夏の食べものの中で一番好きなのがトウモロコシ。
この時季、道路の端で売っているのを
見かけたりすると
Uターンしても買いたくなる。
最後の薄ものを剥ぎ取られ
あらわにはにかんでいる白い肌
舌を焦がしながら熱々の裸身に齧りつけば
忽ちにして少年の夏にタイムスリップ・・・・・・
ランニングに半ズボンの少年
長い昆虫網をかかげて
ミンミンにしようか アブラにしようか
それとも同時に捕らえようか迷っている
日は高く
アブラがじりじりと横に這う
そのとき婆ちゃんの呼ぶ声がして
走ってもどると
大きな笊に茹でたてのトウモロコシがいっぱい
ミンミンがひときわ近くで鳴き
虫かごの中にはまだ何もいない
あれから半世紀、きょうも蝉は鳴いているが
少年の日の蝉の方がずっと元気で大きな声であった。
唖蝉の腹しごきゐて独りなり