倉沢進・李国慶『北京 皇都の歴史と空間』(中公新書、2007年8月)
新中国以後の北京の都市計画や、現代の都市問題を中心にまとめた本です。以下に面白く読んだポイントを挙げておきます。
○新中国建国直後の都市計画論争
北京の都市計画は当初、梁思成(梁啓超の息子だそうです)と陳占祥が北京の旧城を歴史名城としてまるごと保全し、城外に新都心を形成する方向で進めていたのが、ソ連が派遣してきた専門家が旧城内に行政の中心を置く案を提案し、論争の末ソ連に沿って街づくり進められることとなり、これによって城壁や城門などの取り壊しがなされていったとのこと。梁・陳案が採用されていたとしたら、現代の胡同再開発もここまで徹底して行われることはなかったかもしれないなあ……
○都市戸籍と農民戸籍について
都市住民と農村住民とを分かつ戸籍制度は、新中国建国後に農民が都市に大挙して流入するのを阻止するために施行されたものですが、一方で終戦直後の日本でも同様の問題に悩まされたものの、ここまで強い措置を取ることができず、流入の阻止は失敗に終わりました。中国では厳格な戸籍制度の施行によってこの問題を乗り切りましたが、これによって都市住民が農民工に対して、ある意味少数民族よりも異質な存在と見なして嫌悪するようになるなど、新たな禍根を残すことになったとのこと。
○四合院に対する認識
本書では北京の四合院の居住環境についても紙幅を割いていますが、近年盛んに進められている四合院取り壊しについて、当の住民の方ははマンションなどの集合住宅への移住に満足する人々が多いとのこと。本来一家族が住むべき所に多数の家族が肩を寄せ合って暮らすというところに色々と無理があったようで、台所やトイレの便が良くないとか、良い意味でも悪い意味でも濃密な隣近所との関係が煩わしいとか、更にそれらが合わさってトラブルが頻発したりと、我々がイメージするような下町情緒にあふれた生活とはなかなかいかなかったようです…… 特に文革期に四合院での人間関係が悪化の一途を辿ったとのことですが、このあたりは映画『胡同のひまわり』でも触れられていましたよね。
○故宮太和殿での受降の儀式
今まで他で聞いたことがなかった話なのでメモしておきますが、日中戦争後の1945年10月10日、故宮太和殿で日本の華北方面軍司令官根本博中将が中国第11戦区指令長官孫仲連に投降書を手渡し、中国に対する降伏の儀式を行ったとのこと。あんな所でこういう儀式が行われていたんですね…… ただ、この孫連仲なる人物は国民党側の軍人のようですが。
新中国以後の北京の都市計画や、現代の都市問題を中心にまとめた本です。以下に面白く読んだポイントを挙げておきます。
○新中国建国直後の都市計画論争
北京の都市計画は当初、梁思成(梁啓超の息子だそうです)と陳占祥が北京の旧城を歴史名城としてまるごと保全し、城外に新都心を形成する方向で進めていたのが、ソ連が派遣してきた専門家が旧城内に行政の中心を置く案を提案し、論争の末ソ連に沿って街づくり進められることとなり、これによって城壁や城門などの取り壊しがなされていったとのこと。梁・陳案が採用されていたとしたら、現代の胡同再開発もここまで徹底して行われることはなかったかもしれないなあ……
○都市戸籍と農民戸籍について
都市住民と農村住民とを分かつ戸籍制度は、新中国建国後に農民が都市に大挙して流入するのを阻止するために施行されたものですが、一方で終戦直後の日本でも同様の問題に悩まされたものの、ここまで強い措置を取ることができず、流入の阻止は失敗に終わりました。中国では厳格な戸籍制度の施行によってこの問題を乗り切りましたが、これによって都市住民が農民工に対して、ある意味少数民族よりも異質な存在と見なして嫌悪するようになるなど、新たな禍根を残すことになったとのこと。
○四合院に対する認識
本書では北京の四合院の居住環境についても紙幅を割いていますが、近年盛んに進められている四合院取り壊しについて、当の住民の方ははマンションなどの集合住宅への移住に満足する人々が多いとのこと。本来一家族が住むべき所に多数の家族が肩を寄せ合って暮らすというところに色々と無理があったようで、台所やトイレの便が良くないとか、良い意味でも悪い意味でも濃密な隣近所との関係が煩わしいとか、更にそれらが合わさってトラブルが頻発したりと、我々がイメージするような下町情緒にあふれた生活とはなかなかいかなかったようです…… 特に文革期に四合院での人間関係が悪化の一途を辿ったとのことですが、このあたりは映画『胡同のひまわり』でも触れられていましたよね。
○故宮太和殿での受降の儀式
今まで他で聞いたことがなかった話なのでメモしておきますが、日中戦争後の1945年10月10日、故宮太和殿で日本の華北方面軍司令官根本博中将が中国第11戦区指令長官孫仲連に投降書を手渡し、中国に対する降伏の儀式を行ったとのこと。あんな所でこういう儀式が行われていたんですね…… ただ、この孫連仲なる人物は国民党側の軍人のようですが。