「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

BRAIN 脳 Long Good-bye 2021・12・25

2021-12-25 05:25:00 | Weblog


   今日の「 お気に入り 」は 、ノンフィクション作家 ビル・ブライソンさん の

 著書 " The Body ― A Guide for Occupants " からの 抜き書き 。

  ヒトを行動に駆りたてる「 情念 」、「 執念 」、「 情熱 」、 「 記憶 」、・・・ 。

  すべて 、脳 のうちにある 。玄妙な 器官 だなあ 、ほんと 。

  国産だけど 、部品の取り替えきかず 。年古れば 、バグるのもやむなしか 。
 
   " The great paradox of the brain is that
   everything you know about the world is provided to you by an organ
   that has itself never seen that world. The brain exists in silence and
   darkness, like a dungeoned prisoner. It has no pain receptors, literally
   no feelings. It has never felt warm sunshine or a soft breeze. To your
   brain, the world is just a stream of electrical pulses, like taps of Morse
   code. And out of this bare and neutral information it creates for you —
   quite literally creates ― a vibrant, three-dimensional, sensually engaging
   universe. Your brain is you.
   Everything else is just plumbing and scaffolding.
"  

    " ・・・ Your brain requires only about four hundred calories of energy a
    day ー about the same as you get in a blueberry muffin. Try running
    your laptop for twenty-four hours on a muffin and see how far you get.
     Unlike other parts of the body, the brain burns its four hundred calories
    at a steady rate no matter what you are doing. Hard thinking doesn't
    help you slim.
"

    " ・・・ nothing about your brain is distinctively human. We use exactly
    the same components — neurons, axons, ganglia, and so on — as a
    dog or a hamster.
"

    " ・・・ the brain manufactures all the components that make up our
    senses. It is a strange, nonintuitive fact of existence that photons of
    light have no color, sound waves no sound, olfactory molecules no
    odors. As James Le Fanu has put it, " While we have the overwhelming
    impression that the greenness of the trees and the blueness of the sky
    are streaming through our eyes as through an open window, yet the
    particles of the light impacting on the retina are colourless, just as the
    waves of sound impacting on the eardrum are silent and scent molecules
    have no smell. They are all invisible, weightless, subatomic particles
    of matter travelling through space. " All the richness of life is created
    inside your head. What you see is not what is but what your brain tells
    you it is, and that's not the same thing at all.
"

   " The upshot is that memory is not a fixed and permanent record, like a
    document in a filing cabinet. It is something much more hazy and mu-
    table. As Elizabeth Loftus told an interviewer in 2013, " It's a little more
    like a Wikipedia page. You can go in there and change it, and so can
    other people.
"

   ( 出典 :Bill Bryson 著 " The Body ― A Guide for Occupants " .
        Knopf Doubleday Publishing Group.
刊 )

  上掲の英語の文章は 、翻訳本の中で 、次のように 見事に 日本語訳されています 。

  プロのお仕事 。

  「 脳には重大なパラドックスがある 。世界について知っている
   すべてのことは 、世界を直接見たことのない器官によっても
   たらされている 。脳は 、地下牢に閉じ込められた囚人のよう
   に 、ひっそりとした暗がりに存在する 。脳自体には痛覚受容
   体はなく 、文字どおり無感覚だ 。温かい太陽の光も 、柔らか
   いそよ風もまったく感じていない 。脳にとって 、世界はモー
   ルス信号のトンツー音のような 、単なる電気パルスの流れだ 。
   そして 、その淡々としたおもしろみのない情報から 、あなた
   のために 、生き生きとして立体的で官能を刺激する宇宙をつく
   っている — そう 、文字どおりの意味で 、つくっている 。
   あなたの脳こそが 、あなただ
   その他すべては 、配管や足場にすぎない 。」

  「 脳は 、一日約四百キロカロリーのエネルギーしか必要としな
   い 。ブルーベリーマフィン一個でとれる程度のカロリーだ 。
   マフィン一個で二十四時間ノートパソコンを動かして 、どの
   くらい仕事がはかどるか考えてみるといい 。
    体の他の部分とは違って 、何をしていようと 、脳は一定の
   速度でその四百キロカロリーを消費する 。懸命に何かを考え
   ても瘦せるわけではない 。」

   「 ・・・ ヒトの脳には何ひとつ 、独自の特徴はない 。犬や
    ハムスターとまったく同じ構成要素 ― ニューロン 、軸索 、
    神経節 、その他 — を使っている 。」

   「 ・・・ 脳は五感を形成するすべての要素をつくり上げてい
    る 。光の粒子である光子に色がなく 、音波に音がなく 、
    匂いの分子に匂いがないというのは 、奇妙でにわかには
    信じがたいが 、厳然たる真実だ 。イギリスの医師で作家
    のジェームズ・レ・ファニュは 、こう語った 。『 わたし
    たちは 、木々の緑や空の青さが 、あいた窓から流れ込む
    かのごとく目から入ってくることにたとえようのない感銘
    を受けるわけだが 、実際には 、網膜に衝突する光の粒子
    は無色で 、同じく鼓膜に衝突する音波は無音 、匂いの分
    子は無臭だ 。それらはみんな 、目に見えず重さもない 、
    空間を移動する原子より小さい粒子なのだ 』 。人生の豊
    かさはすべて 、頭の中でつくられる 。見えているものは
    実際の姿でなく 、そういう姿だと脳が教えているもので
    あり 、ふたつはまったく別のものだ
。」

   「 要するに 、記憶はファイリング・キャビネットに収めた
    書類のように固定された永久の記録ではない 。もっとず
    っと漠然としていて 、移ろいやすいものなのだ 。エリザ
    ベス・ロフタスは 、2013年のインタビューでこう語
    った 。『 少しウィキペディアのページに似ています 。
    あなたはそこに入っていって書き換えることができるし 、
    ほかの人も同じように書き換えられます 。』 」
         
   ( 出典 : ビル・ブライソン著 桐谷知未訳 「 人体大全 ― なぜ生まれ 、
         死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか ― 」新潮社 刊 ) 






                             
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