日光連山のふもと
青々と波打つうるわしき田園地帯。
ところどころサルビアの赤い帯が流れ
はるかで帆船のような積乱雲が育つ。
トウガラシを買いに直売所に向かう途中の
県道沿いに聳える一本の大きな楡の木。
その千手を高く広げて八月の碧空を支えている。
一里塚の名残りだろうか
周囲に木と呼べるほどのものはなく
この村のシンボルにちがいない。
近づくと夥しい数のセミの声が楡の木を揺すっている。
今年はセミが少ないのを気にしていたところへの
このセミしぐれ・・・・
まさにセミ浄土に踏み入ったような心もち。
車をとめたまましばらく
いのち懸けの声明に耳をかたむける。
夏、真っ只中である。
抱えゐて青とうがらしの息吹かな