ミツマタは中国原産の落葉低木で、樹高は2m程度です。
スギ人工林の林床に群生しているところを良く見かけるので、肥沃な土壌を好むと思われます。
ミツマタという名の由来は、実にシンプルで、枝が3つの又に分かれる・・・そのままの姿からきています。
ミツマタの葉は互生、葉身は長さ5〜20cm、葉の形は長楕円形または披針形。
葉の縁は全縁で、両面に絹毛があり、裏面の方が毛が多いです。
花は両性花で、葉が展開する前に開花し、地域によりますが、3月~4月頃に開花します。
果実は核果で、6〜7月に熟し、緑色で有毛です。
ミツマタは、コウゾやガンピ同様、紙の原料として有名な特用林産物です。
昔から日本に導入され、江戸時代から製紙に使われていたそうです。
特にミツマタは、紙幣用の原料としても有名で、当時の大蔵省(現・財務省)に紙幣の原材料として納められています。
国内で最初に栽培されたのは静岡県や山梨県だそうですが、次第に岡山県、高知県、徳島県などの中国・四国地方にも栽培が広がり、現代も、ミツマタの生産は、中国・四国地方が盛んな状況にあります。
ミツマタの紙幣原料という需要と供給、流通について、詳しく知りませんが、個人的には、特用林産物として「ミツマタ」は魅力的な森林資源の1つだと考えています。
まず、需要面。
安易な考えですが、紙幣用の原材料なので、ある意味「安定的な需要」が保証されている・・・と考えられます。
生産者にとって、保証された需要はとても魅力的だと思います。
次に、獣害対策。
ミツマタは、シカなどの獣害を受けない(受けにくい?)。
シカの生息頭数増加と分布拡大が問題視される中、植林してもシカの食害が受けない。
これもとても魅力的だと思います。
最後に、収穫期が早い。
ミツマタは植栽後、3年程度で収穫できます。
1サイクル3年という回転の速さも魅力的だと思います。
「安定的な需要」、「獣害を受けない」、「生産サイクルが早い」といった魅力をもつミツマタ。
とは言え、四国・中国地方以外の他県が、これからマネをしても、この流通に乗り込むのは難しい・・かなと思っています。
例えば、最近はIターンなどで、和紙を作られる方もおられます。
そういう方達とタイアップする形で、地域需要を起こしていくことはとても大切だと思います。
すでに天然に生えているミツマタの量をベースにどの程度の需要を起こせるのか。
どの程度の利益が見込めるのか。
収穫後の植栽を含め、循環的な経営が可能なのか。
初期投資がほとんどかけない方法で、ミツマタで収益確保が可能か否か・・・それを検討していくことも重要なように思えます。
また、同じく和紙の原料であるコウゾは、シカ被害を受けやすく、その資源枯渇が問題になっています。
生産者がOKなら、ミツマタを代用するというのも1つの手だと思います。
もちろん、コウゾやガンピにこだわる場合は、シカ対策をしっかりと行った上で、そうした資源を提供するのもありだと思います。
なお、徳島県が「みつまたの栽培の手引き」を作成しています。
岡山県や高知県など他県の栽培方法も載せています。
インターネットからダウンロードが可能なので、ご参考までに。
→ www.pref.tokushima.jp/_files/00099264/mitumatariyotebiki.pdf
「木材価格の低迷」は30年以上続いています。
こうした特用林産物に目を向け、生産者に販売する(スギやヒノキでいうと立木販売)商売を取り入れた林業経営が必要だと思います。
何より、人が山に入ると、山がきれいになります。
もちろん、山に入る人が、一時の収穫を目的とした乱獲をしないことは絶対条件であり、何より継続的に山主さんと取引できる山の知識と技術を持っている人・・という条件がありますが・・・。
それと、ミツマタは観賞用にも栽培されています。
林内で見られるミツマタは黄色い花ですが、赤色の花も。
需要があるなら、黄色いミツマタを花木用に出荷するのも、アリだと思います。