(昨日の翔べ!尚巴志レビューは前記事にて)
先週読了した本。
「沖縄の星 悲劇の英雄 阿麻和利加那」
(増田信一著/リブリオ出版/1985)
以前パラ見はしたことあったけどちゃんと読みました。
高学年からの児童書に分類されると思いますが
なかなかの文章量でした(全267ページ)。
阿麻和利が題材の物語はいくつか読んできましたが
この本で描かれている阿麻和利を一言で言うとすると
経営者、阿麻和利
です。
最初の4分の1が屋良での幼少時代、
4分の2が勝連に移り住んで地域興しをしていく様子、
ラスト4分の1が勝連按司になってから死ぬまで。
つまり「勝連按司・阿麻和利」になるまでの
「加那」に趣を置いた物語になっていました。
幼少時代に懐機に会ってたり、
懐機の師匠である張老人に師事したり、
屋良の人々のために色々と尽くしたりと、
病弱で悲惨な屋良子ども時代
という感じではなかったですね。
友達にも恵まれてるし…。
「国王の立場で考えるか、按司の立場で考えるか、領民の立場で考えるか、
それぞれの立場によって考え方は変わってくるのです。
加那様は、どの立場で考えようとされていますか」
(57- 張老人(懐機の師))
この小説のテーマはまさにこの一言に集約されているように思えました。
立場が変われば見方や考え方も変わる。
実際、沖縄出身ではない作者が阿麻和利を題材に物語を書こうと思ったのも
阿麻和利に対する評価の二面性が興味をひいたからだそうで。
このこだわりは阿麻和利自身だけでなく
茂知附按司や倭寇、金丸(松金)、尚巴志王、尚泰久王、護佐丸などにも
展開されていましたよ。
「わしが城主になってからの40年間に、わしがやってきたことを次々と思い出してみた。
わしだって、領民どもの年貢を軽くしてやりたいという気持ちがないわけではないが、
首里からの取り立てが厳しくなる一方なので、
どうしても年貢の数を増やすしかなかったのだ。
首里だって、北山征伐をし、大きな道路を国中に造り、
国家の体制を整えるためには、
勝連に対する年貢の取り立てを軽くしてくれる望みはない。
そうかといって、首里に逆らったらつぶされてしまうに決まっている。
わしの考えは、いくら考えてもここでとまってしまうのじゃ。」
(190- 茂知附按司)
茂知附按司の最期のセリフ。
政治を怠り酒浸りの悪評高い茂知附按司が単純な「悪」ではなく、
按司として立場ゆえの苦悩や弱音を加那に漏らすシーン。
物語のラスト1ページも唸ったね。
惜しいのはこのようになかなか設定は面白いのに
小説としては展開が割と淡々としちゃってること。
描きようによってはもっと面白くドラマチックになりそうなのに、
結構みんなあっさりと消えて行ったのが残念。
う~ん、それとも児童書だからこんなものなのかなぁ?
でもゼロから村おこしをしていく経営者(リーダー)としての阿麻和利は
なかなか興味深かったです。
この部分がこの物語のメインでもあるし。
チームを作るとか、ミーティングのシステムとか、
目的の共有や規則、休暇や情報収集法など、
子供向けのリーダー論の物語としても読めるかも?
ドラッガー的な(笑)
*おまけ*
加那は松金(金丸)とも旧知の仲で(ちなみに同じ年頃)
百十踏揚の嫁入りは泰久がまだ越来王子の時という設定。
「加那殿、泰久様はお主が勝連城主になられたのを祝って、
大きな引出物をくださるそうですよ。
それがなんだか当てられますか。
とてもすばらしい贈り物なのですよ」
(207- 松金(金丸))
百十踏揚を引出物よばわりとはけしからん(`ε´)
ちなみに黒幕は尚泰久、金丸に加えて玉城大親。
やっぱ「百十踏揚」に勝るのはないな。
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