恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 51 二十三丁裏と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9
富田高至 編者
和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年
下 51 二十三丁裏
二十三丁裏
◯をかし男、人の先約ある女をむかへて
よひしうへハ 科なき時や去らざらん
鼻さへそける めさへたたれめ
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
よひしうへハ 科なき時や去らざらん
鼻さへそける めさへたたれめ
『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す
植ゑし植ゑば 秋なき時や咲かざらん
花こそちらね 根こそ枯れめや
よひしうへハ
呼びし上は
科なき時や去らざらん (岩波古典文学大系 『仁勢物語』頭注)
不義の科の無い時は離婚しないだろうが、お前はきっと不義をして、去って行くだろう。
離婚の時は、不義の刑罰として、鼻まで削ぎ、なた、悲しみの涙で、目までただれるであろう。
不義〘名〙
① (形動) 義にそむくこと。人の道にはずれること。
また、その行ないや、そのさま。
※続日本紀‐天平勝宝九年(757)七月戊午「右大臣豊成者、事レ君不忠。為レ臣不義」
※仮名草子・身の鏡(1659)下「たとひ不義(フギ)なる事を云共、〈略〉わけを云ていさむべし」 〔易経‐繋辞下〕
② 十悪または八虐の一つ。
主人、長官、師を殺すなどの不法行為に科される古代刑法の罪名。〔律(718)〕
③ 男女の道にはずれた関係。みそかごと。姦通。密通。
※仮名草子・智恵鑑(1660)九「后(きさき)よりめさるるとてよびよせ。不義をおこなひ給へ共」
鼻さへそける めさへたたれめ
鼻さえ削げる、目さえ爛(ただ)れ目