お盆ということもあって
曾祖父の生まれた家を久しぶりに訪ねた。
与謝野晶子が歌にも残した高原山麓で
今は老いた当主が娘さんと二人で暮らしている。
当主は写真家であり短歌を詠み
ぼくの詩の理解者でもある。
高原山とは那須連山の西方に在り
かつて黒曜石が大量に産出された美しい姿の山である。
訪ねると屋敷の裏から山麓に沿っていちめん、
キツネノカミソリが群生し
西日を浴びて橙色に燃えていた。
はじめ曼珠沙華かと思ったがこの時季には早すぎて
近づいてみるとキツネノカミソリであった。
同じヒガンバナ科ではあるが
キツネノカミソリのほうが地味で野趣がありぼくは好きだ。
娘さんがジュースを出してくれようとしたが、断って
冷たい井戸の水を二杯ごちそうになった。
これぞ本当の水、美味しかった!
DNAに組み込まれた遙かの記憶だろうか
屋敷内をただよう空気の匂いに
なにかとても不思議な懐かしさを覚えた。
キツネノカミソリ、
我が屋敷にも殖やしてみようと
花が終わったら球根を分けて貰う約束をした。
但し、群生でなければこの花の面白さは判らないが。
秋蝉の今日は岬のとっ外れ