がじゅまるの樹の下で。

*琉球歴女による、琉球の歴史文化を楽しむブログ*

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組踊300周年の集大成!御冠踊と組踊「銘苅子」

2019年10月06日 | ・琉球歴史/文化風景

 

国立劇場おきなわ研究公演
御冠船踊と組踊「銘苅子」

2019年10月5日(土)

国立劇場おきなわ組踊公園特設ステージ

 

 

楽しみにいていた公演!

どれくらい楽しみだったかと言うと、
この公演のことを知り合いの琉舞の先生から聞いて
すぐに予約電話したら

「予約は9月1日からになりますね~

と言われたくらい(笑)
2ヶ月もフライングしてしまったわ。

 

 

この公演は朝薫が組踊を創作した1719年から
王国解体までの6回の冊封時の資料を元に
当時の姿、様式、演出を追い、
可能な限り再現に近づけるという試み。

 

2019年、組踊300周年の集大成は、
まさにこの公演だった
と言えるでしょう

 

 

 野外公演、ということで心配していた天気も
見事な秋晴れ!

気温も湿度もいい塩梅で、
風も強すぎず、爽やかなそよ風で
それが風車をくるくる回したり
天女の羽衣をふわりと見せたりと
演出にも一役かっていました。

虫の声…は
あいにく近くを通る車の音に干渉されてしまいましたが
上弦の月が煌々と広場を照らし、
野外ならではの空気感を味わうことができました。


心配していた座席構造ですが、
2列ごとに段差がつけられており、
もちろんホールのように、とはいかなくとも
後ろの人もなるべく見えるようにとの
充分な配慮を感じることができました。

(脱帽の配慮を願うアナウンスもありました)

 

う~ん、さすが

 

 

今回の研究公演までに
関連する首里城講座や
国立劇場おきなわの9月研究講座も
全部参加していたので(ガンバッタ!)

舞台構造やその歴史や意味、
他文化や他地域の比較、現行のものとの相違など
背景も学んで公演を見ることができたことも良かったです。

 

 

今回のために特別に設置された舞台は
朝薫の時代の記録(中山伝信録)を元にしたもの。

能舞台のように、四角く囲まれた舞台に楽屋とをつなぐ橋掛り。

背景となる紅型幕も、上手下手もなく、
演者の出入りは橋掛りのある一方だけ。

舞台構造が違えば、演者の出入りや立ち位置や演出も変わる。

音楽も能の鼓を入れたり
端折らずに全曲通したりと
現代とは違う点もままあるようでした。

 

それでは御冠船踊と組踊について
それぞれの感想を。

 

 

●入子踊

元服前の若衆がメインとなる入子踊。

これに後見人的枠割もある青年(二才=ニーセー)と、地謡が加わり
3重の輪になって、円を描きながら踊るというもの。

入子踊の演目は朝薫の時代よりも古く、
500年前(古琉球!)から続いていると考えられているようで、
私はイザイホーでみるような神踊(神舞)をイメージしていました。
(ルーツはそこかもしれない)

音楽も打楽器と歌をメインとし、
サンシンなどの旋律を奏でる楽器は皆無。

でも歌の抑揚がかなり効いていたり
華やかな小道具(色扇子、菊、風車、鳴り物)をとっかえひっかえ踊ったり
テンポや動きもはつらつとしていて
神踊のような原始的で厳かな雰囲気ではなく
華やかな印象を持ちました。

なお、振り付けに関しては史料が残っていないので
創作だそうです。

元服前の若衆ということで
今回も資料に忠実に、小中学生が踊っていました☆

そうそう、これらの踊りを率いて、見守っていた
天孫氏と大黒天がいたのは興味深かった。

天孫氏!琉球で最初の伝説の王統。

実態を持った天孫氏を見るのは初めてかもしれない。

 

 

●老人踊

お馴染み、「かぎやで風」を。

踊る前の口上付きで。

「翁」は背も高く
腰を曲げているわけではないけれど、
歩く、座る、立つなどの仕草や
踊る仕草に、老人の風情を感じました。

『黙示録』で主人公二人が
富士山を前にして老人踊をするシーンを思い出しました。

 

 

●扇子踊

こちらは衣装にくぎ付け。

3人で踊っていたのですが
真ん中の方の紅型がなんだか大和風に見えて珍しく感じました。
柄?色合い?
もっと近くで見たかった。

 

 

●組踊「銘苅子」

実はちゃんと通しでみるのは初の「銘苅子」でした。
(だから土曜公演を選んだのだ)

鮮やかな薄衣の羽衣が、夜風をはらむ様が美しかった。

子どもたちが母(天女)を探してさ迷い歩くシーンは
曲を端折らず全通しで、とにかく……………長…かった…

後の時代(現代)に、はしょられてしまうのも
なんだかわかる気がしたよ。

 

「おや?」と思ったのは、
銘苅子が結構表情豊かだなぁということ。

組踊は感情をかなりそぎ落として
目線やわずかな顔の傾きなど、最小で表現するので
目に見えて分かりやすい表情と言うのはあまり無いのですが、

銘苅子が天女に出会った時や
首里から冠位をもらった時などは
目に見えて喜んでいて
ちょっと俗っぽさ、と言ったらあれですが、
人間味を感じました。

そして、喜ぶ父ちゃんの横で
特に(同じような)反応を示さない姉弟に

母との別れと引き換えに冠位をもらうことが
本当にこの子たちにとって幸せなのか

って思っちゃった、よ、ねーー。

 

銘苅子は天女と出会った時の問答も
屁理屈こねたりして、何かと人間くさい。

さっき、組踊は最小の感情表現って書いたけど、
そういえば三枚目キャラは割と表情出してる感じかな?
(寺の小僧とか、盗人とか…)
ってことは銘苅子は3枚目キャラ寄りか?
…でも、そうだとしたら妙に納得

 

出番も天女や子どもたちの方が多いし、
天女の昇天や親子の別れと悲しみなど
物語のメインの見せ場には銘苅子はいないのに、
なんでタイトル「銘苅子」なんだろね。

銘苅子の出番って
天女の出会いと、首里からの冠位授かりの時くらいで、

つまり、
屁理屈問答や
首里の恩恵に子供の気持ちそっちのけで喜ぶ、
少なくとも徳高い男性には見えないんだけど(苦笑)

…なんでタイトル「銘苅子」なんだろね。
(当時の男社会、士族社会の関係かな)


そんな銘苅子には
やっぱりこれを思い出しちゃうのよね…。

 

でも、そんな銘苅子…

嫌いじゃない……( ˘ω˘ ;)

 

 

そして最後は!!

今回の公演の目玉でもあり、
私の1番の目的でもあった

からくり仕掛け花火!
(こちらは朝薫時代ではなく、尚泰の冊封時の記録を元に復元)

現役時代はなにかと報われなかった安里さんの花火が、
150年の時を経てよみがえる…!!

良かったね安里さん…(´;ω;`)

 

講座も受けて、準備段階の制作者の映像も見て、
いっぱいイメージも膨らませていたけれど、

やっぱり実物はすごかった!!

スピード感というのかな。

勢いが私の予想の1つ上を行っていた!

爆竹!噴火!!火車!!!

やべぇーーーー(゚∀゚)ーーーー!!!!

ちょっとスムーズに出なかった仕掛けもあったっぽいけど、
まさにこの絵図通りの姿を見ることができて


感無量

でした

 

 

記念すべき歴史の1ページに立ち会えてよかった

 

いずれ、火花方日記にある5体すべての花火が復元されて
5体一気に見れる機会がくることを期待しています!

 

 

なお、この公演の様子は
10/7(月)のRBC夕方のニュースでも特集するみたいなので
是非こちらもチェックしてみて下さい!

研究講座の時から取材カメラもいっぱい入ってたので
7日のRBCニュースだけじゃなくて
他局でも放送されたり、特番とかもあったり?
と思ったりもしています。

 

 

公演前の関連放送も貼っておきます
(おそらく見れるのは期間限定です)

組踊〝初の花火〟再現へ 奮闘する男性に密着(QAB) 

特集・組踊に花添える「からくり仕掛け花火」復元へ(RBC)

 

 

*追記(当日の様子)*

特集 初の組踊野外公演で仕掛け花火 (RBC)

Qプラスリポート 組踊 300年前の花火が復活 (QAB) 


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