先日、とある県からのご依頼を受け、林業普及指導員に対する研修会の講師を対応させていただきました。
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近年、話題となっている行動経済学の1つ「ナッジ理論」をベースに、皆伐再造林を推進するため、人の行動特性と心理特性の視点から考えるという内容です。
おそらく、林業系県職員に対して行動経済学を取り入れた研修は、国内初!だったらいいな~と思っています (^.^)。
農林水産省、環境省、もちろん林野庁も「ナッジ」を取り入れた動きを、すでに始めています。
さて、ナッジ理論とは何か。
ナッジ(nudge)とは、英語で「軽くつつく」という意味です。
人は強制されることを嫌います。
人々に「こういう行動を取って欲しい」と思った時、「こういう行動を取りなさい!」と強制されると、求められる行動を取りたくなくなるというのが人間の心理です。
そこで、人々に対し、選択肢を与えて、選択できる環境を整えることで、その本人にとって望ましい行動をとるように、そっと自然な形で誘導する手法をナッジと言います。
ざっくりいうと、人々に対し、選択肢を与えた上で、こちらが取って欲しい行動をとるように自然な形でそっと誘導するという手法です。
しかも、本人が選択して取った行動なので、その人にとっても望ましい行動であるとともに、こちらにとっても取って欲しい行動をとってもらっているという理想の形を体現できる手法がナッジです。
聞きなれない言葉ですが、ナッジは、すでに行政やビジネスにおいて、人々の行動を強制させることなく、行動を促す戦略や手法として取り入れられています。
身近なナッジで言うと、レジの前にある足跡のステッカー。
レジで順番に並んでいる時、自分の前のレジがなかなか終わらず、横のレジがスムーズに進んでいるのを見ると、「自分の方が先に並んでいたのに・・・」と、不満に思ったことがありませんか?
この足跡のステッカーが貼られたことで、自然とレジで並ぶ場所に誘導されています。
また、店員さんが、「並ぶ方はこちらへ」という必要もありません。
このステッカーによって、先に並んだ人が順番に空いたレジを利用できるという環境が生まれ、お客さんのストレスも軽減されます。
お店側もお客さんが気持ちよく買い物ができる環境となるので、双方にとって良い結果になっています。
このナッジ理論を林業行政の中でも応用できると考え、今回の研修テーマとさせていただきました。
「林業は自然相手の仕事」と言われていますが、実際は、自然相手の仕事ではなく、「林業は自然を通じた人間相手の仕事」です。
木材を買う相手も人間であり、森林所有者も人間であることを忘れてはいけません。
皆伐再造林を進めるためにというテーマで、事前に色々と考えていただき、それに対して、見直しと改善も行っていただきました。
研修形態はウェビナー(web)であったため、受講された県職員の皆さんに、正しく伝えることが出来たのかという不安はぬぐえませんが、まずは、行動経済学のナッジ理論を知っていただき、従来の思考パターンを変えるきっかけになればと思います。
いずれにしろ、これからの林業行政にナッジ理論を取り入れていくことは、とても大切なことではないかと考えています。
「ナッジ」という手法は、野生動物の伝染病対策としての入山者への衛生管理という分野で、初めて知りました。
林業や林業を通じたコミュニケーション、行政にも通じるということで、興味深いです。
これからも森のこと、動植物のこと幅広く楽しみにしております。