水鳥など野生生物の貴重な生息地としてラムサール条約に指定されている茨城県の涸沼(ひぬま)は、鉾田市、茨城町、大洗町にまたがる面積約9.3k㎡の汽水湖です。
海水面が上昇した縄文時代には太平洋の入り江でしたが、やがて那珂川などの土砂で河口が塞がれ汽水湖としての涸沼が出来上がりました。今でも海抜は0mです。
昨年11月、環境省が約6億円かけて整備した「涸沼水鳥・湿地センター」の2施設、すでに開館している鉾田市側の湖岸にある木造屋上付き2階建ての「観察棟鈴の音テラス」に続いて、茨城町側の湖岸に木造平屋建ての「展示施設」が開館しました。
新たに開館した展示施設は、涸沼の歴史や環境、水鳥、魚類、昆虫、植物など豊かな生態系についての学習拠点として設置されました。
館内には涸沼に生息する生き物を紹介するパネルや水槽が並んでいますが、いたって分かりやすく配置、説明されているので好感がもてました。
汽水湖は全国で56か所、関東地方では唯一の涸沼は、海、川、陸から様々な栄養が供給されることで多様な環境が生まれ、様々な生き物が生息しています。
そもそもラムサール条約とは、1971年イランのラムサールで開催された国際会議で採択された、水鳥の生息地として重要な湿地に関する条約です。涸沼では、約88種以上の鳥類が確認され特にスズガモは東南アジア地域個体群の1%を超える5000羽程度が飛来し越冬しています。
汽水湖の涸沼では約108種類の魚類のうち淡水魚は約30%、残りは海水魚と海と川を行き来する回遊魚です。よくハゼ釣りを楽しんだ仙人も、セイゴ(スズキの幼魚)、チンチン(クロダイの幼魚)、カレイ、コチなどを釣ったことを思い出しました。
湖岸の葭原に生息する昆虫の中でヒヌマイトトンボは、1971年に廣瀬誠、小菅次男両先生が発見した新種で涸沼の名前が付けられました。
シジミの産地としても知られる涸沼のヤマトシジミ、きれいな水槽に入っていますが実際は泥の中で生育し、沼で採れるのは黒色、海に流れ込む涸沼川で採れるものは茶色といわれています。
ウナギも名産で湖岸に大きな看板のうなぎ屋もあります。涸沼は海との間に魚類の溯上を遮る堤のようなものがないために、天然ウナギはシジミを除く主要な漁獲のうちで、ハゼ類の次に漁獲量の多い種類となっています。仙人の口にはなかなか入りませんが…
さてひと足早く湖岸の鉾田市側にオープンした観察施設「鈴の音テラス」は、まだ知名度が低いようですが、休日には家族連れで賑わっていました。
広々とした湖岸に設置された遊戯施設、特に芝生の滑り台に人気があるようです。
3階屋上テラスからの眺望、葦原の向こうに筑波山も見えます。
テラス上からの水鳥観察には双眼鏡の無料貸し出しも行われています。
「涸沼」のワイズユース(=賢明な利用)を推進するためにつくられた二つの施設が、「涸沼の魅力を知る情報提供拠点」、「涸沼を守り継承する活動拠点」、「涸沼の魅力に触れる利用拠点」という役割を充分に果たせることを願っています。
どちらも入場無料、休館日は毎週月曜日(祝日、振替休日の場合は翌日)・年末年始です
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