高知発 NPO法人 土といのち

1977年7月に高知県でうまれた「高知土と生命(いのち)を守る会」を母体にした、47年の歴史をもつ共同購入の会です。

四月馬鹿(エイプリルフール)のことなど ~4月巻頭言

2015-04-01 09:00:00 | 土といのちからのお知らせ
理事長 丸井一郎です。

 ドイツやイギリスなどアルプスの北では、
4月はまだ安心できない月です。
「4月はやりたい放題にする」というフレーズや
「4月はこの上なく残酷な月」という
有名な詩句もあります。
気温が20度になるかと思えば、
零度に下がり、大雪に閉じ込められたりもします。
もうすぐそこまで来ているはずの春
(と同時に来る初夏)を待ち望む気持ちが察せられます。

 四月馬鹿の風習は近年日本でも知られるようになりました。
その日のことを英語ではAllfools Day、
人をからかってだますことを
making an April foolと言います。
同じ西ゲルマン語のドイツ語もほぼ同じです。
(フランス・イタリア語では「4月の魚」)

 その起源について、キリスト教との関連や
古代ローマの風習など諸説ありますが、
インド・ヨーロッパ語族に共通の
春の風習との関連が妥当だとされています。
ここでは、筆者が学生時代に
ドイツ人の先生から聞いた話しを元にして紹介します。
あくまで「お話し」です。

 中欧・北欧の冬は、
シベリアほどではないが、厳しいものです。
(筆者は1月のベルリンで零下21度を体験したことがある。)
前年の11月に、蓄えた飼料の分量を見計らって、
家畜の一部を殺して
様々な形(燻製、塩漬けなど)で保存し、
それを糧にしつつ、
残した動物と同じ屋根の下で冬を過ごします。
「狼が狼を食べるほど寒い冬」
という童謡の歌詞もあるほどです。

 一刻も早く冬に別れを告げたい気持ちを表すのに、
冬を人になぞらえて馬鹿にする、
という方法があります。
実は、カーニバル(謝肉祭)にも
ここで見るような側面があり、
アルプス地方では、追い出しに
クランプスという化け物を動員します。

 4月になって弱り始めた(はずの)
冬をからかってやれば、早く去ってくれるのではないか、
という切実な願いがこの風習の背後にあったようです。
これとイースターエッグが関係しているのです。
この卵を絵で飾ったりする風習にも
様々な起源の推測があり、
太陽の象徴とかキリスト教(復活祭)との関連も言われます。
が、筆者が聞いたり調べたところで
一番(これも)切実な話は、以下のようなものです。

 冬の蓄えが底をついて何か滋養になる
食べものを探さなければならなくなります。
そこへ渡り鳥がやって来て、水
辺などに卵を産むとこれが最後の頼みの綱になる。
そこで血眼で探し回った、
とのことです。
遊びではなかったんですね。
(冬の終わりの飢餓は復活祭前の断食とも関連あり。)

 やっと4月が終わり、5月になるともう安心です。
今年の冬も死なずに乗り切った、
ということを喜び合う祭りになります。
4月30日と5月1日には多数の風習が見られます。

 有名なところでは、聖ワルブルガ
(ワルプルギスとも:8世紀のイギリスの尼僧院長)の祭りや
「魔女の夜」などがあり、それらが混同されてもいます。
1日はメイデイ(マイフェスト:五月祭)で
メイポール(マイバウム:古い樹木信仰と関連あり)を立てて
その周りで踊り祝います(前日から立てることもある)。
ライン地方などでは、何千(多いところは2万)個もの
卵で作った卵の王冠を飾ります。

 もとは現代のような労働者の祭典ではなく、
はじけるような春(=夏)の命の祭りだったのです。
古くは農奴達が領主から新しい衣服を支給され、
小川で水浴びもできる爽快な季節として歌われました。
また五月の女王が選ばれ、
若者がいたずらを働くことも大目に見られたようです。

 ドイツのミンネゼンガーの春(=夏)の歌
(「五月、君の顔は輝き小鳥は歌う」)や
イギリスの古謡(カノン)の「夏が来た、歌えカッコウ」など
音楽の分野でも様々な伝承があります。
ドイツ民謡には
「この庭園で楽しくやっている人達、早く帰らないともう陽が昇るよ、と庭番が叫ぶ」
などというアダルトな歌詞もあります。

 厳しい環境に適応して
たくましく生きる人々の暮らしの一端です。
その土地にその暮らしとその食べ物ということです。
乏しい麦類とそれを補う動物の脂肪が
彼らの食の基本です(粗放な畑作と牧畜)。
伝統的に多量の植物食と魚食を中心とする
日本列島の住民がうらやむべきものでも、
また真似できるものでもありません(体にいいはずがない)。

 固有の環境に適合し持続できる
食のあり方・暮らしのあり方が問われています。
(ただし環境自体が放射能などで永続的に破壊されなければ。) 
コメント
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