乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 40  十八丁裏 十九丁表 十九丁裏と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

2020-09-05 | 在原業平、そして、伊勢物語 と、仮名草子 仁勢物語





富田高至 編者

恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 40  十八丁裏 十九丁表 十九丁裏と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年





39 十八丁裏 十九丁表 十九丁裏

 

十八丁裏

◯をかしわかき男藝にもならぬ相撲を

 

十九丁表

とりけり、うれしかる、親にて触とるとおもひて此子を

外にてとらせんとすさよういへ、いまたとらさす独子

なれハあまやかしけれは、とるにいきほひなし、此子

やみあかりなりけれハ、相撲のちからなし、さる間に

相手ハいつくまさりにまさる、俄に親の子をつれて

行、この子、縮緬の褌(タンナ)をして、とだつよし、臨して出て

とりぬ此子なよ/\とよめる、

   出てとらハ たれかわれにハ かたさからん

   ありしちからも とるハかなしも

とよみてなけられにける親ありてにけるよく

とると思るてこそとらせしか、いとかくもなげゝら

しとおもふに、真実に施入にけれハ、片屋にて願たん

 

十九丁裏

けり、とるの入相はかりに㝃いりて、又の日のいぬの時

はかりになん、養生していき出たりけるむかしの阿房ハ

さる相撲をなんとりける、今の各ゝまさに仕るんや

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊     

   出てとらハ たれかわれにハ かたからん

   ありしちからも とるハかなしも


『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す

   出でていなば 誰か別(れ)の難(かた)からん

   ありしにまさる 今日(けふ)はかなしも

 

独子

 〘名〙 「ひとりご(一人子)」の変化した語。

 ※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「ひとり子(ッコ)と云ものは兎角あまやかすから役に立たねへ」
 
独子〘名〙
 
 ① 兄弟姉妹のいない、ただひとりの子。ひとりっこ。
 ※万葉(8C後)六・一〇〇七「言問はぬ木すら妹(いも)と兄(せ)ありといふをただ独子(ひとりご)にあるが苦しさ」
 
 ② 神のただひとりの子。キリスト教で、イエス‐キリストをさす。
 ※どちりなきりしたん(一六〇〇年版)(1600)一「御おやデウスのまことの御ひとり子(ゴ)にてましませば也」
 
 
やみあかり
 
 病み上がり
 
 
縮緬 (ちりめん)
 
 縮 (シュク・ちぢむ・ちぢまる・ちぢめる・ちぢれる・ちぢらす)
 
(しわをよせて)小さくする。形のつりあいを変えずに小さくする。小さくなる。ちぢむ。ちぢめる。ちぢまる。
 
 
褌(タンナ) →褌(ふんどし)
 
 縮弥の褌(タンナ)  
 
 ちりめんのふんどし
 
 
施入(せにゅう)
 
 布施の物を贈ること。 施しをすること。 また、その物。
 
 
 
 
 
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恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 39 十八丁表 十八丁裏と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

2020-09-05 | 在原業平、そして、伊勢物語 と、仮名草子 仁勢物語





富田高至 編者

恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 39 十八丁表 十八丁裏、

和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年




3 36-39
39 十八丁表 十八丁裏

十八丁表

◯をかし斎院のなにかしと云、侍ありける、その侍の

和子鷹、いとすきにて、いつも狩しけり、その和子(わこ)

呼給ふて、御料理の夜、その家の隣なりける男、

御料理にせんと大蟹車、海老を相もちて出たり

けり、京久しく烹て出したべまいらすうち

くひて帰ぬへひかりける間に、天野酒の癖のよき

を檜木の小樽に入て、客これも物くふに、此車

海老を姫胡桃と見てよりきてかぐになす

十八丁裏

くさき男の酒をとりて、車海老、残はふし

飲たりけるをくらかりなりける人、この小樽のとも

しくやみやらん、ともし火けるなんとするにのめる

男のよめる

   飲あけハ 限なるべし ともしげに

   樽のにこにて なる旨をきけ

かの居たる客かへし

   いとおそく なるにきこゆる 類ともしけに

   みゆるものとも われかしらする

天野酒の酒、このみの歌にてハ難になりける、

小樽ハしぶ柿のおほき御なり、和子ほいなし



『仁勢物語』和泉書院影印業刊     

   飲あけハ 限なるべし ともしげに

   樽のにこにて なる旨をきけ


『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す

   出でていなば 限りなるべに ともし消ち

   年へぬるかと 泣く声を聞け



『仁勢物語』和泉書院影印業刊     

   いとおそく なるにきこゆる ともしけに

   みゆるものとも われかしらする


『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す

   いとあはれ 泣くぞ聞ゆる ともし消ち

   聞ゆるものとも 我は知らずな

  

烹て (こいて  「にて」(意味は、煮て)が、正しい)

 烹

 にる。食材をやわらかくにる。

 

姫胡桃 (ひめくるみ)    (日本国語大辞典)

〘名〙 オニグルミの変種で本州中部以北で栽植される。全体に小さい。
   果実は扁平で表面にしわが少なく、頂端は鋭くとがり、砕けやすい。
   おたふくぐるみ。めぐるみ。《季・秋》
 ※新撰六帖(1244頃)六「夏山のしけみかくれのひめくるみかねて見まくのかたきこひ哉〈藤原信実〉」
 
 

和子ほいなし

 和子(わこ)おいなし→和子(わこ)老いなし

   をかし斎院のなにかしと云、侍ありける、その侍の

   和子鷹、いとすきにて、いつも狩しけり、その和子(わこ)

   呼給ふて 云々

 和子(わこ)は鷹。狩の時、斎院のなにがしと云う侍がこの鷹を愛し、狩の時にはいつも連れて行った。その鷹が年老いた。

 

 

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