住職のひとりごと

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住職のひとりごと
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日本核武装の現実

2005年09月19日 11時33分52秒 | 時事問題
東京の東中野に「原子力資料情報室」という研究機関がある。ここから毎月ニュースレターが送られてくる。9月号には、「日本の核武装と東アジアの核拡散」と題する論文の抄録が掲載されていた。

著者フランク・バーナビー博士は、英国オックスフォード研究グループの核問題コンサルタントで、ロンドン大学の講師や、科学と世界の問題に関するパグウォッシュ会議の事務局長、ストックホルム国際平和研究所の所長などを歴任し、現在はフリーランスの防衛問題アナリスト。

もう一人の著者ショーン・バーニーは、グリーンピース・インターナショナルの核キャンペーンのコーディネーター。

まず、所々重要部分を抜粋してみよう。「長崎に投下された原爆は5キログラムのプルトニウムを含んでいたが、今日本はその9千倍の45トンものプルトニウムを持っている。60年代後半日本の有力な政治家によって原爆製造に必要な核物質とその運搬手段を手に入れることが画策された。本当の核兵器開発をしなくても、日本は事実上の核保有国になっている。日本政府は、この状態を維持している」

さらに「六ヶ所村再処理工場が動けば、日本は世界最大級の余剰プルトニウムを持つことになる」「高度の技術をもつ核兵器設計者なら、六ヶ所村で作られるプルトニウムの3~4キログラムで一個の兵器を製造できる。大量のプルトニウムがある中でこのような少量のプルトニウムの転用を知るには高度の技術を要するが将来の技術の進歩を見込んでも達成不可能である」

「日本では、世論が逆転しないと核兵器を製造する決断は下されないと想定しているが、その想定は危険である。ある一線が越えられてしまった後で反対は盛り上がるものだが、その時には既に遅すぎる」「アメリカの核の傘の下にある事実上の核保有国として、日本がすぐに核兵器を製造する必要はない。そのプルトニウム保有量は戦略的に重要である。しかし、核兵器開発の決定に向けた状況は進んでいて、世論はそれを受け入れやすくなるように弱められてきている」

「日本の核武装が中期的にアメリカにとって有利だと考えている人がワシントンにいないと考えることはできない。アメリカは既にその方向を止めにくいと暗に伝えている」「世界で第二の経済大国として、日本の政策決定者にとって重要かつ危険な教訓は、すぐに世界は核をめぐる現実を受け入れることを学ぶということである」「インドとパキスタンができることなら、日本はできる」

「日本国憲法は、アメリカの積極的な対応によって改正されつつある。日本の自衛隊は海外に派遣され、両国の合同軍事訓練は強化されている。日本がナショナリズムと軍国主義に進むという予測は、2006年に交代が予定されている小泉首相の有力な後継者候補と見なされている安倍晋三によって、より悪い方向に向かうであろう」

そして「国際社会は日本の核武装を受け入れることを学ぶであろう」「日本のプルトニウム計画は、核拡散の引き金となる」「核不拡散の方針に従ってプルトニウム利用をしないエネルギー政策へと転換することが、日本が核兵器保有を選択した世界の国々のたどった道を拒否するための第一歩である」

どうであろうか。私たちには初耳、夢夢思ってもいない展開について述べられ、現実問題としてこうした見方を外の人々はしている。私たち日本は既に事実上の核保有国であり、身に余る核兵器製造のためのプルトニウムを既に確保し、それをいつ現実化させるのかを政治上の推移を見て、その時期をはかる段階にあるという。

私たちが何も知らない間に、もうそこまで来てしまっている。近隣諸国はもとより、諸外国はそうした視点で我が国を見ている。中国、韓国の我が国に対する強硬姿勢もこの事実を織り込み済みなのであろう。だからこそ恐れている。知らされていないのは当の国民自身。自分たちが核を持つなんて、とのんきな感覚でいるのは、私たちだけなのである。

現在の核保有国のいずれもが、核保有を議論して決定したわけではない。ごく一部の政治指導者たちによって準備され、ある日突然発表されたものだという。私たちもいつその現実に向き合う日が来るとも限らない。そう思うとき、改憲が次なる照準に合わせられようとしている現在、返す返すもこの度の総選挙の結果は、私たち日本国民の無知さを象徴したものと記録されるであろう。自らの一票の重さをその時ひしひしと感じる人がせめて多くあることを願いたい。

追記、9/20各新聞一面に北朝鮮核放棄を確約と大きな見出しが紙面を飾った。北朝鮮が核実験に踏み出せば、日本の核武装も現実視されるであろうとの予測もあることを考えれば、これは一安心と言えようか。しかし、45トンものプルトニウムを我が国が保有している現実は何も変わりがないことを認識しておくべきであろう。
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