3/13(土) 6:01配信
デイリー新潮
偽名で年齢を10歳以上サバ読みし
世間を震撼させた福岡の5歳の男の子・碇翔士郎君の餓死。福岡県警は、実母である碇利恵(39)と知人の赤堀恵美子(48)の両容疑者を保護責任者遺棄致死容疑で逮捕した。2人はママ友同士で、赤堀容疑者は碇母子の生活費や食事をすべて管理し、精神面でも完全に支配下に置いていたという。洗脳をいかにして可能にしたのか。その端緒と餓死までの理由と経緯について、赤堀容疑者が勝手に「ボス」と呼んで、洗脳の材料の一つとして利用していた保護者仲間がすべてを明かした。
【写真】小学校時代の赤堀容疑者 文集には「やさしい保母さんになりたい」
「赤堀は碇さんに対して、私が『ボス』だと話していたそうですが、そんなふうに呼ばれていたなんて全く知りませんでした。去年の10月くらいに突然警察が来て聴取をされ、その時にはじめて、赤堀が私の名前を利用して碇さんからお金を詐取していたと聞きました」
と憤りながら話すのは、両容疑者を知る保護者仲間の女性Aさん(48)だ。
「赤堀と知り合ったのは5年くらい前、たまたま近所のパチンコ屋で『ここ(玉が)全然出らんね』って話しかけられたのがきっかけでした。赤堀はサバサバした雰囲気で早口でまくしたてながら話す人でした。いつもママ友の輪の中にいて、子供の参観日には、赤堀と相当年齢差がありそうな、若くて綺麗なママ友とつるんでいて違和感がありました。赤堀は出会ったときから『赤堀ユウナ』だと名乗っていました。ユウナがユナときこえたので、私はずっとユナと呼んでいました。年齢は聞いたことがなかったけれど、あとで他のママ友から聞いたところでは、年齢も32歳だと偽っていたようです」
「お金はいらないから聖教新聞をとってくれ」
母親の碇利恵容疑者と知人の赤堀恵美子容疑者
赤堀容疑者と出会って1、2年くらいの時に、Aさんはこう告げられたという。
「『以前住んでいたマンションの支払いトラブルがあって、裁判沙汰になりそうだ』と相談されたことがあります。赤堀曰く、旦那の刺青が(マンションに)バレて強制退去になり、37万円くらい払わなければいけないと。私の知り合いを紹介してあげられるかもしれないと思ったのですが、いざ赤堀が持ってきた書類に目を通すと、『家賃滞納』という文字が見えました。それでこれは関わらないほうがいいと思い、自分の知り合いを紹介するのはやめました」
赤堀容疑者が創価学会員であることは既にお伝えしたが、そのことも打ち明けられていたという。ただ、そこにも「計算」があったようだ。
「赤堀本人から学会に入っていると聞きましたし、『お金はいらないから聖教新聞をとってくれ』と赤堀から頼まれたこともあります。結局1年くらい、お金も支払った上で聖教新聞をとりました」
Aさんは餓死した翔士郎君の母、碇容疑者とも面識があった。2人をつないだのは赤堀容疑者だった。
「碇さんは、私の子供が小学1年生の頃の参観日に、『私のママ友』と赤堀から紹介された覚えがあります。いつも赤堀の後ろに隠れて影が薄かったから、あんまり顔も覚えてないくらいです。正確な時期は忘れたのですが、ちょうど今くらいの寒い日の19時頃に、碇さんの家の近くの道端で赤堀に遭遇したことがありました。翔士郎君が亡くなる前のことです。赤堀は風呂上がりなのかタオルで髪を巻いて、片手に収まるくらいのタッパーにラップをかけたものを手にしていました。中にはおかずらしきものが入っていて、風呂上がりのせっけんの匂いとおかずの匂いが混じって気分が悪くなった」
「こんな時間に何しようと?」と尋ねると……。
「赤堀が『あのバカ、離婚して借金だらけで電気が止まった。生活保護もまだ入ってこん。だから差し入れ持っていきようと』と話していました。後日『(碇の)電気代うちが払ったんよ!』とすごい剣幕で言っていました。ほかのママ友には『(碇が)男にのぼせて金を持ってない。(碇さんが)ネグレクトしているから面倒みている』と赤堀は吹聴していたみたいです。私は当時、碇さんの近所に住んでいたので、『子供だけでもうちに来させたらいいよ』と赤堀に言ったのですが、『いやいや悪いから』と遠慮していました。今から考えたら、私に碇さんの子供たちを会わせたら、様子がおかしいことに気づかれてしまうと思ったのかもしれません。いつだったか赤堀から『(碇が)生活保護を受けるから幼稚園をやめなあかん』と聞いた気がするんやけど、うちの子は当時保育園やから、よく事情を知らなくて、そのおかしさはわかりませんでした。とにかく、碇さんはお金に困っているんだという認識だったんです」
水で米をふやかしていた
赤堀、碇の両容疑者はいつも一緒にいるというイメージだったが、一方でその関係性におかしさを感じた瞬間があったという。普通の「ママ友」とは明らかに違ったのだ。
「赤堀が碇さんを罵倒しているのを見かけてからです。朝9時か10時くらいに道端に赤堀と碇がいて、少し離れたところからでも、赤堀がものすごい剣幕で碇さんに怒鳴り散らしているのがきこえた。何を話していたかまでは聞こえなかったけれど、碇さんは手を前で重ねて、俯いていました。それをみて、ママ友というより上下関係があるのではないかと感じました。でもまさか、私を勝手に、ボスだと信じ込ませてお金まで詐取していたとは思わなかった。むしろ赤堀が碇さんの面倒を見てあげているんだと思っていました」
翔士郎君が亡くなったのは昨年4月。直後にもAさんは赤堀容疑者と話をしている。
「お通夜の日、たまたま電話で話したんです。赤堀は『碇は子供が亡くなったのに、まずうちに電話をかけてきた』と言っていました。そこで電話を替わった赤堀の旦那が『俺たちに電話をしとる場合じゃなかろうが。救急車呼ばんか』と怒った、と」
さらに赤堀容疑者は碇容疑者への批判を続けた。電話を受けて自分が碇宅に駆けつけたら、マンションの下で碇容疑者が待っていたことが許せなかったらしく、
「『あのくそ!!!』とものすごい剣幕で電話口で怒鳴っていました。あれも芝居だったと思うと腹が立って仕方ありません」
後日、Aさんは「翔士郎君が栄養失調で亡くなった、碇は捕まるのだろうか」と何度も電話で赤堀容疑者に聞かれたという。
「今から考えれば、赤堀自身が逮捕されることを恐れていたのでしょうね。私もなんで亡くなったんだろうとは思ったけれど、まさか赤堀に洗脳されてご飯が食べられない状況だとは気づけなかった。碇さんが生活保護を受給しているという話は赤堀から聞いていたし、知り合いづてで、碇さんが今の家に引っ越して2、3日くらいで隣戸に『1万円貸して欲しい』と頼みにいったという話も聞いたので、お金に困っているとは知っていたのですが……。当時赤堀から『碇の家は水道しか通ってない』とも聞きましたから。碇さんや子供達は少量のおかゆをわけあっていたと報道されていますが、お湯ではなくて水で米をふやかしていたんじゃないかなと思います」
給食費を払えないけど給食を求めて
「2019年頃、赤堀から『碇の自宅マンションで、騒音がうるさいと苦情がきている』と聞いたことがあります。その時は碇家に子供が3人いるから、子供の騒音だろうと思いましたが、実際には赤堀が碇さんを怒鳴っている声だったのかもしれません。2018年頃には一度だけ、ママ友のつながりで、碇家に私の子供が遊びに行かせてもらったことがありました。子供から聞いた話では、翔士郎君は他の子がテレビゲームをしているのをじっと見つめているようなおとなしい子だったそうです。だから、翔士郎君がいうことを聞かないからご飯を食べさせなかったというのは事実と違う気がするし、赤堀が目をつけていじめていたのではないかと私は推測しています」
実は、「碇容疑者の長男は小学校で給食費を払えないことがあった」と話す別の保護者もいる。
「担任の教師はクラスみんなの前で長男に対し、『給食費を持ってくるように』と言ったみたいです。食費は赤堀容疑者に抑えられ、家では水で薄めたおかゆをわけあう他ない。学校で給食費のことを言われてイヤな思いをしても、生き延びるためにがんばって学校に給食を食べに行っていたのかもしれません」
また、昨年末には、Aさんは赤堀を問い詰めたこともあった。赤堀が彼女をボスと呼んでお金を詐取していたと聞いたからだ。
無理やりでも連れ出さなかったことを後悔
「たまたまコインランドリーで会った時のことです。赤堀は、身振り手振りを交えながら悪びれる様子もなく『あいつ(碇)が勝手にそう言いよるだけ』と言い訳するだけでした。意外かもしれませんが、赤堀は完璧な母親にみえました。一度、用事があって赤堀の家の前まで言ったことがあるのですが、ちらっと見えた部屋の中は綺麗に整頓されていてテーブルの上も綺麗だった。子供たち全員に水泳、長女と次女にはバレエを習わせていると赤堀から聞いていたし、子供に着せている洋服もオーガニックっぽいナチュラルな雰囲気のお洒落着だった。本人はよくボーダーの服を着ていたかな。そういえば碇さんもよくボーダーの服を着ていました。赤堀は朝8時とかに会ってもバッチリ化粧をしていて、身なりはちゃんとした人なんだなとは思っていました」
碇容疑者の洗脳が解けたのは逮捕の1ヶ月前ごろ。その後から自殺願望がでてきたそうだ。
どうしてここまでの洗脳支配が進んだのか。
「ママ友からは、『幼稚園で孤立していた赤堀に明るい性格の碇さんが声をかけ、そこから付き合いが始まった』ときいています。一方、碇さんは、子煩悩な旦那さんと仲睦まじい夫婦として有名だったそうです。まだ若いのに立派な一軒家を持ち夫婦円満な碇さんをみて、赤堀は羨ましいと思ったんじゃないでしょうか。だから彼女をターゲットにしたんじゃないかと私は思っています。赤堀は、当時碇さんが一番仲良しだったママ友の悪口を碇さんに吹き込み、疎遠にさせたそうです」
最後に悔恨を込めてこう話す。
「赤堀に騙されて、それを見抜けなかったこと、そして赤堀のせいで碇さんが『ネグレクトしている母親』と思われていたことも本当に悔しい。なぜ、『電気が止まっている』と赤堀から聞いた時に、碇家に無理やり押しかけて子供たちを連れ出さなかったのかと後悔しています」
デイリー新潮取材班
2021年3月13日 掲載