菩提寺の境内で満開の桜を見ていたら、
年配の女性に声をかけられた。
「桜の花を観ると、
日本人に生まれて良かったって思うんですよ」
近所のG大附属の傍の桜も、
今が見頃だという。
桜を介しての短い立ち話、と思っていた。
ところが・・・
彼女の話は止まらなかった。
「娘はG大付属とK応に合格し、
K応ならばそのまま大学まで行けるからいいと思っていたけど、
お父さんと同じT大に入りたいからとG大付属に進み、
T大の医学部を受験してたんだけど、
物理の試験中に緊張のあまりに鼻血を出してしまい、
T大の医学部に進むことはできなかったんだけど、
最近、その時の受験票が出てきて、
それを見た娘の息子が、
”お母さん本当にT大の医学部を受験したんだね”って驚いて、
そんな孫が今年の春、医学部に合格した」
さらに、
「実は5回病院に運ばれたことがあって、
3回手術した。
くも膜下出血でココとココと」
と頭とこめかみを指さした後、
「その時、肺炎になって」
と、セーターの首元を広げて手術痕を見せて、
「ココを手術したの」
さらにさらに、
・くも膜下出血の手術後、記憶がなかなか戻らなかった話。
・小澤征爾も診ている名医に治療を受けた話。
・昔から化粧はせず、夫に言われて、口紅だけはつけるようにしている話。
・カラーコーディネーターの国家資格を持っていて、
落ち込んだ時はその免状を見て、自分を励ます話。
・夫が、母親のタンス貯金を盗んだ弟を許していない話。
・夫と姪と3人で東急プラザに食事に行ったが、
姪の態度が気に入らなかった話。
・家を建てた時、Dr.コパに設計図を見てもらい、
アドバイスに従って改築した話。
・娘が自由が丘に一億円の土地に家を建てた話。
などなど、
こちらが口を挟む隙をいっさい与えず、
一気にまくしたてられた。
何より印象的だったのは、
「5回病院に運ばれて3回手術した」
という一連の話と動きを繰り返すことだった。
3回、それが出てきた。
そして、この話が出ると話題が飛ぶ。
結局、20分ぐらい桜の木の下で話を聞いていた。
一緒にいた家人曰く、
「悲劇にも喜劇にもなる出来事だね」