庭の金木犀がまだ咲いている。
屋敷内に清らかな芳香をただよわせて・・・・。
根元にはハチとクロが眠っている。
ハチは成犬になって捨てられた哀れな犬。
ぼくの眼を見ながらも視線はずっと遠くを見ていた。
( ほんとうの飼い主を探していたのだろう )
クロは生まれたばかりで捨てられた猫。
雨にぬれてドブネズミのようだった。
氏より育ち・・・・
かしこい猫に成長し
美術館の客を一号館から二号館へ案内してくれた。
そのハチとクロの魂が
毎年、馥郁と金木犀の花を咲かせてくれる。
ぼくはどんな花に化身するだろうか・・・・
許されるなら泰山木か朴の花になって
高きより清雅な香りを降り注いでいたい。
名を呼びつつ白雲と行く花野道