52歳で退職した日本板硝子の定年退職者の会の会報が届きました。
年に1回、次回の発行は1年先ですが、それを見て、こちらも投稿しようと思って、次のような原稿を作りました。
日付は年明けで、チト、早トチリかもしれませんが、アップしますので、ご笑覧ください。
ーー 生涯2冊目の本づくり ーー 熊澤良尊
80歳傘寿ともなり、思い立って生涯2冊目の本を制作することにした。前回の『名駒大鑑』以来で42年ぶり。着手は昨年6月。自身の行く先を考えての決断であった。只今は制作工程の真っ最中で、この記事が載ったときには出来上がっているはず。
内容は永年「駒」と向きあって、水無瀬駒をはじめとする研究成果や論考などを1冊にしての270ページで、今回は自身の生きざまにも触れる要素もあって、書名を『熊澤良尊・駒と歩む』とした。
駒との関りは入社してまもなくの頃。先輩らとサークルを作って師範に八段・南口先生を迎えてのレッスンと、昼休みには将棋を楽しむ毎日だったが、宝石のような輝く駒を見て、欲しいと思った。それは「盛上げ駒」といって、プロのタイトル戦で使われるかなり高価な駒で、思い立ったのが自分で作ることだった。
ノウハウの何もわからないまま、失敗を踏み越えて半年後に出来上がった一組を南口先生に「これで教えてください」と持参したところ、「良くできている。今度の中原名人と加藤(一)九段の記念対局で使おう」と。それが後に続く幾多の幸運の始まりであった。
駒づくりが面白くなって、その楽しさを全国の将棋ファンに広めるべく「駒づくりを楽しむ会」を立ち上げようとして、念のため許可がほしいと願い出て、快諾してくれたのが当時人事係長の出原さん。ありがたかった。
話を戻して、自費出版には思った以上に手間と時間がかかる。前回は着手から出来上がるまでに1年半を費やした。今回はそれほどでなくても、その間は本業の駒づくりは二の次となってウツウツとすることもしばしばだが、そのほかにも悩みはあって、発行部数と売価をどうするかである。発行部数の多寡はコストと売価にも直結するし、さばき切れなければ在庫の山となる。前回もこれには悩んだものの「先行予約」の広告を出して部数を決めた経緯がある。
今回はどうか。現在はSNSブログ「熊澤良尊の将棋駒三昧」で自己宣伝を兼ねて、本の進捗状態をお伝えしているのだが、今回はかなり周りの状況が違う。前回は、時に記事として「コレコレ云々の本が出た。興味ある方はどうぞ」と紙誌に取り上げられて、その効果は絶大で購買者数を大きく伸ばしてくれた。 今は専門誌の半分は休刊となって、残るは2誌。あとは一般紙が取り上げてくれるかどうかだが、心細いのは否めない。それゆえ今回はグッと絞っての発行部数にならざるを得ない。
今は決断の時を迎えて、総てを「エイヤー」と決めることになる。まもなく校正も終わり、いよいよ印刷工程で、あと、ひと月ほどで「本」が出来上がってくる。そして本誌が出たころには、残った在庫の山がうず高くのさばっているだろうが、でも、それが今の心の支えである。(令和6年1月の記)
駒の写真集
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