今日の「お気に入り」は 、池上彰・ 佐藤優共著「 真説 日本左翼史 戦後左派の源流
1945-1960」. からの抜き書き 。
「 佐藤 ・・・『 週刊 新潮 』の2020年新年号の企画で読売新聞社の渡邉恒雄主筆
と対談した際に面白い話を聞きました 。
よく知られているように 、渡邉氏は若い頃 、東京帝大文学部哲学科の学生
だった時に陸軍二等兵として徴兵され 、敗戦後は共産党に入党して東大学
生細胞( 支部 )のメンバーとして活動していた人です 。私との対談でも
当然その話題になったのですが 、そのとき渡邉さんは 、自分が共産党を
離れなければいけなくなった理由として『 倫理の欠如 』を挙げていました 。
〈 渡邉 戦争が終わって 、昭和20年末に共産党本部に入党届を持って行った 。
そうしたら地下にあったビラに『 党員は軍隊的鉄の規律を厳守せよ 』と
書いてあった 。
何だこれ 、ここも軍隊じゃないかと思ったね 。入党届を出してしまっ
たからすぐ には脱党できない 。だから一年半くらい党にいて 、共産党
東大細胞の中で『 主体性運動 』を起こした 。 マルクスやレーニンの本
のどこを読んでも、人格的価値 、道徳的価値が出てこない 。マルクス・
レーニン主義には 、倫理的価値が位置づけされていないんだよ 。それは
おかしいんじゃないか 、ということだね 。〉
〈 僕は片足は共産党にかけながら 、もう片足はカントなんだ 。共産党東大
細胞による『 東大新人会 』を作って 、社会主義学生運動の中にカント的
人格主義を持ちこんだ 。当時 、フォアレンダーというドイツの哲学者の
『 カントとマルクス 』という本が出て 、それを読みふけった 。やっぱり
同じ疑問を持っている人がいるもんだと思ったね 。
でもカントとマルクスの融合は無理なんだよ 。だからやっぱり共産党を
出なきゃダメだと思った 。まあ一年ほど 、そういうことを書きまくって
活動したから 、除名だよ 。共産党東大細胞は解散させられ 、僕は本富士
警察署のスパイということにされてしまった 。〉
渡邉さんは『 カントとマルクスの融合は無理 』と言っていましたが 、カント
の認識論や倫理学によって 、マルクス主義を補完しようとする新カント派マル
クス主義の一派も存在します 。ただ若い頃の渡邉さんが気づいた『 マルクス
主義が人格的価値を重視していない 』というのはさすがに鋭い指摘で 、だか
らこそ共産党や後に述べることになる新左翼は往々にして『 目的が手段を浄
化する 』という発想にとらわれ 、暴発してきました 。
池上 軍事教練で上官から意味もなく殴られる軍隊での生活にうんざりして共産党に
入ったのに 、入党してすぐ『 党員は軍隊的鉄の規律を厳守せよ 』というビラを
見せられた時点で相当に幻滅もしていたのですね 。 」
( 出典 : 池上彰・佐藤優共著.「 真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960 」講談社刊 )
二月もはや半ばすぎ 、庭の河津桜がほころび始めた今日この頃 。
いきはよいよい 、かえりがこわい 、こわいながらも 、命は惜しい 、
・・・ ワクチン接種にまいります (^^♪ 。