生涯2冊目の本づくり
今年80歳の小生。この際にと思い立って生涯2冊目の本を制作することにした。42年前、38歳で上梓した『名駒大鑑』以来で、着手は6月。傘寿を迎えての先行きを考えての決断で、只今はその制作工程の真っ最中。内容は半世紀以上を駒と向きあって、永年のテーマ「水無瀬駒」をはじめとした研究成果や論考、あるいはその時々で各種メディアを通じて発表したり、採り上げられてきたものを集大成して『名駒大鑑』の続編とも言えるものだが、それらを1冊に纏めて残すことにも意義があると思う。
今回は自身の生きざまにも触れる要素もあって、書名を『熊澤良尊・駒と歩む』とし、読む本というより、カラー写真を多用して「観る本」を目指している。
第1章と第2章は「水無瀬駒」関連。第3章は11年間連載した月刊誌近代将棋の「駒に生きる」132ページの復刻。以下、第9章ままでの総数は270ページ。当初は240ページを想定していたものが、あれも入れたいこれも入れようと、結果的にここまで膨らんでしまった。駒に関心がある人の資料にもなればとの思いもある。
自費出版のなやみ
自費出版本の上梓には思った以上に手間と時間がかかる。前回は着手から出来上がりまでに1年半を費やした。今回はそれほどでなくてもその間は本業の駒づくりは二の次となって、ウツウツとすることもしばしばだが、思い立ったことだからと自分に言い聞かせている。
そのほかにも悩みはあって、発行部数と売価をどうするかだった。発行部数の多寡は1冊当たりのコストと売価にも直結するし、思ったように捌き切れなければ在庫の置き場にも窮しかねない。前回もこれには悩んだものの、最終的には需要動向をつかむための先行予約の広告をして発行部数を決めた経緯がある。
今回はどうか。現在は毎日500人ほどのビュアーがある自身のSNSブログ「熊澤良尊の将棋駒三昧」で自己宣伝を兼ねて、ときおり本の進捗状態を伝えているのだが、今回はかなり周りの状況が違う。
前回は広告のみでなく、時には記事として「コレコレの本が出た。興味ある方はどうぞ」と取り上げられて、その効果は絶大で、購買者数数を大きく伸ばしてくれた。
今は「週刊将棋」「近代将棋」は無く、現在の専門誌は「将棋世界」と「将棋ペン倶楽部」のみ。
細々と運営する自身のブログでは、効果のほどはたかが知れていて、あとは一般誌紙が採り上げてくれるかどうかにかかっていて、心細いのは否めない。それゆえ、今回はグッと絞っての発行部数にならざるを得ず、売価にも影響が及ぶ。これは避けることが出来ないジレンマで、思案していても前には進めない。
今は決断の時を迎えて、値段はギリギリ抑えながら、前回と同様に「エイヤー」と決めることにした。
『名駒大鑑』は2700部の発行だった。売価は当初3800円で売り出して数年後に4500円へと改定した経緯があったものの、本はことのほか好評で、将棋関連の出版社社主から「熊澤さん。この本はいつまで経っても陳腐化することはない。10年ほどで完売できる」との嬉しい言葉をいただいて、実際、そのとおり全てが出払って、後に古書店ではかなりの高値がつくようになった。
現在は校正も終わり、いよいよ印刷工程に進み、やがて本が出来上がるのを待つ。これが今の心の支えである。
(了)