富山市の交番襲撃事件 元自衛官に無期懲役の判決  2人を殺害

2021年03月07日 08時42分14秒 | 事件・事故

2021年3月5日 16時18分 事件

3年前、富山市の交番で警察官を殺害して拳銃を奪ったうえ、近くにいた警備員を殺害したとして、強盗殺人や殺人などの罪に問われた元自衛官に対し、富山地方裁判所は強盗殺人罪は成立せず「計画性が高いとは言えない」などとして、死刑の求刑に対し、無期懲役の判決を言い渡しました。


元自衛官の島津慧大被告(24)は平成30年6月、富山市の交番で当時、警部補だった稲泉健一さん(46)をナイフで刺して殺害して拳銃を奪ったうえ、近くの小学校の校門前にいた警備員の中村信一さん(68)を、その拳銃で撃って殺害したとして、強盗殺人や殺人などの罪に問われました。

これまでの裁判員裁判で、検察が死刑を求刑したのに対して弁護側は「警察官が倒れたあとに拳銃をとる意思が生まれた。強盗殺人ではなく、殺人と窃盗の罪にあたる」などとして、無期懲役が妥当だと主張していました。

5日の判決で、富山地方裁判所の大村泰平裁判長は「警察官を殺害後に拳銃を取る意思が生じた可能性を排除できず、被告が拳銃を奪う意思を持って殺害行為に及んだと認定するには合理的な疑いが残る」として、強盗殺人ではなく殺人と窃盗の罪にあたると判断しました。

そのうえで「被告の責任は極めて重大で社会的影響も大きいが、犯行の動機が生まれた過程に発達障害の影響があることは明らかで、一定の限度で被告に有利に考慮することが相当だ。計画性が高いとは言えず、死刑を選択することがやむをえないとは言えない」と述べ、無期懲役を言い渡しました。

これまでの裁判で島津被告は一貫して沈黙していて、5日の判決の言い渡しを落ち着いた様子で聞いていました。

検察「上級庁など協議し対応検討」
判決について、富山地方検察庁の西岡剛次席検事は「判決内容を精査し、上級庁などと協議したうえで対応を検討したい」とコメントしています。
弁護士「適切な事実認定、量刑だ」
島津被告の弁護士は、判決のあとコメントを発表し「強盗殺人罪の成立を否定し、殺人罪と窃盗罪の成立を認めたことについては、証拠を正しく評価した適切な事実認定だ」としました。

そのうえで「発達障害が事件に影響を与えたと認められたことは評価できる。無期懲役は適切な量刑だ」としています。
「悔しい」中村さんの遺族
判決のあと、殺害された警備員の中村信一さんの遺族が報道陣の取材に応じました。

中村さんの娘は「判決を自分の中で受け入れられず、裁判長の話が頭に入ってきませんでした。裁判員の皆さんがすごく悩んで重い決断をしたと思いますが、私は死刑を望んでいたので、悔しいのひと言です」と話しました。

中村さんの妻は「今は無期懲役を受け止めようと思っています。被告にはこれから償うための日々が始まりますが、彼が償えるような状態になるまでには時間がかかると思います」と話しました。

判決のあと殺害された遺族は墓参りに訪れました。
中村さんの妻は「判決が無期懲役だったことと、極刑を望んでいた娘や孫たちに今後どんな影響がでるか分からないので、見守ってねと伝えました」と話しました。

そのうえで「夫はよく頑張ってきたな、ちょっと休めよと言ってくれる気がします」と話しました。

また、中村さんの娘は「死刑判決にならず、悔しい。私の力不足でごめんねと伝えました」と話しました。

そのうえで「判決に向けてもっとやれることがあったのではないかと思い、自分自身に対しても悔しいし、判決自体も悔しいです」と話しました。
自治振興会会長「不満が残る判決」
事件のあった交番や警備員が撃たれた小学校がある奥田校下自治振興会の竹嶋一恭会長は「被害者の家族が苦しんでいることが認められなかったと感じます。被告に同情すべき点はなく謝罪もないので、不満が残る判決でした」と話しました。

この自治振興会は、事件以降、連日子どもたちを見守る活動を続けているということで、竹嶋会長は事件を振り返り「地域の安心安全について改めて考えさせられた」と話していました。


福岡5歳児餓死 親族「引き取りたい」と相談、児相は会見で公表せず

2021年03月07日 08時32分09秒 | 事件・事故

毎日新聞 2021/3/5 12:13(最終更新 3/6 20:23) 

福岡県篠栗(ささぐり)町で5歳男児を餓死させたとして母親と知人女性が逮捕された事件で、母親の碇(いかり)利恵容疑者(39)の親族が、男児が死亡する約1カ月前から複数回、福岡児童相談所(同県春日市)に男児らを引き取りたいなどと相談していたことが、関係者への取材で判明した。

児相は、碇容疑者らが逮捕された翌日の記者会見で対応の経過などを説明したが、この事実は公表していなかった。

 碇容疑者と幼稚園の「ママ友」の赤堀恵美子容疑者(48)は、2019年8月ごろから碇容疑者の三男の翔士郎(しょうじろう)ちゃんの食事の量や回数を減らし、20年4月18日に餓死させた疑いで今月2日、保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。


 関係者によると、20年3月12日、碇容疑者から「金を貸してほしい」と無心された親族が児相を訪問。親族は、碇容疑者に「経済的に困っているのなら、子供たちを預かろうか」と提案したが受け入れられなかったとして児相に対応を求めた。この時、児相は同11日の家庭訪問で翔士郎ちゃんら子供3人が元気だったことを確認したと伝えた。

 3月31日に親族が再び児相を訪れた際、児相は関係機関と見守りを続けると説明した。碇容疑者は家賃滞納による強制退去で3月下旬に転居。碇容疑者と連絡が取れない親族は、4月8日に「子供たちを自分が引き取れないか」と相談し、転居先を教えてほしいと求めたが、児相は「個人情報で教えられない」と回答したという。翔士郎ちゃんはその10日後に死亡した。


 関係者によると、碇容疑者は元夫が浮気をしているという赤堀容疑者のうそを信じ、19年5月に離婚。碇容疑者は同12月、生活保護の手続きの際、県の保健福祉事務所に「親族は離婚に反対したので関係が悪化している」と訴え、親族に生活保護費の受給を伝えないよう求めたという。

 碇容疑者らが逮捕された翌日の今月3日に記者会見した福岡児童相談所は、20年3月の家庭訪問で翔士郎ちゃんの元気な様子が確認できたため「(当時は)差し迫った危険はないと判断した」という。しかし、この会見ではその後複数回、碇容疑者の親族から相談があったことは明らかにしなかった。


 5日に取材に応じた福岡児相の森本浩所長は、親族から複数回相談があったことを認め「個人情報にかかわるため積極的に公表しなかった」と述べた。

 そのうえで、児相としては翔士郎ちゃんの家庭は見守り対象の中で一番軽微な事案のCケースと判断していたことを明かし、兄2人が通う小学校など関係機関で見守りを進める家庭だったと説明。20年3月に家庭訪問して以降は、児相として訪問予定はなく、その後の翔士郎ちゃんの状態は確認していなかった。

県警は、翔士郎ちゃんの死亡時の体重が平均の半分の10キロほどしかないなど不審な点があったことから捜査に着手。碇容疑者は、県警の調べに対し「(赤堀容疑者に)だまされた。絶対に許せない。(翔士郎ちゃんを)守ってやりたかった」と話したという。【浅野孝仁、中里顕、一宮俊介】

NPO法人児童虐待防止協会の津崎哲郎理事長の話

 成長期にある子供が長期休みの後に体重が減っていたり、親が何らかの理由を付けて会わなかったりする状態は、虐待として注意を要するケースだ。親族が当該家族に接触できない場合、児相は「個人情報なので教えられない」ではなく、親族が何を心配しているのか、親がなぜ接触を拒否しているのかなどを丁寧に聞く必要がある。

今回のケースでは、児相や自治体などでつくる要保護児童対策地域協議会に、家庭の中に踏み込んで生活実態を正確に把握しようとする姿勢が少し欠けていたのではないか。

 

 


「自殺手伝う」 嘱託殺人未遂容疑で46歳逮捕へ 19歳、SNSで依頼 警視庁

2021年03月07日 08時32分09秒 | 事件・事故

毎日新聞 2021/3/6 東京朝刊 

 ネット交流サービス(SNS)に自殺願望を書き込んだ東京都の少女(19)からの依頼で殺害しようとしたとして、警視庁捜査1課は6日にも、東京都葛飾区東水元、無職、須藤昭雄被告(46)=営利目的等誘拐罪で起訴=を嘱託殺人未遂容疑で再逮捕する方針を固めた。

 捜査関係者によると、少女は1月下旬にツイッターに「自殺をしたい」と書き込んだ。「手伝ってあげる」というメッセージを送ってきた人物と合流して自宅に連れて行かれたが、2月2日に近くの交番に駆け込んで助けを求めていた。

 警視庁が経緯を捜査したところ、須藤被告が1月31日に足立区内で少女と待ち合わせ、車に乗せて自宅に連れて行った疑いが浮上。2月13日に身体への加害目的で誘拐したとして逮捕していた。その後の調べで、1人暮らしの自宅アパートの一室で、少女の首を絞めたり、練炭に火をつけたりして殺害しようとした疑いが強まったとしている。これまでに「自殺を手伝おうと思った」と供述しているという。

 


自殺「勧誘」の投稿急増3042件

2021年03月07日 08時29分46秒 | 事件・事故

ネットで自殺誘う書き込み大幅増 半年で昨年分を上回る
田内康介 2020年10月30日 19時39分 朝日新聞

警察庁から委託を受けてネット上の違法・有害情報を監視する「インターネット・ホットラインセンター」(IHC)への通報のうち、自殺の誘因などに当たると判断された通報が今年上半期(1~6月)で3042件あり、昨年1年間の件数を上回った。

 わいせつな画像・動画をアップしたり、違法薬物を広告したりして「違法情報」と判断された通報も昨年同期から大幅に増加した。同庁は、コロナ禍でネット環境に接する機会が増えたことなどが影響した可能性もあるとみている。

 神奈川県座間市のアパートで2017年に男女9人の遺体が見つかった事件では、SNSで自殺に関する投稿をした女性らが誘い出されたとされる。この事件を受け、「一緒に死にたい人いませんか」などと自殺を誘う書き込みも18年1月にサイバーパトロールの対象になり、18年のIHCへの通報は2582件、19年は2629件あった。

 今年上半期の3042件のうち、IHCは、事前に削除されたものを除く2934件についてプロバイダーなどに削除を依頼。その結果、1195件が削除されたという。

     ◇

悩みのある人の相談先 
・自殺予防いのちの電話 

フリーダイヤル0120・783・556(毎日午後4~9時、毎月10日は午前8時~翌午前8時)

ナビダイヤル0570・783・556(午前10時~午後10時)

 このほか、各地域にも「いのちの電話」があり、「日本いのちの電話連盟」のホームページで電話番号を確認できる。(田内康介)


男児搬送先で母親に口止め? 5歳餓死、逮捕の女

2021年03月07日 07時03分37秒 | 事件・事故

3/7(日) 6:09配信

西日本新聞

福岡県篠栗町で昨年4月、5歳の男児を餓死させたとして保護責任者遺棄致死容疑で母親と知人の女が逮捕された事件で、男児が救急搬送された際、知人の女が母親に対し、病院内で「警察にボスのことは言うな」などと口止めをした疑いがあることが、関係者への取材で分かった。県警は、男児の死をきっかけに、架空の話を用いた母親への金銭要求が発覚することを女が恐れ、隠蔽(いんぺい)しようとしたとみている。

【画像】5歳児が亡くなった事件の経過

 逮捕されたのは、母親の碇(いかり)利恵容疑者(39)と知人の赤堀恵美子容疑者(48)。赤堀容疑者は、事件と無関係の女性を「ボス」と呼び、碇容疑者に「旦那さんが浮気している。ボスが調査費を立て替えてくれている」などとうそを言い、現金を繰り返しだまし取ったとされる。

 関係者によると、三男の翔士郎ちゃんは昨年4月18日、自宅で意識を失った。碇容疑者から連絡を受け訪問した赤堀容疑者らが119番し、福岡市の病院に搬送された。碇容疑者は病院で医師に「助けてください」と懇願。待合室に入ると、同行していた赤堀容疑者が「ボスのこと、浮気のことは警察に言うな」と指示したという。翔士郎ちゃんは意識が戻らないまま、死亡が確認された。

 当時の赤堀容疑者の言動について、碇容疑者は「自分はそれどころじゃないのに、こんなことを言うんだと思った」と関係者に話しているという。

 赤堀容疑者は別の日には、生活困窮の理由を「パチンコで使った」と説明するよう求め、2人がやりとりしたスマートフォンを壊すよう指示。碇容疑者は実際に破壊した。

 県警によると、赤堀容疑者は容疑を否認しているという。

(木村知寛、山口新太郎)

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【競馬】日本調教師会の橋田満会長「コロナの影響は極めて限定的、速やかに返還を」給付金不正受給を謝罪

2021年03月07日 06時59分57秒 | 事件・事故

2021年3月6日 18時13分
          
JRAは6日、中山と阪神競馬場内で国が支給する持続化給付金を不正受給した疑いがある問題で会見を行い、調教師19人、騎手13人を含む165人が受給していたという調査結果を公表した。総額は約1億8900万円にのぼる。
 ▽橋田満日本調教師会会長「厩舎関係者の一部が税理士等の関与があったにせよ、持続化給付金制度の趣旨を十分理解せず、安直に申請、受給したことにつきまして誠に遺憾であり、深くおわびする次第であります。本会として厩舎関係者に対するコロナの影響は極めて限定的であると改めて説明し、受給要件を満たさない者は速やかに申請の取り下げや、受給返還の手続きをしております。今回の件に関して、規定等に従い厳正に対処、指導を徹底していく所存です」


武豊・日本騎手クラブ会長が給付金不正問題で謝罪「騎手全員に厳重に注意してまいる所存です」【競馬】

2021年03月07日 06時57分08秒 | 事件・事故

3/6(土) 18:15配信

中日スポーツ

JRAは6日、中山と阪神競馬場内で国が支給する持続化給付金を不正受給した疑いがある問題で会見を行い、調教師19人、騎手13人を含む165人が受給していたという調査結果を公表した。総額は約1億8900万円にのぼる。

 ▽武豊日本騎手クラブ会長「このたび持続化給付金制度の趣旨・目的等を十分理解せず、一部の騎手が申請、受給を行ったことについて日本騎手クラブを代表して心よりおわび申し上げます。当該者全員はすでに給付金の返還を済ませる、または返還手続きを進めておりますが、今後このようなことはないよう改めて騎手全員に厳重に注意してまいる所存です」

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JRA】調教師19人、騎手13人含む165人が持続化給付金を不正受給 総額は1億8900万円に

2021年03月07日 06時52分30秒 | 事件・事故

3/6(土) 18:29配信

中日スポーツ

持続化給付金申請・受給に係る説明をする吉田正義・常務理事

 JRAは6日、中山と阪神競馬場内で国が支給する持続化給付金を不正受給した疑いがある問題で会見を行い、調教師19人、騎手13人を含む165人が受給していたという調査結果を公表した。総額は約1億8900万円にのぼる。

 この調査は2月18日から3月4日まで、調査を2回に分けて、東西の厩舎関係者である2748人に行い、そのうち165人(調教師19人、騎手13人、調教助手112人、厩務員21人)が申請・受給を行い、既に163人が返還済か返還手続き中。残る2人のうち、1人は競馬以外の副業収入を理由とし、もう1人は現在重篤な病気を理由で休職中となっている。

 申請・受給した165人のうち、大阪府の税理士が104件を担当したのをはじめ、15の税理士や法人が関わっていた。JRAの吉田正義常務理事(総合企画担当)は「逸脱申請はあってはならないことで、注意喚起をしたのにも関わらず申請した人(7件)がいるのは極めて残念で、また馬主資格を持つ税理士が、トレセンなどの施設内で間接的にでも営業行為をしていれば遺憾だ」と話した。

 JRAは実名公表を現段階で考えておらず、また罰則についても調教師会、労働組合の規則もあり、現段階では直接介入はしない。また関わった大阪の税理士には今後も面談を行う予定。吉田常務理事はこの問題に対する原因について「持続化給付金制度の趣旨、目的を十分にしていなかったり、税理士等の勧誘があったり、社会的問題となるリスクへの認識の甘さがあった」との見解を示した。

 今後、JRAとしては(1)社会通念に照らして妥当な判断ができるように研修を行う(2)厩舎関係者とのホットラインを作る(3)外部の人材を入れた委員会を設置して、防止策とする考えを明らかにした。

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電車飛び込み死亡、窓ガラス突き破り「乗客」巻き添え…鉄道会社は「責任」を負うの?

2021年03月07日 06時50分03秒 | 事件・事故

3/4(木) 10:18配信

弁護士ドットコムニュース

JR西日本・神戸線の元町駅(神戸市中央区)で2月26日、人身事故が発生した。神戸新聞NEXTによると、ホームから男性が飛び込み、通過中の新快速電車のフロント部分に衝突して死亡したという。

その際、飛び込んだ男性の体が、先頭車両のフロントガラスと運転室後部の窓ガラスを突き破って車内まで入り、乗客が巻き込まれてケガを負った。このうち、運転室近くにいた男性は左腕骨折の重傷。このほか体調不良を訴える人もいたという。

電車の人身事故では、ホームにいた客が巻き込まれるというケースはときおり発生しているが、今回のように飛び込まれた電車内の乗客がケガを負うというのはあまり聞かない。この場合の責任はどうなるのだろうか。鉄道事情にくわしい甲本晃啓弁護士に聞いた。

●事故を起こした本人や遺族に損害賠償請求できるが…

――鉄道事故が発生してケガした場合などの責任はどうなりますか。

ケガを負った乗客は、基本的には、鉄道事故を起こした本人に対して、損害賠償を請求できます。加害者である本人が亡くなってしまった場合は、その損害賠償義務を相続した遺族に対して請求することができます。

現場に居合わせて悲惨な事故を目撃して、大きな精神的ダメージを受けたりした場合も同様です。

しかし、本人の遺族が相続放棄した場合、法律上は加害者側へ請求できないため、被害者の「泣き寝入り」になってしまうこともあります。

――鉄道会社に責任をとってもらうことはできないのでしょうか。

鉄道会社が責任を負うのは、一般には、鉄道車両やシステム自体が通常備えておくべき水準の安全性を欠いている場合です。今回のケースは、偶発的な外力による事故ですので、鉄道会社に責任があるとは言いがたいでしょう。

ただし、今回のようなケースでは、乗客が列車乗車中に事故に巻き込まれて被害に遭っているため、遺族が支払えないとしても、鉄道会社が加入する損害賠償保険で補償される可能性があります。

――今回はフロントガラスや窓ガラスを突き破ったようですが、ガラスの強度等についてはどう考えればよいのでしょうか。

鉄道車両の事故安全に対する考え方は、車体そのものが障害物との衝突に耐えうる構造であることに重きが置かれています。一方で、ガラス部分は、非常時には割って脱出する経路ともなるため、必要なときに割れなくてはなりません。

鉄道車両のガラスの強度は特に公表されていませんが、ガラスの耐衝撃性能には物理的な限界があります。2017年4月に発生した東武鉄道の東武練馬駅の事故では、飛び込んだ人がガラスを突き破ったものの助かったようです。あくまでも一例としてみると、強度としてはそれほど高いものが採用されているわけではないようです。

ガラスについて、法的に備えるべき安全性の水準という点では、鉄道会社はガラスが割れても破片が鋭利にならないようなものを採用するという配慮が必要でしょう。

しかし、今回のようなケースについてまで考慮して、割れないガラスを設置しなければならないという義務があるとは言い難いと思います。

●過去の事例からみる今回の特殊性

――単にガラスの強度を上げればよいという問題ではないということですね。

過去の事例をみますと、2013年6月に阪神電鉄・大石駅で列車に飛び込んだ人がガラスを突き破って乗務員室へ入ってしまう事故がありました。また、2017年4月には前述の東武練馬駅で、2020年3月には京浜急行電鉄の神奈川駅で同様の事故がありました。

一般的に乗務員室の運転台(運転席)は進行方向の「左側」に寄っており、運転士を取り囲むように、やや高い位置に運転台の機器が配置されています。

3つの事故はいずれも、運転士のいる左側に人が飛び込んだものでした。おそらく運転台などの障害物で衝撃が弱まったことが考えられますが、逆に運転手も巻き添えでケガをする事例が多くありました。

――運転手が被害にあうケースもあるのですね。

今回のケースで人が飛び込んだ位置は、進行方向の「右側」でした。運転台のような障害物がなく、飛び込んだ人の衝撃が弱まることなく、乗務員室を突っ切って客室との間仕切りのガラスも突き破ったものと想像されます。

報道写真を見ると、事故車両は「JR西日本223系2000番台」のようですが、この車両は客室との間仕切りには開放感がある大型の窓が設置されています。乗務員室スペースも狭く、いくつかの要因が重なって今回の事故になったと思われます。

●乗員・乗客の被害を防ぐためのキーポイントは「乗務員室の構造」

――たしかに車両の構造によって、事故発生時の状況も変わりそうです。

今回と先ほど紹介の3件の事故に関係した鉄道車両は、伝統的な乗務員室の構造をもつ通勤電車でした。客室とほぼ同じ高さに運転台が設置されて、前面窓から客室までの距離も短く、乗務員室のスペースが決して広くないという構造の車両です。

この構造は、車内の開放感があって、鉄道ファンとしては「かぶりつき」(最前列)で前面展望を楽しむには最適なのです。しかし、乗客や乗員の安全性をもっと高めるという観点から、近年はこれとは異なる構造を採用する会社も出てきています。

たとえば、JR東日本では、1992年に踏切内で過積載の大型ダンプカーに列車が衝突して運転士が亡くなるという痛ましい経験もあり、事故から運転士を守ることができる構造として、早くから乗務員室の構造を改良してきました。

その事故の後に開発された車両(E217系以降)では、乗務員室の空間をより広くとり、全体をクラッシャブル構造(あえて一部分を潰れやすくして衝突のエネルギーを吸収し、乗員・乗客を守る構造)とし、運転台も高い位置を採用される例が多くなっています。

ただし、私たちが利用する客室側が少し狭くなるというデメリットがあります。東海道線や横須賀線の車両の運転台付近のドア間隔が通常より狭くなっているのは、このためです。

――利便性も無視できませんが、安全性はとても大事ですね。

このような乗務員室の構造は、今回のような事故の対策にも有効だと思います。実際、この構造を採用する車両で乗務員室に人が飛び込んできたという話は聞きません。

高い運転台にあわせて前面窓も高い位置にありますので、今回のように人がぶつかっても乗務員室内へ入り込む可能性がそもそも低く、さらに乗務員室内のスペースも広いので、仮に飛び込んだとしても客室まで被害がおよぶ可能性はより低いと思います。

●安全性は時間をかけて高められていく

――鉄道会社はどこまで安全性を追求すればよいのでしょうか。

法的に要求される水準を超えてどこまで安全対策を進めるかは、鉄道会社に任せられています。

車両の構造は簡単に変更できるものではなく、各社とも新型車両への置き換えの際に順次設計変更で対応することになるのが一般的です。しかし、これには何十年もの時間がかかります。

現在、多くの鉄道会社では、ホームドアを設置したり、踏切を解消したりして、線路内への侵入を排除するという方法で、システム全体の安全性を高める対策を進めており、今後、この対策が進めば、今回のような事故も減っていくと思います。

先ほど述べたとおり、今回の事故について鉄道会社に責任はありません。一つ一つの事故は不幸なものですが、それを将来の安全対策に繋げていくことが大切なのではないでしょうか。

【取材協力弁護士】
甲本 晃啓(こうもと・あきひろ)弁護士
東京・日本橋兜町に事務所を構える弁護士・弁理士。東京大学大学院出身。著作権と商標に明るく、専門は知的財産とIT法。鉄道模型メーカーをはじめ多くの企業で法律顧問を務め、鉄道にも造詣が深い。個人向けサービスとしてネット名誉毀損「加害者」の弁護に特化したサイト「名誉毀損ドットコム」(http://meiyo-kison.com)を2016年7月から運営。
事務所名:弁護士法人甲本総合法律事務所
事務所URL:http://komoto.jp

弁護士ドットコムニュース編集部

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ボスと呼ばれた女性「利用され、許せない」 5歳餓死事件

2021年03月07日 06時36分58秒 | 事件・事故

3/7(日) 6:09配信

西日本新聞

福岡県篠栗町で昨年4月、5歳の男児を餓死させたとして保護責任者遺棄致死容疑で母親と知人の女の赤堀恵美子容疑者が逮捕された事件。赤堀容疑者は、事件と無関係の女性を暴力団との関係がある「ボス」と呼び、ボスの指示だと偽って、碇利恵容疑者に金銭要求したり食事制限をしたりしていた。ボスに仕立てられた女性が西日本新聞の取材に応じ「全く関係がないのに事件に利用された。許せない」と憤った。

5歳児が亡くなった事件の経過

 女性は、両容疑者と同じ小学校の保護者だった。赤堀容疑者とはたまに連絡を取る間柄だったが、碇容疑者とは、ほとんど話したことがないという。

 女性は事件前、小さな容器を持って碇容疑者宅に向かう赤堀容疑者に会った。赤堀容疑者は「(碇容疑者宅は)電気が止まっているから、食べ物を持っていきよる」と話した。女性は「暗い中はかわいそうだから、子どもたちはうちで預かろうか」と心配したが、赤堀容疑者は「迷惑を掛けられない」と断ったという。

 女性は「碇容疑者が育児放棄をして、赤堀容疑者が面倒を見ている」と考えていた。一方で、路上で赤堀容疑者が碇容疑者を怒鳴りつける場面を見かけ、「対等な関係じゃないのかもしれない」とも思った。その後、赤堀容疑者から「栄養失調で子どもが亡くなった」と聞かされた。

 「ボスと呼ばれる心当たりはありますか」。事件を捜査する福岡県警から連絡があり、事情聴取を受けた。

 担当刑事は、赤堀容疑者が女性をボスと呼び、「ボスが怒るから食べすぎたらいけない」「12台の監視カメラでボスが見張っている」などと碇容疑者を怖がらせていたと説明した。全く身に覚えがなく、驚愕(きょうがく)した。赤堀容疑者が他のママ友たちにも名乗っていた「赤堀ユウナ」は偽名で、年齢を10歳以上若く偽っていたことも知った。

 怒りが収まらず、逮捕前に赤堀容疑者と会った際に問い詰めた。赤堀容疑者は「ボスと呼んだのはあの女(碇容疑者)。私は弁護士を雇ってる」などと言い、悪びれる様子はなかったという。

 「あの日、もっと強く言って、電気の止まった部屋から翔士郎ちゃんたちを連れ出していれば」-。女性は後悔し続けている。

 県警は携帯電話の通話履歴や口座の記録なども調べ、女性が事件に関与していないと断定している。捜査関係者によると、赤堀容疑者は碇容疑者に「ボスが怒るから話し掛けない方がいい」と指示し、女性と接触させないようにしていた。

 碇容疑者は関係者にこう話している。「ボスが怖かった。絶対的な存在でした」

(古川大二)

 

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“ベルト”着用なし…駅でベビーカーから乳児落ち頭の骨折る重傷 運んでいた駅員個人に刑事・民事両方の責任か

2021年03月07日 06時31分04秒 | 事件・事故

3/6(土) 12:06配信

関西テレビ

ベビーカーから乳児を落として大けがをさせてしまった今回の事故。誰にどんな責任があるのか?

 2月25日、滋賀県大津市のJR志賀駅で、ベビーカーから乳児が滑り落ちる事故がありました。

 この駅はエレベーターが無いため、乳児を連れた乗客の移動を駅員が手伝いに来ました。そして駅員が、乳児が乗ったままのベビーカーを持ち上げて階段を降りたところ、乳児が滑り落ち、命に別状はないものの頭の骨を折る重傷を負ってしまったのです。

 JR西日本の社内ルールでは駅員がベビーカーを持って階段を移動する時は、子供が乗っていない状態で運ぶように定められていました。

 ベビー用品メーカーは『乗ったまま』の持ち運びについて…。

コンビ 担当者:
「そのまま持つと持ち上げた時に外れて、お子さまが落ちてしまうような可能性が考えられます。必ずお子さまは抱っこした状態で、ベビーカーを持ち運ぶようにお願いしております」

 さらに落下した際、乳児にはベルトがつけられていませんでしたが、子育て世代からはその危険性について…。

30代女性:
「しっかり(ベルトを)つけて落ちないようにしている。すごく動く時期なのでベルトがないと危ないです」

 JR西日本は、「再発防止に努めてまいります」とコメントしています。

 ベビーカーから乳児を落として大けがをさせてしまった今回の事故。誰にどんな責任があるのでしょうか?菊地幸夫弁護士に伺います。

菊地弁護士:
「例えばこの赤ちゃんの治療費などの民事責任に関しては、担当した駅員さん、それから使用者である鉄道会社、JR西日本に責任があります。

 もう一つの刑事責任としては、駅員は過失傷害罪に問われる可能性があり、場合によっては業務上過失傷害ということになりうるかと思います。これは担当した駅員さん個人の責任ですけれども、こういう刑事責任も発生するという重大な事故なので気を付けて頂きたいです。

 ただ、もし示談というようなことで話がまとまれば、こういう大きなことにならないかもしれませんが、くれぐれもベルトをするとか発生防止に努めて頂きたいと思います」


(関西テレビ3月3日放送『報道ランナー』内「そこが聞きたい!菊地の法律ジャッジより)


「お前の夫の浮気調査費を“ボス”が立て替えている」福岡5歳児餓死 “虚言大女”が洗脳に使った女の名前

2021年03月07日 06時27分40秒 | 事件・事故

3/7(日) 6:12配信

文春オンライン

5歳児の母親である碇と、ママ友の赤堀。両容疑者は仲が良かった

「赤堀ユウナ、34歳です」福岡5歳児餓死 逮捕の“虚言大女”は周囲に偽名、10歳年齢詐称も  から続く

【画像】息子の異変に気づいた母親は真っ先に赤堀容疑者に電話した

 福岡県篠栗(ささぐり)町で5歳児が餓死した事件。3月2日に福岡県警が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕したのは、ママ友同士だった2人の容疑者だった。

 2020年4月18日に亡くなったのは、当時5歳だった碇翔士郎(しょうじろう)ちゃん。逮捕されたのは母親の碇利恵容疑者(39)と、ママ友の赤堀恵美子容疑者(48)だった。両容疑者は2019年8月頃から共謀して、翔士郎ちゃんの食事を減らすなど低栄養状態にして餓死させた疑いがある。

「ママ友らが悪口を言っている」「私は味方だ」
 警察の取り調べでは、赤堀容疑者が碇容疑者を精神的に支配し、多額の金銭を巻き上げていたことがわかっている。

 捜査関係者の証言。

「2人が知り合ったのは、2016年4月頃。同じ幼稚園のママ友同士としてだ。『ママ友らが悪口を言っている』『私は味方だ』などと赤堀が碇を疑心暗鬼にさせ、言葉巧みに洗脳し、周囲から孤立させていったと見られている。

「お前の夫が浮気している」で離婚にまで追い込んだ
 そして、2018年5月頃に赤堀が『他の保護者から碇の子供のトラブルのことで訴えられている。解決のためにはカネが必要。暴力団とつながりのある“ボス”がトラブルを解決する』などと架空のトラブルをでっちあげ、約50万円を碇から詐取した。

 その次は『碇の夫が浮気をしている』と嘘をつき、『浮気相手のキャバ嬢が妊娠した。キャバ嬢のバックにいる暴力団と交渉しているので慰謝料が必要』『お前の夫の浮気調査費用を“ボス”が立て替えている』『夫との離婚裁判で書面代が必要』などとありもしない話を次々に碇に信じ込ませ、カネを引っ張った揚げ句、ついには2019年5月に離婚に追い込んだ」

 そして赤堀は碇を精神的に追い詰め、食費を切り詰めさせた。

「『(裁判で)離婚の慰謝料を多く取るために生活が困窮していると見られた方が有利だ』などとして、2019年8月頃から3人の子供に対する食事制限を指示していました。死亡時の翔士郎ちゃんの体重は10キロ前後しかなく、体はやせ細り、あばら骨が浮き上がった状態でした。同年齢の平均体重の半分ほどだった」(社会部記者)

「監視カメラで“ボス”が見張っている」
 赤堀が“ボス”と呼んで恐れさせていたのは、実在するママ友。実際には無関係のママ友を、まるで暴力団に近い人物であるかのように説明していたという。

「食事制限中、赤堀は碇に対し、『監視カメラで“ボス”が見張っている』などとも言っていた。騙し取った金額は起訴されているだけで約200万円だが、そのカネというのも元々は碇が受け取っていた生活保護費や児童扶養手当などの毎月約20万円の収入。

 立件には至っていないが、県警は赤堀がそのほかにも碇の車を売却させたり、複数の消費者金融から借金させて、合計で1200万円ほど引っ張ったとみている。赤堀は碇から詐取したカネをパチンコなどの遊興費や家具や洋服の購入費にあてていたようだ」(前出・捜査関係者)

 食事制限を強要するようになってから約9カ月、痩せ細っていく翔士郎ちゃんに周囲も気付いていた。不審に思った幼稚園の関係者がたびたび碇の自宅を家庭訪問している。

「対人恐怖症だ」と訪問を拒絶
「碇の自宅に家庭訪問すると、なぜか赤堀が家にいて抗議して追い返した。2019年11月、翔士郎ちゃんが通う幼稚園や兄2人が通う学校からも、行政サイドへ問い合わせがあった。『子供たちの体重減少が気になるが、母親と連絡が取りにくくなっている』との情報を受け、町や児相などが碇の家庭を“見守り対象”にした。それでも(関係機関の)担当者が碇宅を訪ねると、赤堀が碇の代わりに対応し、『母親(碇)は対人恐怖症だ』などと言って、面会を拒否することもあった。

 週に数回パンなど食事を与えていたが、翔士郎ちゃんが亡くなる直前には碇本人も『食べるものがなく醤油を薄めて飲んだり味噌をなめていた』と供述している」(同前)

 こうした行政の動きに対し、2020年1月、赤堀は碇に指示し、翔士郎ちゃんを幼稚園から退園させた。

「その頃、地域住民から『虐待の疑いがある』との情報を得た福岡県警粕屋署が碇宅を訪問したが、子供らに虐待の形跡は認められなかった。一方で、2020年3月5日には児童相談所に『子供を残して外出するなど心理的虐待や育児放棄の疑いがある』と通告していた」(同前)

 20年3月には碇容疑者の親族が2度、児童相談所を訪れ、「子供と会えておらず、心配だ」として、安否確認を求めていた。だが、危険度が高いとは判断せず、家庭訪問をするなどの対応は取らなかったという。

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