愛するのは居酒屋・だじゃれ 2011年9月3日 朝日新聞
日本のリーダーとして最初の一歩を踏み出した野田佳彦首相。その素顔は、日本酒とだじゃれを愛する普通のおじさんだ。行く手に様々なハードルが待ち受ける中、持ち前の泥臭くて味わい深い庶民の味を売りに、「どじょう宰相」の挑戦が始まった。
「どじょうだ、なまずだっていう話はしません。国民にいずれ名付けていただくような内閣にしたい。」野田首相は2日の就任記者会見で、内閣のキャッチフレーズを聞かれ、緊張した面持ちでこう語った。
もっとも、首相の普段の姿にはそんな堅苦しさはない。財務省で副大臣や大臣を務めた当時、秘書官や警護警察官(SP)を連れてしばしば東京・赤坂の議員宿舎近くの居酒屋に繰り出した。
いきつけの居酒屋は1人5000円以下。一般客と隣り合わせのテーブルに座り、日本酒をちびちび飲む。自身のグループ「花斉会」の会合も居酒屋が多く、野田氏は若手の聞き役だ。締めにラーメン屋や牛丼屋をはしごすることも多い。
財務相時代、財務省近くにある1回千円の「QBハウス」。最後に利用したのは8月上旬だ。愛煙家でも知られ、酒を飲む時に、たばこは欠かせない。復興増税には前向きだが、財源に酒税やたばこ税を増税する案には「税制を通じたオヤジ狩りみたいなものだ」と、反発したこともある。
昨年6月時点の資産は千葉県船橋市内の自宅・土地と定期預金が260万円。借入金は3589万円だ。首相は「国の財政も厳しいが、我が家の財政も厳しい」とぼやく。そんな家庭を支える6歳年下の妻・仁実さんは、政治の表舞台に出ることはあまりない。民主党代表選のさなかにも被災地でボランティア活動に力を入れたという。元宝塚女優の鳩山幸さん、歯切れのいい話しぶりの管伸子さんとは対照的だ。
演説にだじゃれを織り込むのが野田流だ。「クールデブの野田、0.1トンはありません」。7月中旬、広島市内で講演した野田市は、自虐ネタで会場の笑いを誘った。財政再建や増税話題が暗くなりがちなだけに、話の合間には「仏頂面の不景気顔」「メタボ」「シティーボーイにみえない」と自分の容姿を笑いのネタにする。
代表選の演説では輿石東幹事長が好きな「どじょう」のくだりを織り込み輿石氏の心をつかんだ。公明党へのあいさつ回りでは「公明新聞、読んでますよ」と切り出し、場をなごませた。低姿勢に徹し、用意周到な話しぶり。過去2代の民主党首相と趣が大きく異なるようだ。
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話の合間の「笑い」。用意周到な話し方。
がんばれ!