はぐくみ幸房@山いこら♪

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地拵え 種類

2020年04月10日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 前回、地拵えの目的についてお話しさせていただきました。

 今回は、地拵えの種類について。

 

 地拵えは、伐採跡地に残された伐倒木や枝条などの林地残材を整理し、安全かつ効率よく、再び、木(苗)を植えられるように整理する作業です。

 そして、地拵えのやり方次第では、「土壌流亡を防ぎ、林地保全を促進する。」というメリットや「地力低下を招く。」というデメリットを持ちます。

 

 地拵えは、大きく「潔癖地拵え」と「粗放地拵え」の2タイプに分かれます。

潔癖地拵えは・・・

 地表面をレーキでかいたり、残された根や落葉層まで除去し、特に天然更新を促進する場合は、鉱物質土壌まで露出させます。

 また、散在する枝条を集め、焼き払ったり、ブルドーザーやトラクタ等で耕耘したり、ササの地下茎を剥ぎ取ったり、徹底的に地表面を除去することも。

 メリットとして、地表面を除去することで、灌木などの侵入や再生が遅れるため、下刈りを省略することができます。

 デメリットとして、地表面を除去するため、特に鉱物質土壌を露出してしまうと、地力の低下や表土流亡の発生を招いてしまいます。

 枝条や刈り払った有機物を利用し、地表面を覆うことで、デメリットの対策・緩和に繋がりますが、地表面を除去した後、再び、枝条を集積して地表面を覆うとなると、労力・コストは大幅に上がります・・・。

 

粗放地拵えは・・・

 必要最小限の作業しか行いません。(一般的な地拵えが、これにあたると思います。)

 しかし、植栽作業や移動に支障をきたすような仕上げ方では、粗放過ぎます・・・。

 また、雑草木の除去程度が低いと、萌芽能力が高い植物や再生能力が早い植物に植栽木が覆われてしまいます。

 デメリットとして、仕上がり加減が、能力や経験値に左右されやすいと考えられるので、雑草木やつるが繁茂し、視界が悪くなる残された材や枝条が植栽や下刈り作業の障害になりうるということです。

 一方、メリットとしては、地表面の露出が比較的小さいため、地力の低下、雨滴や地表流下水による表土流亡が少ないという点です。

 

 もちろん、どちらの地拵えがイイというわけではありません

 現場や植生状況に応じて、どちらが最適か、部分的に潔癖/粗放を使い分けるべきか、等を判断することになります。

 ただ、コストという現実問題がある以上、基本的に粗放地拵えになると思いますが、下刈りの省略化具合によっては、潔癖地拵えの方がトータルコストは抑えられるかもしれません。

 初期に集中して投資するか、分割して投資するか、地形・地質・植生など現場の条件によって、トータルコストが抑制できるのか、そういう研究報告があると、経営判断の1つの指標になると思うんですが・・・。(僕が検索したところ、めぼしいものは無かったんですが・・・)

 それと、地域によって、高性能林業機械を使った地拵えを行うところもあると思うので、それは潔癖地拵えになるのかも・・・。

 

 ちなみに、講義や講習会で講師をさせていただくと、「下層がシダに覆われた山はどうすればいいですか?」と質問をされることがあり、そのような質問には、以下の様にお答えしています。

 ①シダを弱らせるため、徹底的に下刈りを行い続ける。時期は6~8月。シダの再生状況を見ながら年2~3回繰り返し、シダが枯渇するまで数年続ける。

 ②シダの地下茎ごと焼き払う。(立木あると無理だけど。)

 ③重機類を使い、地下茎を除去する。(立木あると無理だけど。)

 つまり、時間やコストが掛かりますよ。というお話をさせていただいています。

 その上で、

 ④繁茂しているシダがウラジロだったら、良好なウラジロが採取できる様、管理する。成功すれば、木材生産よりも利益がイイかも(^_^;)。(基本、立木がないと難しいかも。)

 邪魔者がお金に替わるかも・・・というお話もさせていただいています。

 

 

 ここから、地拵えの種類について(全8種類)。

 ①全刈り地拵え

 ②筋刈り地拵え

 ③坪刈り地拵え

 ④枝条散布地拵え

 ⑤先行地拵え(伐採前地拵え)

 ⑥棚積み地拵え

 ⑦火入れ地拵え

 ⑧開墾地拵え

 箇条書きになりますが、それぞれの特徴をご紹介します。

 実際、現場でご自身が行っている地拵えが、どの種類に該当するのか、どの種類とミックスしているのか、振り返ってみて下さい。

 表土流亡の影響やノウサギ被害の影響など地拵えの種類によって異なる。ということに気づいていただければ、今後、作業の見方が変わるかもしれません。

 

①全刈り地拵え

最も一般的で単純な作業で、雑草木などの再生抑制効果が高い

・植栽予定地に散乱する枝条や雑草木など、植栽の障害になる物を全面的に取り除く。

 取り除いた枝条や雑草木は、植栽の邪魔にならない場所へ集積する。

 等高線沿いに置いたり、谷や川へ落とす。

 ただし、谷や川に集積しすぎると大雨や豪雨の時に流され、下流域へ悪影響を与える可能性も出てくる。

 また、植栽に適した肥沃な場所に集積したり、落としたりしないこと。

・渓畔林などの保護すべき地点に対して留意すること。

作業量が多く、多数の人手を要する

地表面が露出しやすい

 

②筋刈り地拵え

・植栽する列のみを刈り払い、残りは放置する方法。
 刈り払った雑草木などは、列の上または列に沿って置いたり、斜面下方へ落とす。

植栽密度が低い(面積あたりの植栽本数が少ない)場合に適した方法

刈り残した列が、植栽木に対する防風効果が期待できるため、寒風などによる被害防止や軽減の効果が期待できる。

表土流亡の防止効果が期待できる。

全刈り地拵えよりも労力や経費の節減が期待できる。

・種子の供給源や地下茎が残されるため、刈り払った雑草木の再生力が強い

刈り残した列の植物が繁茂し、植栽木が被圧されるおそれがある。

ノウサギやネズミを誘引する可能性が高い。


③坪刈り地拵え

・植栽箇所の周囲のみ、円形または方形に刈り払う。→ 直径2~3mが一般的。

筋刈り地拵えよりも労力と経費が節減が期待できる。

・周囲に残された雑草木が、植栽木への保護効果が期待できる。

 ただし、周囲に残された雑草木などによる植栽木への被圧の影響が大きくなる

ノネズミやノウサギの被害を受けやすい

・再生した雑草木に植栽木が紛れてしまう可能性が高いため、後年の下刈りが面倒になる。

 

④枝条散布地拵え

・刈り払った雑草木類や林地残材を林地全面にまき散らす方法。長さ1~2mくらいに細断し、散布する。

・植栽予定地に雑草木類や枝条などの林地残材が少ない場合に採用。それなりに多い場合は、適当量散布するなど臨機応変に。

・メリットは、林地土壌の水分の発散を抑制雨水や雨滴による表面浸食の緩和腐植質の補給(地力低下の防止)雪崩防止(雪の移動を防止)落ち葉などの飛散を防止

・デメリットは、作業量が多い、雑草木類をまき散らすため、歩きにくく植栽や下刈りが不便になる、ネズミやノウサギが営巣する(獣害を誘発)。

・林地保全の観点では有効な方法だけど、小~中型獣類による被害を誘発する可能性を高めてしまう。

 

⑤先行地拵え(伐採前地拵え)

・主伐前に灌木やササ類を薬剤処理により除去する。

・メリットとして、伐採前の調査や作業、伐採後の地拵えが容易になる。刈り払い等の作業が日陰で行えるため、労務安全管理の面から有利な点がある。

・デメリットとして、主伐の予定がなくなった場合、作業が無駄になる。路網整備が不十分だと通勤が大変。搬出作業後、地拵えした場所が乱される場合がある。薬剤処理により下流域へ影響を与える恐れがある。

 

⑥棚積み地拵え

・刈り払った雑草木類を集めて、4~8m間隔で等高線沿いに棚の様に積み上げる方法。

 棚は、伐根に積み上げて固定したり、杭を打って固定する。

 また、伐採で残された樹木や生えている樹木を残し、そこへ枝条などを寄せ集める。

・林地残材の移動や積雪の移動による植栽木への損傷が予想されるような場所に適している。

・棚積みにした場所から生える樹木は、刈り取らず、そのまま利用すれば、林地崩壊や雪崩の防止効果が期待できる。

・ただし、利用する樹木が大きい場合は、植栽木の成長が抑えられる可能性がある。

 しかし、残した樹木を植栽木とともに保護すれば、混交林や複層林への誘導が可能となる。

環境林高い環境機能を備えた経済林にしたい場合は、棚積み地拵えが適している

 

⑦火入れ地拵え

・林地残材や刈り払った雑草木などを集め、林床をきれいに燃やす方法。

・焼き肥えによりリン酸など無機元素が増加する反面、林野火災の危険が伴う。

病害などによる改植ノネズミの異常発生コシダやウラジロの密生地などは、この地拵えが適している。

マツ類やカンバ類など(特に風散布タイプ)の天然更新の促進効果が高い

 

⑧開墾地拵え

・伐採跡地を焼き払った後、ソバやマメ類などを作り、同時期~3年後の間に植栽を行う。

 または、数年間、サツマイモやサトイモなどを栽培、コウゾやミツマタなどの特用樹や観賞用樹木などを栽培。

・開墾により、土壌耕耘効果や作物栽培への施肥効果によって、造林木の成長が良好になる。

・間作作物による地表被覆効果、地拵え及び下刈り作業の省力化が期待できる。

 ただし、急斜面では表土流亡や崩壊の原因になるおそれがある。

・間作の場合、施肥を怠ると地力低下を招く

間作作物を大切にしすぎて、植栽木を損傷してしまうことがある。

  ※間作林=スギなど高木性樹木の苗木が育つまで、苗木間の隙間で農作物を栽培する山林

  ※木場作=苗木が大きくなるまで、苗木と苗木の間に麦や落花生などの作物を栽培しながら、木を育てる方法。

 

 以上、8種類の地拵えでした。

 最後の開墾地拵えは特殊で、昔の農林家が行う様なイメージかな?

 近年は、田舎暮らし、半農半X、自伐林業などに取り組む方が増えているので、今の時代スタイルに合った新しい開墾地拵えがあるかも。

 もしくは、植栽木がある程度生長するまで、林地を貸すというビジネスも出来るかも?

 「土地代は無料で、間作を自由に認めるから植栽木を管理してね。」みたいな(^_^;)。



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