沖縄北部の小さな島 伊平屋島で行われるムーンライトマラソン(ハーフ)に参加した。
運天港からフェリーに乗り込む。
台風20号の影響で波が高く、出港して間もなくジェットコースター状態に。
船首からの波濤で虹ができ、乗客たちの歓声があがるが、
30分もすると「うわぁ~い!」という歓声が
「おげぇ~」という嗚咽にかわっていった。
港に着くが迎えがいない。
民宿に電話すると「あ、気がつかなかった。これからいきますね。」ときた。
のっけから島時間にうっとりする。
村はネコが多い。みんな呼ぶとすり寄ってくる性質のネコだ。
気性のいいネコがいる場所の住民は気性がいい、という説があるが、
民宿のおじさんもおばさんも例にもれずあたたかで、笑顔が絶えなかった。
午後5時にレースがスタート。
強い風の中、スタート直後に100人に抜かれ20キロまでに50人を抜き返すといったペースで美しい夕焼けを眺めながら淡々と走る。
5キロごとの給水で地元の小学生たちが配る水を飲み、黒糖を齧る。
時々、i-podを止めて道端のススキのざわめきや蝉(まだいるんです)の鳴き声や水平線から上ってくる満月を楽しむ。
残念ながら2時間を切ることはできなかったが、伴走のおかげで概ねイーブンペースで走れ、とても気持ちのいいレースに終わった。
(嘘。ほんとはゼーゼーの貧血)
ゴール地点で行われた後夜祭は、同行したきょんママ、スタッフK、現地で会った卒業生らとともに芝生の上でのんびり過ごす。
月明かりの下で、島民がふるまってくれる温かい牛汁や地酒(泡盛)に舌鼓をうつ。
手作り感あふれるライブを楽しみ、時に踊り、夜はゆっくりとふけていった。
走っているときは何を考えているの?とか
辛いのになんで走るの?と聞かれることがある。
何も考えないよ。いや、走りながらモノなんか考えられるかよ、という人も結構多い。
けれど常時あれこれと悩みをかかえている俺は、日々なんとなくクヨクヨと走っている。
・0~5キロ 仕事のこと・冷たいビールのこと
・5~10キロ 家族のこと・冷たいビールのこと
・10~20キロ 将来のこと・冷たいビールのこと
・20キロ以上 ビール・ビール・ビールのこと!
といった感じか。
ただ、30キロを超えると肉体的苦痛がピークに達し、もはやビールのことも考えられず、足音と呼吸をただひたすら同調させてゴールを目指している。
たったったっ・・という足音と、はっはっはっ・・という呼吸音しか聞こえない。
学生の頃、座禅を組んだことがあったが、1時間が5分位に思えたりして、どうもアレに近い感覚もある。
このわずかな時間があるから、あれこれと考えることのない忘我の時間を楽しませてくれるから、それを原資に俺はマラソンを続けているのかもしれない。
辛いけど、楽しいから飽きっぽいおれでも3年以上、走っていられるのだろう。
イスラム教のラマダンは実は苦行ではなく、祭り月のお祝いだという。
根っこが楽しいものでなければ、苦痛を伴う行為というのはそう長くは続けられないものだ。
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