ジャズ・ヴァイオリンの寺井尚子さんのコンサートを聞きに品川のステラ・ボールに行く。
彼女の音源はほとんど聞き尽くしたと言えるほど聞いてきたのだが、彼女のコンサートに行くのは今回が初めて。
正直、これほどいいとは思わなかった。
彼女のCDはこれまで雑誌でも何度も紹介したりしてきたので、個人的にも相当評価してきたつもりだったが、生の演奏の方がCDより百倍いいかもしれない。
まあ、百倍はオーバーにしても、彼女の演奏をひとことで言うと「カッコいい」。それにつきる。
コンサート後のパーティで彼女に実際に目の前でお会いした時には「小さい人!」と驚くほど小柄なのだが、彼女のステージ姿はやたら大きく見える。その一つの理由がヴァオリンの弓の使い方だろう。
彼女は一曲一曲弾き終わるたび「ミエを切る」ように「さあ、どうだ」とばかりにヴァイオリンの弓を高々と上にあげる。これがかなりキマっている。
それと演奏中の足の動きも魅力の一つ。同じヴァイオリンの川井郁子さんはどちらかというと表情の艶っぽさで魅せる人だが、寺井さんは演奏中の身体の動きでけっこう魅せてくれる人だと思った(一緒に行った私の弟子の女の子もこれを見て「私も参考にします」=研究して多いに参考にしなさい)。
それよりも何よりも寺井さんが尊敬に値するのは、ヴァイオリンという最もジャズをやりにくい楽器であえてジャズのスタイルを作っていること。閉演後レコード・メーカーの人にも言ったのだが、なぜ世界的に見てもジャズ・ヴァイオリニストと言われる人が少ないかほとんどの人は理解していない。ステファン・グラッペリというアメリカの有名なジャズ・ヴァイオリニストがいたが、寺井さんの演奏は完全にグラッペリの演奏を超えている。
ヴァイオリンという楽器は「こする楽器」。管楽器やピアノ、ギターとは違って「こする」という作業で音を出さなければならない弦楽器(ヴァイオリンもチェロも同じだが、ジャズのベースだけはほとんどピッチカートで音をはじくのでギターと同じ演奏原理)は、弦の上をこする「距離」と「時間」が絶対的に必要になってくる。だから、この「時間」と「ノリ」の時間が一致していればいいのだが、ヴァイオリンの弓が弦の上をこする作業とノリの作業を一致させるのはそんな簡単な作業ではない。私はヴァイオリンを演奏する人間ではないが、寺井さんがヴァイオリンという楽器でジャズのスタイルを作りあげようとする時の困難さとディレンマは容易に理解できる。
その楽器でこれだけの音楽を作り上げる寺井尚子さんという人間の音楽にさらに興味がわく。
彼女の演奏でクラシックも聞いてみたい。
パーティの最後にメーカーの知り合いにこんな提案をしてみた。
「寺井さんの演奏でヴィヴァルディの『四季』を聞いてみたいな」と。
それを聞いたメーカーの部長さん曰く「お金かかりそうだけど、考える余地はありそうですね」。
うん、これは私も真剣に考えてみてもいいかナ?
彼女の音源はほとんど聞き尽くしたと言えるほど聞いてきたのだが、彼女のコンサートに行くのは今回が初めて。
正直、これほどいいとは思わなかった。
彼女のCDはこれまで雑誌でも何度も紹介したりしてきたので、個人的にも相当評価してきたつもりだったが、生の演奏の方がCDより百倍いいかもしれない。
まあ、百倍はオーバーにしても、彼女の演奏をひとことで言うと「カッコいい」。それにつきる。
コンサート後のパーティで彼女に実際に目の前でお会いした時には「小さい人!」と驚くほど小柄なのだが、彼女のステージ姿はやたら大きく見える。その一つの理由がヴァオリンの弓の使い方だろう。
彼女は一曲一曲弾き終わるたび「ミエを切る」ように「さあ、どうだ」とばかりにヴァイオリンの弓を高々と上にあげる。これがかなりキマっている。
それと演奏中の足の動きも魅力の一つ。同じヴァイオリンの川井郁子さんはどちらかというと表情の艶っぽさで魅せる人だが、寺井さんは演奏中の身体の動きでけっこう魅せてくれる人だと思った(一緒に行った私の弟子の女の子もこれを見て「私も参考にします」=研究して多いに参考にしなさい)。
それよりも何よりも寺井さんが尊敬に値するのは、ヴァイオリンという最もジャズをやりにくい楽器であえてジャズのスタイルを作っていること。閉演後レコード・メーカーの人にも言ったのだが、なぜ世界的に見てもジャズ・ヴァイオリニストと言われる人が少ないかほとんどの人は理解していない。ステファン・グラッペリというアメリカの有名なジャズ・ヴァイオリニストがいたが、寺井さんの演奏は完全にグラッペリの演奏を超えている。
ヴァイオリンという楽器は「こする楽器」。管楽器やピアノ、ギターとは違って「こする」という作業で音を出さなければならない弦楽器(ヴァイオリンもチェロも同じだが、ジャズのベースだけはほとんどピッチカートで音をはじくのでギターと同じ演奏原理)は、弦の上をこする「距離」と「時間」が絶対的に必要になってくる。だから、この「時間」と「ノリ」の時間が一致していればいいのだが、ヴァイオリンの弓が弦の上をこする作業とノリの作業を一致させるのはそんな簡単な作業ではない。私はヴァイオリンを演奏する人間ではないが、寺井さんがヴァイオリンという楽器でジャズのスタイルを作りあげようとする時の困難さとディレンマは容易に理解できる。
その楽器でこれだけの音楽を作り上げる寺井尚子さんという人間の音楽にさらに興味がわく。
彼女の演奏でクラシックも聞いてみたい。
パーティの最後にメーカーの知り合いにこんな提案をしてみた。
「寺井さんの演奏でヴィヴァルディの『四季』を聞いてみたいな」と。
それを聞いたメーカーの部長さん曰く「お金かかりそうだけど、考える余地はありそうですね」。
うん、これは私も真剣に考えてみてもいいかナ?