴェンの「交響曲第1番ハ長調」です ベートーヴェンは1800年4月2日にブルク劇場で開いた自主演奏会でこの曲を初演しました.当時の演奏会はベートーヴェンに限らず,1つの演奏会の中で様々な曲を一緒くたに演奏するのが習わしでした この時は,自作の「ピアノ協奏曲第1番」と「七重奏曲」,モーツアルトの交響曲(どの曲かは不明),ハイドンの「オラトリオ『天地創造』」(アリアなど数曲抜粋)が演奏されました おそらく3時間以上かかったのではないかと思われます.初演演奏会でハイドンやモーツアルトの曲と並べて自曲を取り上げたのは,先輩音楽家への敬意とともにベートーヴェンの自信の表れでしょう

この曲は4つの楽章から成ります.第1楽章「アダージョ・モルトーアレグロ・コン・ブリオ」では,1月からオーボエ首席として正団員となった金子亜未の演奏が光りました 全楽章を通して,上岡は速めのテンポでサクサクと演奏を進めます.特に第4楽章「フィナーレ」はアダージョの導入部を終えてアレグロに移ってからは高速演奏で,いくら何でも速すぎだろう と思ってプログラムで確認すると「アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ」となっており,上岡は楽譜を忠実に守っていることが分かります 爽快な演奏でした

2曲目はモーツアルトの「ファゴット協奏曲変ロ長調K.191」です この曲はモーツアルトが18歳の時に作曲しました.モーツアルトはこのほかに3曲ファゴット協奏曲を作曲したと伝えられているそうですが,その点モーツアルトに聞いてみたら「I have forgotton」と言っていました 冗談はさておき,モーツアルトが作曲し現在残されている唯一のファゴットのための協奏曲(3楽章形式)です

新日本フィル首席ファゴット走者・河村幹子がイエローの鮮やかなステージ以上で登場,指揮者の脇にスタンバイします 上岡のタクトで第1楽章「アレグロ」が軽快に始まり,河村のソロが明るく入ってきます 第2楽章「アンダンテ・マ・アダージョ」では,ファゴット特有の音色がソフトに美しく響きます そして第3楽章「ロンド:テンポ・ディ・メヌエット」では,河村のファゴットは低音から高音まで音色の変化が素晴らしく,ファゴットの魅力を再認識することができました

ところで,第2楽章の緩徐楽章を気持ちよく聴いている時,1階左サイド中央席辺りから「リリリーン」というケータイの着信音が鳴りました まだ居るのですね.非常識を絵に描いたようなウッカリモノが どうして緩徐楽章に限って鳴らすんでしょうね,まるで狙ったように.こういう人はどこに行っても同じような迷惑をかけているんでしょうね.周囲の者が大迷惑です

 

       

 

プログラム後半はシューマンの「交響曲第2番ハ長調」です この曲は,1845~46年にかけて作曲されました.どうやら当時のシューマンの頭の中には,シューベルトのハ長調交響曲『グレイト』があったようで,この第2番もハ長調で作曲しています この曲は4つの楽章から成ります

第1楽章は金管のファンファーレで開始されますが,この主題は第2楽章,第4楽章でも回帰されます 上岡の指示するテンポは相当速いです.第2楽章に入ってからもそのスピードは変わりません.まるで最終楽章のフィナーレの如くなだれ込むので,隣席のお年寄りは拍手しそうになり,思い止まりました

ところが,第3楽章「アダージョ・エスプレシーヴォ」に入り,金子亜未によるゆったりとしたメランコリックなオーボエを聴き,そして弦楽器による渾身の演奏を聴いたら,なぜ第1楽章と第2楽章を超高速で演奏したかが分かったような気がしました それはこのアダージョを生かすためだったのではないか,ということです シューマンはこの緩徐楽章に特別の想いを込めたのではないか,と想像します 第4楽章では一転,突き抜けるような明るい世界が開けます.上岡は再び,高速演奏を展開し,喜び全開のクライマックスに突入,ティンパ二の連打でトドメを刺します

隣席のお年寄りは興奮して,何度もブラボーを叫び大きな拍手をしていましたが,気持ちはよく分かります

定期演奏会です.『普通は』アンコールはありません.私は帰るつもりでした が,まさかのアンコールがありました.なぜかモーツアルトの「交響曲第41番”ジュピター”」の第4楽章が途中から演奏されました 正規のプログラムになかった交響曲の一つの楽章がアンコールとして演奏されるのは『普通は』ありません.なぜモーツアルトの最後の交響曲の最後の楽章だったのか あらためてこの日のプログラムは振り返ってみると,1曲目のベートーヴェン「交響曲第1番」も,3曲目のシューマン「交響曲第2番」も同じ「ハ長調」で書かれています.そして,言うまでもなくモーツアルト「交響曲第41番」もハ長調です そうした意味では,「ハ長調繋がり」でアンコール曲を選んだのかな,と思ったりしました 実際には上岡さんに聞いてみなければ分かりませんが,案外「ベートーヴェンもシューマンもモーツアルトも波長が合うんだよ」と言うかも知れません

 

       

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「スター・トレックBEYOND」「キング・オブ・エジプト」を観る / 遠藤周作著「ウスバかげろう日記 狐狸庵ぶらぶら節」を読む / METライブ「ルサルカ」座席指定を取る

2017年03月18日 07時54分53秒 | 日記

18日(土).昨日,新宿ピカデリーでMETライブビューイング,ドヴォルザーク「ルサルカ」の座席指定を取りました 21日(火)午前10時の部です.いつものように左サイド後方の席を押さえました 前回のMET「ルサルカ」のヒロインはルネ・フレミングでしたが,今回はクリスティーヌ・オポライスです

 

       

 

ということで,わが家に来てから今日でちょうど900日目を迎え,学校法人「森友学園」(大阪市)の籠池泰典氏が「安倍晋三首相から昭恵夫人を通して100万円の寄付を受けた」と証言したことを受けて,衆参両院の予算委員会が籠池氏の証人喚問を23日に行うことを全会一致で決めた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

        籠池氏の捨て身の証言を聞いて安倍晋三首相は 心臓に悪いと殊勝なことを言ったとか 

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「鶏のみぞれ煮」と「生野菜とサーモンのサラダ」を作りました 「鳥の~」は2回目ですが,美味くできました

 

       

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,池袋の新文芸坐で「スター・トレック BEYOND」と「キング・オブ・エジプト」の2本立てを観ました

「スター・トレック BEYOND」はジャスティン・リン監督による2016年製作のアメリカ映画(123分)です

物語は,宇宙の最果てにある未知の領域を探索する過程で,惑星連邦の存在意義を問う新たな謎の敵に遭遇するジェームズ・カークと,彼の率いるU.S.Sエンタープライズ号のクルーたちの闘いを描いています

スター・トレックというと,その昔の人形劇のテレビドラマを思い出しますが,今やCGをふんだんに使ってスピード感と迫力に溢れた作品に生まれ変わっています これでもか と激しい動きの映像と大音響を目の当たりにすると,むしろ昔の人形劇の方が味があったな,と思ったりしました 古いヤツだとお思いでしょうが・・・

 

       

 

  またまた,閑話休題  

 

2本目の「キング・オブ・エジプト」はアレックス・プロヤス監督による2016年製作のアメリカ映画(127分)です

神と人間が共存し,『生命の神』オシリスの統治により繁栄を誇っていた古代エジプトだが,弟セトによりオシリスは謀殺され,人々は横暴なセトに苦しめられていた オシリスの子で,王座と視力を奪われたホルスは,コソ泥の青年ベックと手を組み,エジプトの王に君臨するための鍵を握るアイテム『神の眼』を盗み出すべく,命を懸けた旅に出る ホルスはベックの力を借り『神の眼』を手に入れ,エジプト王になれるのか

この作品もまたCGをふんだんに使った映画です 神と人間が共存する世界ということで,思わずワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」を思い出してしまいました 

 

       

 

  最後の,閑話休題  

 

遠藤周作著「ウスバかげろう日記 狐狸庵ぶらぶら節」(河出文庫)を読み終わりました 遠藤周作は1923年東京生まれ.慶応義塾大学仏文科卒業.55年「白い人」で芥川賞を,66年「沈黙」で谷崎潤一郎賞を受賞.96年9月に逝去しています

 

       

 

狐狸庵先生,この日記を書いた当時は50代半ばです 好奇心旺盛な行動的な先生は英会話に励み,社交ダンスに勤しみ,劇団「樹座」(素人劇団)の座長を務めながら,時に一人旅に出掛け,息子のガールフレンドからの電話にいたずらを仕掛けます

いたずらの話では,次のようなエピソードを書いています

「夜10時頃,豚児(息子)のガールフレンドから電話があり,相変わらず『夜おそく,申しわけありません』と言わぬ 息子は不在だったが,『おります』とわざわざ答え,受話器に声が届く距離に行って息子の名前を2,3回よび,『〇〇さんから電話だよ.なに,居留守を使ってくれ? 君,それは失礼じゃないか.(間をおいて)そうか.それなら仕方ない.そう言おう』.相手に聞こえるように一人芝居してから,『探しましたが,ちょっと出たようです』と言ってやった これでこの女の子とも一巻の終わりであろう

随分な親だと思いますが,息子さんも大人しくしていません 別に日記で次のような会話が交わされます

「この頃,ぼくは学校の女の子にこう言っている.ぼくの父親は最近,作品に行きづまり,時々,自殺したいなどと洩らすし,川端先生の気持ちがよくわかるなどと言うので,心配なんだ と悲しそうに呟くと,女の子がぼくに同情してくれるから,そう言いまわっている

「俺は行きづまっていないぞ.死にたいとも,思わないぞ

「だから,そう嘘を言ってるんだ

「君は父についてそんな出鱈目をしゃべっているわけか

「うん.陰影のある男になりたいからね 本当を言うと,うちの父に愛人ができて,ぼくは暗い気持ちだと,女の子に言いたいんだけど・・・」

近頃の若者の心理も,また理解に苦しむものなり.・・・・とはいえ,豚児の話,あまりにも馬鹿馬鹿しくもあり.怒るのも馬鹿馬鹿しく,ただニヤニヤと笑って聞いている自分に気づき,これまた情けなき限りである

ところで,この本を読んで初めて気が付いたのですが,先生はモーツアルトがお好きなようで,ある日の日記に「仕事場で読書.その合間にモーツアルトを何曲か聴く」という記述がありました また,違う日の日記には「このところ18世紀後半のフランス宮廷に関する本やモーツアルト伝ばかり読む 今,読んでいるのはクルト・バーレンの『モーツアルト』」という記述がありました なるほど,狐狸庵先生とモーツアルトには共通点があることが分かります.スカトロジー(糞尿譚)です モーツアルトの場合は,従妹のベーズレちゃんとの手紙の中にフンダンに出てきます

この作品には97篇の日記が収録されていますが,作家の日常が非日常であることが良く分かります.抱腹絶倒 時々 しんみりです

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ラフマニノフ,ブラームス,シューマンの「ピアノ三重奏曲」を聴く~ベルリン・フィル メンバーによる室内楽

2017年03月17日 07時50分26秒 | 日記

17日(金).昨日の日経夕刊に「合奏でテンポなぜ速く? 合わせる『努力』原因 ~ 東大研究チーム」という記事が載っていました.超訳すると

「合奏で曲のテンポが意図したよりも速くなりやすいのは,緊張などの心理的な要因ではなく,お互いにテンポを合わせようとする努力によって引き起こされるとする研究結果を,東大の研究チームがまとめ,英科学誌電子版に発表した こうした現象は,音楽の世界で『走る』と呼ばれる

この記事を読んで,指揮者はオケが「走る」のを押さえるのに苦労しているんだろうな,と思いました ということで,わが家に来てから今日で899日目を迎え,誰も聞いていないのにコメントしようとしているモコタロです

 

       

            テンポアップすると 演奏がヒートアップして アップアップになるのかな?

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「肉じゃが」と「生野菜とワカメのサラダ」を作りました 「肉じゃが」は慣れないのでジャガイモが煮崩れしてしまいました.今後の課題です

 

       

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,東京文化会館小ホールで「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽~ピアノ三重奏の夕べ」を聴きました これはこの日から始まった「東京・春・音楽祭」の一環として開かれたコンサートです.プログラムは①ラフマニノフ「ピアノ三重奏曲第1番ト短調”悲しみの三重奏曲”」,②ブラームス「ピアノ三重奏曲第1番ロ長調」,③シューマン「ピアノ三重奏曲第1番ニ短調」です 演奏は,ヴァイオリン=アンドレアス・ブーシャッツ(ベルリン・フィル コンサートマスター),チェロ=オラフ・マニンガー(同 ソロ・チェロ奏者),ピアノ=オハッド・ベン=アリです

 

       

 

自席はE列30番,右ブロック左から3つ目です.会場は文字通り満席です 3人の奏者が登場しさっそく1曲目のラフマニノフ「ピアノ三重奏曲第1番ト短調」の演奏に入ります.この曲はチャイコフスキーの訃報に接して書かれた有名な第2番のピアノ三重奏曲ではなく,ラフマニノフがモスクワ音楽院の学生だった19歳の時に作曲された単一楽章の曲です

冒頭,チェロ,ヴァイオリン,そしてピアノが静かに静かに入ってきます 次第にメロディーが浮き上がってきますが,19歳の時の作品とは言え,すでにラフマニノフらしさが垣間見られます

2曲目はブラームス「ピアノ三重奏曲第1番」です この曲はブラームスの室内楽の中で一番好きな曲です.ブラームスが21歳の1854年に作曲されました ブラームスはこの前年にシューマンにその才能を認められているので,並々ならぬ意欲を感じる曲です

問題は第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」冒頭のテンポです オハッド・ベン=アリは理想的なテンポで入りました 次いでチェロが素晴らしい音色で入り,美しいヴァイオリンが加わります.この時点でこの3人の演奏の成功を見通すことができました 第2楽章「スケルツォ:アレグロ・モルト」ではアンドレアス・ブーシャッツのヴァイオリンが冴えわたりました 第3楽章「アダージョ」では歌心に溢れたベン・アリのピアノが印象的で,オラフ・マニンガーのチェロが心に沁みました 間を空けずに演奏された第4楽章「アレグロ」は3人の演奏の集大成です.素晴らしいアンサンブルでした

 

       

 

休憩後はシューマン「ピアノ三重奏曲第1番ニ短調」です この曲は1847年6月,妻のクララの誕生を祝って作曲されました この曲は4つの楽章からなります.ライブ,CDを問わず この曲を聴くのは初めてですが,第1楽章冒頭を聴いて「ああ,やっぱりシューマンだ」と思いました.同じドイツ・ロマン派とはいえ,ブラームスとはまったく異なる印象です 3人はこの楽章に限らず,終始 完璧なアンサンブルで躍動感溢れる演奏を展開しました

弦の二人はさすがはベルリン・フィルを代表するアーティスト,ピアニストは普段彼らと室内アンサンブルを組んでいる実力者といった感じでした

満場の拍手とブラボーでしたが,アンコールはありませんでした.見識です

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木下千鶴のピアノを聴く~飯野ビル・ランチタイムコンサート / ピアニスト横山幸雄氏が上野学園大学を解雇されたって? / 田口久美子著「書店繁盛記」を読む

2017年03月16日 08時01分50秒 | 日記

16日(木).昨日の朝日朝刊・社会面に「上野学園大 ピアニスト横山さん解雇~経営問題で対立『業務妨害』理由に」という記事が載っていました 超訳すると

「上野学園大学が,教授の横山幸雄氏を13日付で解雇した 横山氏は1990年のショパン国際コンクール第3位入賞者.同氏は昨年8月,同大の経営陣を背任の疑いで東京地検に刑事告発している.昨年4月,当時教員だった指揮者の下野竜也氏らと『新しい上野学園を作る会』を立ち上げ,経営の健全化を訴えていた 同学園では,創設当初から石橋家による同族経営が続いている.同学園は『機密情報をSNSで漏洩し,業務を妨害するなどの行為があった.安心して勉学できる環境を確保するため,やむなく解雇処分とした 第3者委員会の指摘を受け,すでに経営改善を進めている』としている.横山氏は地位保全の仮処分を申請する意向

この記事が出るまで,同大学でそんな内部紛争があったとはちっとも知りませんでした 本当のところは当事者でなければ分からないでしょうが,こういうことが世間に明らかになると,大学のイメージ・ダウンは避けられません 都内だけでもいくつもある音楽大学の中で生き残りをかけて学生獲得競争を繰り広げているわけですが,一歩後退したと言われても仕方ありません.残念なことです 

というわけで,わが家に来てから今日で898日目を迎え,今春闘は経営側が労働組合側のベースアップ要求に4年連続で応じるが,引き上げ幅は前年実績を軒並み下回り,過去4年で最も小幅の回答が相次ぐ見通しだ とする記事を見てコメントするモコタロです

 

       

         政府が企業にベアを要請するなんて 一昔前は考えられなかった でも結局は大企業だけ

 

  閑話休題   

 

昨日,夕食に「クリーム・シチュー」と「生野菜とツナのサラダ」を作りました とにかく寒い日だったので温かいものが食べたくなりました  シチューはジャガイモとニンジンは皮付きのまま煮込んでいるので煮崩れがありません

 

       

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,内幸町のイイノホールでランチタイムコンサートを聴きました 早いもので今回は60回目を迎えるそうです この日の出演は大阪府出身のピアニスト木下千鶴さんです.2年前に青山学院大学経営学部を卒業,昨年 桐朋学園大学カレッジディプロマを卒業しました

ちょっと早めにロビーに着いたので,前から2列目に座りました プログラムは下のチラシの通りですが,シューマンとラヴェルの順を入れ替えて演奏しました

ベージュの衣装で登場した木下さんですが,後半に行くほど調子が出て来たように思います ショパンのバラードは熱演でした ビルのロビーという悪条件にも関わらず,飯野ビル自慢のベーゼンドルファー・インペリアルが良く響いていました ただ,室内ではないのでとにかく寒かった 聴いている最中,足元がスース―して寒気を感じていました 演奏する側の木下さんにもお気の毒でしたが,約1時間 (若干 大阪弁の)曲目解説を交えながら昼休みのひと時を充実したものにしてくれました これからの活躍を期待します

 

       

 

  最後の,閑話休題  

 

田口久美子著「書店繁盛記」(ポプラ社)を読み終わりました 田口久美子さんは1947年東京生まれ.東京外国語大学卒業.1971年にキティランド入社.73年書籍部門・八重洲店に配属,書店員としてのキャリアをスタート 76年に西武百貨店書跡販売部門(のち「リブロ」)入社.池袋店長を経て97年にジュンク堂に移る.現在は池袋店副店長を務めています

 

       

 

この本を手に取ってレジに持っていったのは,もちろんジュンク堂池袋店です この本の著者・田口久美子さんの姿も何度か見かけたことがあります.ある時は3階で,ある時は2階で ジュンク堂は私が勤めていた会社が入居する内幸町のNPCビル1階に書店を構えているので,現役時代はそこで本を買っていました そういう訳で,同書店には親近感があります

田口さんは本と書店に関しては何でも知っているカリスマ店員と言われている人ですが,この本は,自分の経験談を交えながら若い店員たちの日々の奮闘ぶりを描いたエッセイ集です

アマゾンをはじめとするネット書店の進出により,書店は「リアル書店」と呼ばれるようになるなど大きく業界地図が塗り替えられたという出版業界の話,絶えない万引き被害,無謀な客からの苦情対応,著者サイン会の裏話・・・などなど,書店を巡るリアルなエピソードが満載です

お客からの問い合わせで一番傑作なエピソードは次のようなものです

「お客さんがメモを見せた.『情事OLの1984』と書いてある.『すみません,ジョージ・オーウェルの”1984年”(ハヤカワ文庫)でしょうか?』.『そう書いてあるでしょう』」

これには笑っちゃいました

ジュンク堂の特徴としては,「専門書のジュンク堂」という経営方針のもと,法律・経済・経営・政治などのアカデミック部門に力を入れて来た,ということがありますが,池袋店に関してはコミック売り場も結構集客力があるようです 田口さんが,コミック売り場の青年に「今までどんな作家を見つけた?」と問うと,彼は「まず,新海誠,かな.学生の頃,インディーズで書いているのを見つけて(『ほしのこえ』),いつかサイン会をやってほしい,ってその時思って,徳間書店から一昨年DVDが出て,一生懸命売りました サイン会が実現できた時は本当に嬉しかった」と答えています

この話はこの本が単行本で出た2006年頃の話ですが,新海誠と言えば昨年来日本の映画界の話題をさらったアニメ映画「君の名は.」の監督です 10年前にジュンク堂の若き書店員が目を付けていた訳ですね ジュンク堂には各売り場に目利きの店員が揃っているようです

この本を読むと,目に見えないけれど,普段からいろいろなトラブルや悩みを抱えながら働いているんだなあ,と今まで以上に書店と書店員への親近感が湧いてきます 本好きのあなたにお薦めします

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新国立劇場でドニゼッティのオペラ「ルチア」を聴く~歌手,指揮者+オケ・合唱,演出が3拍子揃った 新国立オペラの史上に残る公演!

2017年03月15日 08時10分55秒 | 日記

15日(水).わが家に来てから今日で897日目を迎え,英議会がメイ首相に欧州連合(EU)離脱を通告する権限を付与する法案について上下両院で再審議し,原案通り可決した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

                        「本当にEUから離脱して大丈夫なの?」と訊かれると「気がメイる」ってさ 

 

  閑話休題  

 

昨夕,初台の新国立劇場で ドニゼッティのオペラ「ルチア」を聴きました キャストは,ルチア=オルガ・ぺレチャッコ=マリオッティ,エドガルド=イスマエル・ジョルディ,エンリーコ=アルトゥール・ルティンスキー,ライモンド=妻屋秀和,アルトゥーロ=小原啓楼,アリーサ=小林由佳,ノルマンノ=菅野敦.管弦楽=東京フィル,合唱=新国立劇場合唱団,指揮=ジャンパオロ・ビザンティ,演出はモナコ生まれ,モンテカルロ歌劇場総監督のジャン=ルイ・グリンダです

私が新国立劇場でこのオペラを聴くのは2002年に次いで2回目です.この年から新国立オペラの定期会員になっているので,その最初の年に聴いたことになります

ほぼ満席の初日公演.一人を除いたすべての聴衆が席に着き,開演前のアナウンスも終わり,オーケストラ・ピットでチューニングが始まろうとしているその時,やってきました,最後の一人 背中に大きな荷物を背負った自己顕示欲と承認欲求の固まり サスペンダー爺さん そんなに目立ちたいのか? 目障りなことこの上ない 四面楚歌なのに本人だけが気が付いていない唯我独尊 私の周りには外国人のお客さんが目立ちましたが,あの行動は奇異に感じるでしょう.爺さんは日本の恥です

 

       

 

物語の舞台はスコットランドのランメルモール地方.領主エンリーコは妹ルチアをアルトゥーロと政略結婚させようとしている ルチアが宿敵エドガルドと愛し合っていると知ったエンリーコは,エドガルドの裏切りを示す偽りの手紙をルチアに見せ,アルトゥーロとの結婚を承諾させる 真相を知らないエドガルドはルチアの裏切りを激しく責める.ルチアは正気を失い花婿を刺殺してしまう 血に染まったルチアが祝宴に現れ,惑乱する意識の中で,エドガルドへの愛を必死に訴え息途絶える.真相を知ったエドガルドはルチアの後を追う

 

       

 

結論から先に書きます この日の公演は新国立劇場の歴史に残る 歌手,指揮者+オケ・合唱,演出が3拍子揃った素晴らしい公演でした

まずジャンパオロ・ビザンティの指揮東京フィルによる「前奏曲」の緊張感に満ちた渾身の演奏が素晴らしい この短い序曲だけでこのオペラの悲劇性が表れていました 演奏の途中で幕が開きますが,目の前に現れたのは大きな岩に波が打ち寄せる海の風景です もちろん,波は映像で映し出されているわけですが,どこまでが本物の舞台で,どこからが映像なのか区別できないほどリアル感があるのです プログラム冊子の「プロダクション・ノート」で,演出家のジャン=ルイ・グリンダが「このプロダクションの舞台美術では『海』が強調されています.オペラの冒頭部分で合唱が『海辺を駆け巡り』と歌うように『ルチア』の物語はスコットランドの海岸を舞台にしており,それは重要な事実だと思うからです」と述べていますが,その考えを生かした舞台作りをしているのです これは単に新奇性を狙った演出とは違い説得力があります

歌手陣は充実しています.まず,ヒロインのルチアを歌ったぺレチャッコですが,ロシアのサンクトペテルブルク生まれのソプラノです マリンスキー劇場の児童合唱を経て,ベルリンのハンス・アイスラ―音楽大学で学んでいます.美しいコロラトゥーラで歌唱力に優れ,演技力も十分です ルチアに成り切って歌い演じているところは,同じロシア出身のMETのディーヴァ,アンナ・ネトレプコによく似ています.彼女のスター性は第2のネトレプコになれるかも知れません

ルチアといえば第3幕の「狂乱の場」ですが,正気を失ったルチアが槍を手にして登場するシーンでは思わずゾッとしてしまいました 槍の先に男の首が刺さっていたからです.これを見てMETオペラ,ゼフィエッリ演出による「トゥーランドット」の冒頭シーンを思い出しました ぺレチャッコの独唱による「狂乱の場」のアリアが12分以上続きますが,この歌に伴うソロは通常フルートで演奏するところを,ドニゼッティが指定した通りグラスハーモニカで演奏しました 実際にはグラスハーモニカよりも大きな音量の現代のガラス楽器『ヴェロフォン』を,製作者のサシャ・レッケルトが演奏しました ぺレチャッコとのアンサンブルは幻想的な雰囲気を醸し出し,ルチアの頭の中の世界を描いているかのようでした

 

       

 

ルチアの恋人エドガルドを歌ったイスマエル・ジョルディはスペイン出身ですが,力のあるテノールで声が良く通りました

ところで第1幕前半の夜の城の場面で,庭園にルチアが現れ,後からエドガルドがやってくるのですが,この衣装が独特でした 男性のエドガルドがチェックのスカートを履き,女性のルチアがズボンにロング・ブーツを履いているのです スコットランドが舞台だという意識に基づいた演出だと思います

ルチアの兄エンリーコを歌ったアルトゥール・ルチンスキーはワルシャワ生まれですが,深みのあるバリトンで説得力がありました

ライモンドを歌った妻屋秀和は新国立オペラではお馴染みのバスですが,何を演じても素晴らしいパフォーマンスを見せてくれます

 

       

 

最後に特筆すべきはジャンパオロ・ビザンティ指揮東京フィル,新国立劇場合唱団の演奏です 「前奏曲」はもちろんのこと,第2幕のフィナーレの,エドガルドが到来した後の六重唱+合唱のコンチェルタート(ゆったりした歌い方で各人が思いのたけを歌う場面)と,それに続くストレッタ(アンサンブルの急速な締めくくり)は高揚感溢れる見事な演奏でした

以上のことを総合して最後にもう一度,結論を書きます.この日の公演は新国立劇場の歴史に残る歌手,指揮者+オケ・合唱,演出が3拍子揃った素晴らしい公演でした

なお,今回このオペラを聴くに当たり,マリア・カラスがルチアを歌うCDで予習しておきました ジュゼッペ・ディ・ステファノがエドガルドを歌い,カラヤン指揮ベルリン・RIAS交響楽団,ミラノ・スカラ座合唱団による1955年ベルリンでのライブ録音です.全盛期のカラスの歌声が聴けます

 

       

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日経ミューズサロンでオッテンザマー「クラリネット・リサイタル」を聴く~ヴェルディ(バッシ編)リゴレット・ファンタジーにブラボー!

2017年03月14日 08時06分31秒 | 日記

14日(火).わが家に来てから今日で896日目を迎え,3年後の2020年東京オリンピックのチケット販売に向けた準備が本格化している というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

         開会式の想定額が25,000円~165,000円らしい ビールの売り子で潜り込む手は?

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「ダイコンとひき肉の煮物」と「生野菜とアボガドとサーモンのサラダ」を作りました 「ダイコン~」は2回目かな.上々の出来です

 

       

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,大手町の日経ホールで第458回日経ミューズサロン「ダニエル・オッテンザマー クラリネット・リサイタル」を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「モーツアルトの歌劇『ドン・ジョバン二』より『お手をどうぞ』による変奏曲」,②ストラヴィンスキー「3つの小品」,③ドビュッシー「第1狂詩曲」,④ヴェルディ/バッシ編曲「リゴレット・ファンタジー」,⑤ロッシーニ「序奏,主題と変奏」,⑥コヴァ―チ「ファリャへのオマージュ」,⑦同「ハロー・ミスター・ガーシュイン」,⑧同「ハンガリア・フォークソング」,⑨同「ショーレム・アレイヘム」,⑩オッテンザマー「アーティへのオマージュです ピアノ伴奏は村田千佳です

オッテンザマーは2009年からウィーン・フィル/ウィーン国立歌劇場管弦楽団の首席クラリネット奏者を務めています 一方,村田千佳は東京藝大大学院修了後,ウィーン国立音楽演劇大学大学院を修了しています

 

       

 

自席は1階F列9番,センターブロック左通路側です.会場は「当日券はありません」の表示通りです

1曲目はベートーヴェンの「モーツアルトの歌劇『ドン・ジョバン二』より『お手をどうぞ』による変奏曲」です これはドン・ジョヴァンニがツェルリーナを誘惑する時の二重唱を元にした変奏曲です.オリジナルの編成は2本のオーボエとイングリッシュホルンのための曲ですが,クラリネットとピアノで演奏します オッテンザマーは軽快なテンポで曲を進めます.村田千佳も良く付けています

2曲目はストラヴィンスキー「3つの小品」です これは1919年に作曲したストラヴィンスキー唯一のソロ・クラリネットのための作品です.第1曲は虚無僧の尺八のような低い音で始まり,第2曲でテンポアップして,第3曲では高音で自在にテンポが変化します 低音から高音までクラリネットの魅力が凝縮されていました

ここで,オッテンザマーがマイクを持ってプログラム前半の曲目を,村田千佳さんの通訳で解説し,次の曲に移りました

3曲目はドビュッシー「第1狂詩曲」です この曲はフォーレに頼まれてパリ音楽院クラリネット科の卒業試験の課題曲として作曲した作品です なるほどクラリネットの特性を生かすかどうかが試されるようなあらゆる要素の詰まった曲でした

プログラム前半の最後の曲はヴェルディ作曲バッシ編曲「リゴレット・ファンタジー」です ヴェルディの歌劇「リゴレット」から主要な旋律をバッシが編曲したものです.これは聴いていて楽しい曲でした オッテンザマーは変幻自在です.超有名な「女心の歌」のメロディーがいつ出てくるかと待ち構えていましたが,とうとう出てきませんでした.それだけが心残りです

 

       

 

プログラム後半の最初はロッシーニの「序奏,主題と変奏」です この曲は まるでコロラトゥーラ・ソプラノでオペラ・アリアを聴いているような感じでした.さすがはロッシーニの曲です

次にハンガリー出身のクラリネット奏者ベラ・コヴァ―チ(1937~)によるソロ曲が4曲演奏されました 最初はスペイン情緒豊かな「ファリャへのオマージュ」,次いで「ラプソディ・イン・ブルー」や「パリのアメリカ人」のメロディーも出てくる「ハロー・ミスター・ガーシュイン」,次に母国ハンガリーの民謡を素材にした「ハンガリア・フォークソング」,次いで「あなたに平和を」という意味を持つ「ショーレム・アレイヘム」が演奏されました この4曲は,クラリネットの音色と演奏の可能性を理解させてくれる 魅力に溢れた作品群でした

最後にオッテンザマーが作曲した「アーティへのオマージュ」が演奏されました この曲は,ニューヨーク出身のジャズ・クラリネット奏者アーティ・ショウ(1910-2004)へのオマージュを込めて作曲されたクラリネット・ソロのための作品です  オッテンザマーは足を踏み鳴らしてリズムを取りながらスゥイング感豊かに演奏しました おやっと思ったのは,曲の前半にR.シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」に似たメロディーが現れたのです

満場の拍手に応え,二人はグリーグの「ヴァイオリン・ソナタ第3番」から第2楽章を演奏し,コンサートを締めくくりました  ウィーン・フィルの首席の演奏はさすがでしたが,ピアノの村田千佳の演奏も負けず劣らず素晴らしかったと思います

日経ミューズサロンは出演者が玉石混淆ですが,今回のようなウィーン・フィルの首席奏者のコンサートでもチケット代が3,800円というのは信じられないくらい格安です これからも出演者とプログラムをよく見て選んで聴きたいと思います

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クァルテット・エクセルシオ+澤村康江でモーツアルト「クラリネット五重奏曲」,「弦楽四重奏曲”狩”」他を聴く

2017年03月13日 08時03分56秒 | 日記

13日(月).わが家に来てから今日で895日目を迎え,政府が南スーダン国連平和活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊の施設部隊を5月末めどで撤収するのを受け,代わりに新たなPKO派遣の検討に入った というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

         治安への不安がない場所を探しているのなら 派遣の必要はないんじゃないかな?

 

  閑話休題  

 

昨日,晴海の第一生命ホールでクァルテット・エクセルシオの「アラウンド・モーツアルト Vol.2~ウィーンでの素敵な出逢い」を聴きました プログラムは①モーツアルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲(弦楽四重奏版),②シューベルト「弦楽四重奏曲第6番」,③モーツアルト「弦楽四重奏曲第17番変ロ長調K.458”狩”」,④シュタードラー「二重奏曲第1番」(クラリネットとヴィオラ版),⑤モーツアルト「クラリネット五重奏曲イ長調K.581」です.④⑤のクラリネット独奏は澤村康江です

 

       

 

自席は1階9列22番,センターブロック右から3つ目です.会場は9割方埋まっているでしょうか.良く入りました

4人が登場しますが,女性陣はデザインと濃淡は異なるもののグリーン系の衣装で統一しています 彼女たち何種類の”ユニフォーム”を持っているんだろう?

さっそく1曲目のモーツアルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲(弦楽四重奏版)の演奏に入ります 4人だけの演奏なので迫力は期待できませんが,その分,各楽器の役割分担を明確に聴き取ることが出来ます.4人の演奏は軽快そのものです

2曲目はシューベルトの「弦楽四重奏曲第6番ニ長調」です この曲は1813年8~9月(シューベルト16歳の時)に作曲されました.聴いていると,少年時代の作品であるものの,第1楽章などには後のシューベルトらしさが顔を出します ひと言でいえば「歌心」に満ちた曲想です.清々しい演奏でした

3曲目はモーツアルトの「弦楽四重奏曲第17番変ロ長調”狩”K.458」です この曲は,尊敬するハイドンの「ロシア四重奏曲」に感銘を受けたモーツアルトが,いわゆる「ハイドン・セット」として作曲し,ハイドンに献呈した6曲の弦楽四重奏曲(第14番~19番)の一つです 

4つの楽章から成りますが,4人の演奏は”これぞモーツアルト”と言った生命力に溢れた心地よい演奏でした

 

       

 

休憩後の最初は,モーツアルトの親友で共にフリーメースンのメンバーだったウィーンのクラリネット奏者・アントン・シュタードラーが作曲した「二重奏曲第1番」です 元々は2本のクラリネットのための曲ですが,この日はクラリネットとヴィオラによって演奏されます

昨年3月まで新日本フィルのクラリネット奏者だった澤村康江とヴィオラの吉田有紀子が登場します 澤村も他の女性陣に合わせてグリーン系のロングスカートを着用しています 目を瞑って聴いていると,ほとんどモーツアルトの曲のような気がします.感心したのは,ヴィオラがクラリネットの音色に聴こえてきたことです それだけ吉田有紀子の演奏が優れていたということでしょう

最後の曲はモーツアルトの「クラリネット五重奏曲イ長調K.581」です この曲はシュタードラーのために作曲,1789年9月に完成しました.モーツアルトの死の2年前です

澤村が中央にスタンバイし,エクの4人がいつものように左右に分かれます.この曲は4つの楽章から成ります.第1楽章が弦の緩やかな旋律で開始され,独奏クラリネットが軽やかに入ってきます 澤村康江のクラリネットはあくまでも優しく響きます 私が一番好きなのは第2楽章「ラルゲット」です.クラリネットの奏でる音楽は澄み切った青空を思い浮かべさせ,まるで天上の音楽を感じます 第3楽章「メヌエット」はモーツアルト独特の楽しい音楽です そして第4楽章は楽し気な主題と変奏曲です 澤村康江のクラリネットはこの曲でも優しく響き,エクとのアンサンブルも素晴らしかった 会心のモーツアルトでした 

拍手を受け,西野が会場に向かって

「今日はたくさんの方々にお出でいただき,驚くとともに感謝申し上げます これほど多くのお客さんは私たちのコンサートでは初めてではないかと思います アンコール曲を何にしようか,ボロディンの『ノクターン』にしようか,それとも・・・といろいろ考えたのですが,結局,いま演奏したモーツアルトのクラリネット五重奏曲の第3楽章『メヌエット』を演奏することにしました

とアナウンスして,演奏に入りました.この楽章が2度聴けたのはラッキーでした

澤村康江さんは去年の今頃,新日本フィルを退団してから どこで何をやっているのかと心配していましたが,この日,元気な演奏姿を見ることが出来て良かったです

 

       

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