森林・林業関係に携わる者として、地域振興も念頭に、切り離さず考えないといけないと思っています。
とはいえ、地域振興は簡単に成功するものではありませんし、やっぱり難しい。
しかし、近年は、成功した地域振興の事例紹介や講演会など学べる機会も増え、重要な共通点というものも見えてきています。
個人的に重要視しているものとして、「地域のお金は地域で回す。」
単純に言えば、地域外にお金がどんどん流れると地域は衰退し、地域内でお金をどんどん回して、地域外からお金を得ると地域は振興する。
地域で生産したものを地域で消費する=地産地消
地域で生産したものを地域外で消費する=地産外消
さらに、商品を生産する際に消費する物も地域の物を使うということも重要で、
地域で消費するものは地域で生産したものを使う=地消地産
例えば、野菜1つ生産するにしても、種、苗、肥料は地域のものを使う。
この場合、大手のホームセンターで購入するのではなく、地元で生産されて、地元で販売しているお店で、となります。
僕自身、まだまだ勉強中ですが、1つの商品を生産するために消費する物も、なるべく地域内で賄い、生産した商品は地域外で消費または地域外の人を招き、地域内で消費する、というシステムが地域振興を成功させる1つのポイントではないでしょうか。
地域振興について、成功事例や講演会などで、色々勉強しながら、色々考えていると、ふと「林業の振興は、本当に地域振興に繋がるのか」と改めて考えるようになりました。
少し極端な例かもしれませんが、図を使いながら説明を。
A村に森林を所有するB市の山主さん。
そこへC町の伐採業者が山主さんから立木を買いました。
伐採業者は、伐採した立木をD町の製材所へ売りました。
D町の製材所は、Z市に製材品を売りました。
さて、お金の流れを見ると、A村にはお金が流れていません。
実際にこうした取り引きもありますが、このような形で林業が振興しても、地域振興に繋がるか、「地域内でお金を回す。」という観点から見ると、疑問を感じます。
で、この場合、問題は山主・伐採業者・製材所が地域外であることになるかと。
山主もA村の人で、伐採業者も製材所もA村なら、地域内でお金が回っています。
そして、地域の最終出口である製材所が、Z市に製材品を売れば、地域とすれば、プラス収支。
岡山県西粟倉村の「西粟倉森の学校」が取り組んでいるイメージ・・・といえば、分かりやすいかなと思います。
極端な例かもしれませんが、地域におけるお金の流れを見ながら考えると、必ずしも、林業振興=地域振興とは単純に言えないのでは?、という考え方もできるのではないでしょうか。
仮に伐採業者がA村の業者であっても、従業員がC町に住んでいれば、従業員に支払われた賃金は、基本的にC町で消費されます。
従業員がA村の住民なら、支払われた賃金がA村で使われれば、お金は地域外へ流れません。
人件費も地域内の人に支払えば、地域外へのお金の流出は抑えられます。
あと、電気代も地域外への支出の1つです。
そこで、水力発電や木質バイオマス発電などで、電気も地域で生産すれば、地域外へのお金の流出を止められます。
ただし、木質バイオマス発電の場合は、地域資源・収支バランス・発電規模などなど健全な経営が実現できるプランが不可欠です。
長野県の「いいづなお山の発電所」は、稼働して早い時期(3~4年だったかな?)に黒字経営へと転換し、2号機は銀行の融資(補助金なし)により稼働したと聞いています(いずれも発電規模は2000kw未満)。
こうした発電所が地域にあれば、電気代は地域で賄え、かつお金が地域外に流れていかないシステムが構築できるかもしれません。
もちろん、発電用材の価格が適正であることは必須になります。
最近は、農業法人として成功したビジネスの事例も紹介されています。
こうした社長さんの中には、生産者が生産できなくなれば、ビジネスが成立しなくなるので、「生産者価格を守る」という共通点が多々見られます。
さて、林業はどうでしょうか・・・。
また、ヨーロッパでは「自国の食糧とエネルギーは自国で賄う」という考えがあるそうです。
そして、グローバルとローカルが合わさった造語「グローカル(地球規模の視野で考え、地域視点で行動する)」という考え方も広がっているようです。
ざっくり言うと、地域で生産したものを単に地域や国内で消費するだけでなく、海外への輸出も進めていくような・・・。
脱線してきましたので、無理矢理、話を戻します。
先ほどの図で示したような林業では、地域振興が進むのか、疑問を感じます。
しかし、山主も伐採業者も製材所も同一地域内で、お金の流れを地域内で回すことができれば、地域振興に繋がる可能性が出てきます。
地域外の山主が地域内の山主に変わるだけで、立木代というお金を地域内に回すことができると思います。
林業振興と地域振興を考えたとき、近年、全国に広がりを見せている自伐型林業は、やはり無視できません。
自伐型林業に取り組んでいる方が、実際に山主になっているか、否かわかりませんが、自伐型林業を中心に、お金の流れを地域内で回すシステムを作り出せば、地域振興に繋がっていく可能性は十分にあるのではないか、と考えています。
でも、自伐型林業に取り組んでいる方が、山主になっていたら、それは「林家」になるので、自伐型林業をきっかけに「林家」を増やす・・・ということになるのかもしれません。
あくまで、これは1つの考え方です。
もちろん、大規模山主と大規模製材所が地域内に存在すれば、地域内で雇用も生まれますし、地域外に製材品を販売すれば、地域振興に繋がりますし。
長々と、ごちゃごちゃ書き綴りましたが、今回、お伝えしたかったのは、
地域振興は、地域内でお金が回る仕組みと地域内外で販売できる流通の構築が必要ではないか。
林業振興は地域振興に繋がると言われていますが、実際にお金の流れを追いかけると、決して、そうとは言い切れない部分もあるのではないか。
明確な答えというものはなく、それぞれの地域が有する強みを生かし、林業という1つの産業で地域を振興したり、地域全体で複数の産業を1つにまとめて地域を振興したりと、まさに十人十色で、1つのことに固執せず、柔軟な発想をもって、計画を立て、実践することが求められるのではないかな~と思います。
現状で止められないことはありますが、変えられることは何か、そして、前向きにできることは何か。
林業振興が地域振興に繋がると、単純に考えてはいけないと思う、今日この頃です。
日本の国土面積の70%は森林で、しかも九州から北海道まで日本全体が緑の森林です。木材もほとんどが輸入に頼っているのが実情です。日本は木の文化の国と言われているのに情けない話です。
日本の山は急峻だからとか、昭和30年頃人工林が密植されたから間伐材を搬出出来ない等々の言い訳じみた話であきらめ、日本に合った林業を真剣に考えない風潮が有ります。
林業、丸太市場、製材所、設計事務所、工務店が個別に動いているため、中間マージンが加算されユーザーは高いものを購入せざる得ないので日本家屋は高価なものだしか考えれずに来た歴史が有ると思っています。林業、丸太市場、製材所、工務店がリンクしうまく回る手段を考えだせば、日本が持っている森林と言う宝を生かせると思います。
私は10年ほど前まで非特定法人のNPOに参加していました。会員数十人
の小さなNPOです。そこで間伐、木工加工(間伐材を加工して小屋を建たて足湯作成)、ガス化発電、獣害対策等の実験をやりました。
間伐で一番大事なことは幅の狭い作業道を林内につづら折りに作ること。
それは小型のショベルカーで出来ます。間伐材はチェーンソーで長さ4m位の玉切りしたものを林内作業車に30本位乗せ麓の土場まで運びます。ショベルカー、林内作業車はいずれもキャタビラーのものです。急峻な山でも十分活用出来ます。
ポイントは、日本の急峻で密植された人口森林では幅の狭い作業道を網の目の様に作ることに付きます。
良く、幅がものすごく広い作業道を作りそこを大型のタイヤ式の外国産の大型林業機械を走らせ間伐をやっている森林組合の例等を見ますが、これは作業道を作るだけでも皆伐に近い様に思えます。また、密植された森林を完全に皆伐し、そこに苗を植えると言うことをやっている例も見ますが、此の様な山は保水力が無く崖崩れの要因にも成ります。