彼女が電話に出ない理由

2012年05月08日 06時15分54秒 | コメディのかけら

電車の中で、
携帯電話が鳴った。

普通ならば、
慌てて電話に出る人の姿を見かけるところだが、
誰も出ようとはしない。

5回、6回と鳴ったところで、
ようやく鞄の中の携帯を取り出した女性がいた。

その姿を見て、
彼女がなかなか電話に出なかった理由がわかった。

ヘッドホンをしていた。

音楽を聞いていたから、
着信音に気づかなかったのだ。

どうやら出た途端に電話が切れてしまったらしく、
そのままメールを打ち出した。

着信音が鳴ったことからもわかるように、
マナーモードになっていない。

だからピ・ポ・パ・ポと、
メールを打つ音がする。

隣の席の客が彼女に不快そうな目を向ける。

だが、彼女は気づかない。

そもそも音楽を聞いている彼女には、
メールを打つ音も聞こえていない。

いつもならば不愉快に思う光景だけど、
この時は、そんな彼女の姿がやけに「滑稽」なものに思えた。

ヘッドホンで音楽を聞いているから、
自分が周囲に不快な思いをさせていることに気づかない。

これとよく似た状況が、
いろいろなかたちで、
世の中にはたくさん起きていると思ったからである。