仮名手本胸之鏡 上 4 二丁裏 三丁表
早稲田大学所蔵
https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01505/
仮名手本胸之鏡 上
山東京伝 作
歌川豊国 画
早稲田大学デジタル図書
通油町(江戸) [蔦屋重三郎]
寛政11 [1799]
黄表紙
仮名手本胸之鏡 上 4 二丁裏 三丁表
二丁裏上
いうほどはらのたつことにても
とくとあとさきをかんべんし
こゝろときハたいていの
なるものなり、はら
のたつまゝにふんべつ
もなく、ことをはる
らへバ、のちにうならず、
くやむことあり、
二丁裏下
「たちへバはらのたつときハ、わがむねのうちより短(たん)
鬼(き)といふ おに あらわれいでゝ、わるさをかいせんと
す、そのとき けたいのうちに ちうぎな
るものありて、むねのう
ちより 正気(しようき)
大人(たいじん)
といふ
ひろき
こゝろをいだし
りやうけんして
いふけんをもち
て、かの短気(たんき)
をおひ
しり
ぞ
く
しる
ものな
くんば
はなはだ
あやう
き
なり
三丁表
「それハ大きな
たんきたるむらざや、
人のあたまをうたじ
つくしとハ
あやまり/\
二丁裏上 画 立つ男と座る男
正気(しようき)
大心(たいしん)
短鬼(たんき)
三丁表
短気之鏡(たんきのかゞみ)
たんきなる人、けらいの
よきりやうけんにて
あやふきをのがるゝ事
此かゞみにうつす、きやう
けんのごとし、たんきハ
そんきといふ事、ちがい
なし
仮名手本胸之鏡 上 4 二丁裏 三丁表
二丁裏上
言う程 腹の立つ事にても
とくと後先を勘弁し
心時は大抵の
成るもの也、 腹
の立つままに分別
も無く、事をはる
らえば、後に唸らず、
悔やむ事有り、
二丁裏下
「例えば腹の立つ時は、我が胸の内より短気(短鬼たんき)
と云う鬼 現れ出で、悪さをかいせんと
す、その時 懈怠の内に 忠義な
る物有りて、胸の内
より 正気(しようき)
大人(たいじん)
と云う
広き
心を出だし
了見して
有権を持ち
て、かの短気(たんき)
を追い、
尻
退
く、
知る
物 無
くんば、
甚だ
危う
き
也
三丁表
「それは大きな
短気たる むら鞘、
人の頭を打タジ、
尽くしとは
あやまり/\
二丁裏上 画 立つ男と座る男
正気(しようき)
大心(たいしん)
短鬼(たんき)
三丁表
短気之鏡(たんきのかゞみ)
短気なる人、家来の
良き了見にて
危うきを逃るる事
此鏡に写す 鏡
剣の如し、短気は
損気と云う事、違い
無し
短鬼(たんき)
短気
けたい 懈怠懈怠
-
1 《近世ごろまでは「けだい」》なまけること。おこたること。怠惰。「懈怠の心が生じる」
-
2 仏語。善行を修めるのに積極的でない心の状態。精進 (しょうじん) に対していう。
ちうぎ
忠義
りやうけん
了見