がじゅまるの樹の下で。

*琉球歴女による、琉球の歴史文化を楽しむブログ*

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経営者、阿麻和利

2012年12月23日 | ・和心な本、琉球な本

(昨日の翔べ!尚巴志レビューは前記事にて)

 

 先週読了した本。

「沖縄の星 悲劇の英雄 阿麻和利加那」
(増田信一著/リブリオ出版/1985)

以前パラ見はしたことあったけどちゃんと読みました。

高学年からの児童書に分類されると思いますが
なかなかの文章量でした(全267ページ)。

阿麻和利が題材の物語はいくつか読んできましたが
この本で描かれている阿麻和利を一言で言うとすると

経営者、阿麻和利

です。

最初の4分の1が屋良での幼少時代、

4分の2が勝連に移り住んで地域興しをしていく様子、

ラスト4分の1が勝連按司になってから死ぬまで。

つまり「勝連按司・阿麻和利」になるまでの
「加那」に趣を置いた物語になっていました。

 

幼少時代に懐機に会ってたり、
懐機の師匠である張老人に師事したり、
屋良の人々のために色々と尽くしたりと、

病弱で悲惨な屋良子ども時代
という感じではなかったですね。

友達にも恵まれてるし…。

 

「国王の立場で考えるか、按司の立場で考えるか、領民の立場で考えるか、
それぞれの立場によって考え方は変わってくるのです。
加那様は、どの立場で考えようとされていますか」

(57- 張老人(懐機の師))

 

この小説のテーマはまさにこの一言に集約されているように思えました。

立場が変われば見方や考え方も変わる。

実際、沖縄出身ではない作者が阿麻和利を題材に物語を書こうと思ったのも
阿麻和利に対する評価の二面性が興味をひいたからだそうで。

このこだわりは阿麻和利自身だけでなく
茂知附按司や倭寇、金丸(松金)、尚巴志王、尚泰久王、護佐丸などにも
展開されていましたよ。

 

「わしが城主になってからの40年間に、わしがやってきたことを次々と思い出してみた。

わしだって、領民どもの年貢を軽くしてやりたいという気持ちがないわけではないが、
首里からの取り立てが厳しくなる一方なので、
どうしても年貢の数を増やすしかなかったのだ。

首里だって、北山征伐をし、大きな道路を国中に造り、
国家の体制を整えるためには、
勝連に対する年貢の取り立てを軽くしてくれる望みはない。

そうかといって、首里に逆らったらつぶされてしまうに決まっている。

わしの考えは、いくら考えてもここでとまってしまうのじゃ。」

(190- 茂知附按司) 

 

茂知附按司の最期のセリフ。

政治を怠り酒浸りの悪評高い茂知附按司が単純な「悪」ではなく、
按司として立場ゆえの苦悩や弱音を加那に漏らすシーン。

物語のラスト1ページも唸ったね。

惜しいのはこのようになかなか設定は面白いのに
小説としては展開が割と淡々としちゃってること。

描きようによってはもっと面白くドラマチックになりそうなのに、
結構みんなあっさりと消えて行ったのが残念。

う~ん、それとも児童書だからこんなものなのかなぁ?

 

でもゼロから村おこしをしていく経営者(リーダー)としての阿麻和利は
なかなか興味深かったです。

この部分がこの物語のメインでもあるし。

チームを作るとか、ミーティングのシステムとか、
目的の共有や規則、休暇や情報収集法など、
子供向けのリーダー論の物語としても読めるかも?

ドラッガー的な(笑)

 

*おまけ*

加那は松金(金丸)とも旧知の仲で(ちなみに同じ年頃)
百十踏揚の嫁入りは泰久がまだ越来王子の時という設定。

「加那殿、泰久様はお主が勝連城主になられたのを祝って、
大きな引出物をくださるそうですよ。
それがなんだか当てられますか。
とてもすばらしい贈り物なのですよ」

(207- 松金(金丸))

 

百十踏揚を引出物よばわりとはけしからん(`ε´)

 


ちなみに黒幕は尚泰久、金丸に加えて玉城大親。
やっぱ「百十踏揚」に勝るのはないな。


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翔べ!尚巴志2012年度公演

2012年12月23日 | ・現代版組踊レポ

 

「翔べ!尚巴志」

2012年12月22日

大里農村環境改善センター


 

10月の中間成果報告会を見せてもらってからの
「本公演」でした。

勝手に琉球浪漫シアターみたく
1時間ちょっとくらいの舞台と思ってたんですが
(前回がそれくらいだったから)
なんと、二幕二時間のフル公演でした(!)

前回「お休み」していたきよらや攀安知等のキャストも復活!

どうしても色々と制限があった分(舞台設備とかね)
今回ならではの創意工夫やチャンレンジもたくさん見られた舞台でした!


 

≪平田之子と屋比久之子の二人≫

まず、今回はこれ見れただけでも満足ッス
(身内贔屓ですが(笑))

屋比久之子は前回から引き続きでしたが今回は平田之子まで。

よりによってこの二人がこの二人を演じるなんて。
二人並んでこんな立派な姿を見れる日が来るなんて。

オカアサン、ウレシイ(感涙

「父さんは何も悪くないんだ!」

の初セリフから2年?

身長も伸びて、声も逞しくなって、
あれだけのたくさんのセリフもしっかりこなしてたし
演技もこんなにうまくなって…

嬉しくって涙出そうなったよ。

(当時からベテランの風格だった同じく身内のRさんとは違って
この二人はホントに見た目も内面もちびっこのひよっこだったので
若干ヒヤヒヤがあった分、成長の驚きと喜びも大きいのです(笑))

これからがホントに楽しみな二人です。

なので“これから(数年)”のためにも、
“これから(数ケ月)”はちょっと踏ん張らないとね!

健闘を祈る!!

というわけで、今回は尚巴志様を差し置いて
この二人のイラストにしました
兄弟のよう…(笑)

(ところで二人はちゃんと平田之子と屋比久之子のお墓参りはしたかな~?地元だぞー( ̄ω ̄)ノ)

 

≪護佐丸27歳≫

さて、今回は鮫退治のシーンなどカットもありましたが
その分、商人、懐機をキャストとして追加、
そんでもって護佐丸をこれまでよりも前に出した新構成も特記事項でしょうか☆

きゃ~護佐丸~~~

って感じでした(笑)

幻のあの衣装も2年ぶりの復活だったし(笑)

尚巴志との身長差も何気にツボでした
(↑マニアック)

今回オリジナルで追加になっててた
護佐丸と尚巴志の対話のシーンが良かったです。

「なぜこのような無茶をなさりなさるのです」

「はは、本部殿にも同じようなことを言われたよ」

護佐丸と尚巴志の、より近い関係が感じられたし
よって護佐丸がよりたってたかな

前までの作戦会議での云々よりもこっちのほうが好みです

しかもこのシーン、月夜の、静かな波音の聞こえる海辺、

たそがれる尚巴志に歩み寄る護佐丸。

 

そして流れる「月の船」

 

ゴメン、ロマンチックすぎて笑った…(笑)

 

ワタシにとって「月の船」は現代版組踊シリーズの
ベストオブ愛のテーマなので。
(「灯火」よりもコレ!)


しかも切な系。

(北山三角関係の時の乙樽のテーマと、こだわりの「月下に語る」)

 

護佐丸と尚巴志のふたりきりの時に
この曲が流れるとは思わなんだ…。

だって尚巴志の舞台ではこの楽曲使用なかったしね…。

途中できよらと尚巴志のシーン移行した時は内心ほっとしました(笑)
(尚巴志早くきよら呼べきよら!って念じてたワタシ(笑))

 

≪復活☆北山戦≫

今回復活した北山戦のシーン。

2週間前に「北山の風」見たばっかりだったから
なんだか不思議な気分でした(笑)

でもその分尚巴志との密談のシーンは
本部のセリフをいつになく注意して聞いてみたよ。
(この両方を初見で見た人の感想が知りたいな

攀安知も本部もダークヒーローでかっこよかった!

やっぱいいねぇ~

攀安知役をやると演者さんの印象がガラリと変わるね!

体格も華奢な方だからなおさら意外性が。

でもあの目力は健在

予想してなかったキャスティングでしたが似合ってるかも!

実際の「戦」のシーンでは
舞台が小さめのため暴れるには狭そうだったけど
でもその分次々と役者が出てきて口上を述べるシーンでは
間が詰まってスピード感があって良かったです

 

≪尚巴志ときよら≫

今回尚巴志で印象的だったのは
先述した護佐丸との対話シーン。

そしてきよらとの対話シーン。

天命に従って決起したものの

「己の心に驕りや慢心はなかったか」

と苦悩をちらりと見せた所がグッときた。
(彼女はああいう類のセリフ回しがとってもウマい

三山統一という偉業には
多くの犠牲が伴ったのは事実。

特に北山戦は中山軍も多くの犠牲を出してますしね。

そういう多くの血の流したということは
これまではアカインコ君(ストーリーテーラー)がチラリと触れていましたが
今回はそれをとりあげてきよらとの対話に入れてたのは
とても印象的でした。

その尚巴志の迷いに対するきよらの返答も良かった。

あなたが良しと思ったことをまっすぐに貫き続ける、
その姿を見せることに意味がある

という感じだったかな。

こういう苦悩とか迷いとか弱音とか
そういう人間的な弱い部分がちらりと見えると
主人公としてとても魅力的に映ります。

単純さわやかヒーローじゃない
人間誰もが持っているちょっとした影の部分。

そんな感じできよらの存在意義もけっこう立ってましたが
きよらのアカペラなくなってたのはちょい残念。

「きよらの唄が聞こえる…」

あのアカペラがあればもっと深くなったと思うし
笛の生演奏もメロディーリンクしてもっと良かった思いました☆

マニアックポイントで言えば、
国頭サバクイの時に尚巴志がすぅ~で作業に混ざろうとして
護佐丸に「いやいやここは我々だけで…」とされてる所が和みました(笑)
農業を一緒に手伝ってた頃の癖っぽくて良かったです

庶民派尚巴志様アピール。

 

≪新キャラ☆商人からの…≫

尚巴志が刀と鉄を交換しし農機具を作って分け与えたという逸話を
今回初めてキャラとの対話で紹介してました。

人をその気にさせる尚巴志の人柄、不思議な魅力。

それをカリスマ性と言います。

ふむふむ。
鍛冶屋に引き続き商人でも似たようなセリフを入れたことで
尚巴志のカリスマ性についてのアピールは強くなってましたね☆

今回鮫退治のシーンはありませんでしたが
個人的にはそれゆえの物足りなさは感じなかったですよ

むしろこの商人とのシーンと、
その後の農業とのシーンをもっと広げていってもいいくらい

マミドーマの演舞やっぱりイイな~

大地の踊り(マーケット)は生演奏・生歌じゃなかった分
ちょっと難しかった部分もあったかな…?
マミドーマと違って唄がないから
尚巴志とかのセリフか何かを入れられれば中盤の間延び間は押さえられたかも?

まだまだいろいろ出来そうですね、尚巴志の舞台


↑名前出してくれてどうもありがとう

今回この公演をやるまでに色々あったであろうことは
最後の尚巴志や父母代表の挨拶でもそうですが
パンフレットの後ろの「Special Thanks」一覧でも
垣間見ることができましたよ。

とにもかくにも、
今回このように尚巴志の舞台を続けてつなげてくれたことに
ファンとして感謝です。

メンバーさん、父母の会のみなさん、OB/OGのみなさん、
関係者のみなさん本当にありがとうございました。

 

まだまだ可能性のある尚巴志の舞台。

これからも応援しています

 

そして今回惜しまれつつも卒業となった二人のメンバーさん
これからの人生に幸多かれと!

 


今日もご訪問ありがとうございます。
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101~。

コメント (2)
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