今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)の「無想庵物語」から。
「この世は些事からなる。」
「私は大事より些事に興味がある。」
「座してくらえば山もむなしいという。」
「人みな飾って言う。」
「どんなに正直に書きたくても書けないことがある。」
「自分のことは書けないが人のことなら書ける。」
「ありのままを書くことは人間には出来ないのではないか。」
「純文学の作者の多くは本当のことを書きたがるがそんなことが可能だろうか。自伝の多くは自慢話である。」
「彼はこう思った、彼女はこう思ったと他人の気持を都合のいいように、また神のように書いては
ならぬという意見がある。田山花袋などの意見である。」
「告白と言い自伝と言うのも所詮は自慢話で、人はついに本当のことは言わぬもので、言おうとするのは出来ない相談だ。」
(山本夏彦著「無想庵物語」文藝春秋社刊 所収)