前回、油圧式集材機についてご紹介しました。
そもそも、架線集材が分からない方やどういう動きなのか理解できていない方もおられるかと思いますので、今回は、架線集材の中でも、一般的な「エンドレスタイラー」について、簡単にご説明を。
前置きで「どういう動きなのか理解できていない方」と言いつつも、正直、僕も、自信をもって、理解しているわけではありませんが、少なくとも間違ってはいないと思っていますので、ご容赦下さい。(※プロの方々から見て、修正等ございましたら、是非、ご指摘ください。)
それと、今回は、エンドレスタイラーの仕組みを説明することが目的ですので、架線の張り方などの技術面や安全面についての話は省略していますので、この点もご容赦下さいm(_ _)m。
エンドレスタラーは簡単に言うと、集材機を操作して、林内に張り巡らせたワーヤーロープを循環的に回しながら、木材を集める方法です。
図にするとこんなイメージ。
ただし、実際はこんなにシンプルではありません。
仕組みを分かりやすくするため、あくまでイメージ図をシンプルに表現しているだけですので、実物はもっと複雑ですよ。
このイメージ図を基に、それぞれの役割を。
まず、木材を搬出するための搬器を乗せる「主索」。「スカイライン」とも言います。
主索は、両端とも木に固定しているので、集材機と直接は繋がっていません。
この状態は、「主索の上に搬器が乗っているだけ」で、当然、動かすことが出来ません。
今回、主索の張り方は省略します。また、本来は、主索を固定した樹木の倒木などを防ぐ処置もしますが、今回はイメージ図からも省略しています。
搬器を動かすために必要なのが「エンドレスライン」。
エンドレスラインは、集材機-搬器-先柱を通じて、グルッと1周しているイメージ。(大抵は、ワイヤーを搬器のところで繋げています。)
集材機にあるエンドレスライン用のドラム(糸巻きみたいな物)を操作して、搬出したい木材の場所まで、搬器を送ります。
搬器は主索に乗っているだけですので、エンドレスラインの操作1つで、搬器を山に送ったり、林道に引き戻したりすることができます。
エンドレスラインを単純に考えると・・・
このようにグルグルと循環しているので、集材機のドラムを操作して、搬器を移動させます。
下の写真で言うと、エンドレスドラムは右側の小さいヤツです。
ただし、搬器を木の真上に動かしてきても、搬器そのものは、空高くぶら下がっています。
そこで、荷掛滑車を吊り上げる・吊り下げるための「リフティングライン」を設けます。
リフティングラインは、片方は集材機のドラムに繋がっており、もう片方は木に固定されています。
集材機のドラムを操作して、リフティングラインを張ったり、緩めたりすることで、木を吊り上げたり、下ろしたりすることができます。
これに、もう1つ重要なものが「ロージングブロック」。
このロージングブロックにリフティングラインを通します。
加えて、このロージングブロックを狙ったところに下ろすための重りをつけます。
上の写真は、専用に作った鉄製の物ですが、木の丸太を利用する場合もいます。
その重りに荷掛滑車が取り付けられています。
しかし、搬器やロージングブロックは、あくまで主索の線下でしか、木材を上げ下げすることしかできません。
そこで、主索の線下から離れたところの木を集めて、搬出するために、「ホールバックライン」というものを設けます。(アウトラインとかアウト線とも言います。)
ホールバックラインは、ロージングブロックの重りに固定し、集材機のドラムと繋がっています。
集材機のドラムを操作して、ホールバックラインを引いたり、緩めたりすることで、荷掛滑車を木材のある場所へと動かすことができます。
子供に袖を引っ張られて、おもちゃ売り場に連れていかれる・・・そんな感じです。
この場合、「子供」がホールバックラインですね・・・。
まとめます。
①搬器を乗せる主索(スカイライン)。
②搬器を動かすエンドレスライン。
③荷掛滑車を下ろしたり、上げたりするリフティングライン。
④荷掛滑車を主索から離れた場所へ移動させるホールバックライン。
で、こうなります。
集材機が関係するのは、②~④の操作です。
集材機を正面から見ると、
3つのドラムがあります。
それぞれのドラムを操作することで、搬器や荷掛滑車を動かすことができます。
要は、ワイヤーロープを緩める・張るという動きが、吊り下げる・吊り上げるという働きになると考えてください。
この架線集材ができる職人・技術者が高齢化・減少しています。
林業全体にも言えることですが、特に架線集材は後継者がいないんです。
特に、集材距離1,000mを超える架線の設置ができる技術者は、さらに限られています。
主に高知県で行われている「H型架線」という架線集材が注目されて以降、再び、架線集材も注目されるようになり、前回ご紹介した油圧式集材機も、架線集材を必要とする地域では期待される機械だと思います。
林業はその地域地域によって、作業システムや技術が異なり、全国一律・全国統一というわけにはいきません。
車輌系機械だけでなく、やはり架線系機械の技術向上や後継者の育成も大切です。
もし、ここで、架線集材の技術が途絶えたら、再び、その技術を取り戻すことは、本当に困難です。
特に、今ある技術は先人たちの知恵や経験、そして、犠牲の上に積み上がってきたもの。
先人たちの犠牲があったからこそ、何が危険なのか、今を働く人たちに伝わっていると思っています。
この技術が途絶えたら、先人たちの犠牲が無駄になってしまい、これは、大変無礼なことだと思います。
誰かが犠牲になってきた経験から、二の舞にならないよう、引き継いできた方々が安全に努め、今に至ったはず。
「こういう事故が多いから、気を付けよう。」
「これは絶対にしてはいけない。」
「ここには絶対に入ってはいけない。」
誰かの犠牲が、今、技術として活きていると思います。
地域や現場、地形、伐採量などによって、最良な作業方法が異なる林業。
新たな技術が注目されがちですが、これまで積み上げてきた技術・機械も改めて注目して頂きたい。