住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

根源的少子化対策

2006年08月27日 18時10分15秒 | 時事問題
私の知人に30代半ばのコンピューターのプログラマーが居る。実際どんな仕事なのか畑違いで見当も付かない。確か外資系の保険会社の嘱託のような立場だということだった。数年前には別の会社から正社員の口を誘われたが、当時はまだ遊びに熱中していて年に数回海外に出るため断ってしまった。今では請負というような状態なのではないか。

その彼が結婚してもう5年になるだろうか。奥さんは派遣の仕事で、ある会社の事務仕事をしていたが残業残業でこき使われ、少々精神的にきつくなり休業中だ。親たちは早く子供をと思っても、経済的な後ろ盾もなく、また健康も害していては子供どころではない。それは例外的なケースではなく、今の日本の若い人たちの結構多くを占める世帯の実体ではないだろうか。

8月18日の朝日新聞「検証構造改革第3部経済再生」によれば、雇われている労働者の3分の一が非正社員なのだそうだ。バブル崩壊後企業は自己防衛のため人件費を削った。この影響をまともに受けた15才から24才の若年労働者の2分の一が非正社員であるという。

99年の労働者派遣法改正では一般事務も派遣の対象となったが、04年には製造業も対象になった。非正社員は厚生年金など社会保険の対象とならずすべて自前で国民年金や健康保険を負担せざるを得ない。しかしそれさえも払えずにアルバイト生活で食い凌ぐ若者も多い。

かつて終身雇用制による安定した人生設計のもとに多くの国民が中流意識をもてる国であったわが国は、今や明日の仕事に不安を抱え、結婚も、子供も、持ち家も諦めざるを得ない現実が到来していると言えよう。そればかりか親と同居しすべて依存して暮らす若者、いや30代40代も増えている。つまり自立さえできない情況をもたらしてもいる。

少し前から新聞にCEOやらCOOという聞き慣れない言葉が並ぶようになった。CEO (chief executive officer)とは、最高経営責任者のことで、米国型企業において、経営実務に責任と権限を有するトップのことだという。米国型企業では、企業の所有と経営を分けて、所有者(株主)を代理する取締役会が、経営を行う執行役員を任命する。そのトップがCEOだ。

つまりは米国式の企業収益至上主義の、社員は常に他と比較され競争に晒される単なる使い捨ての駒という組織体のことではないか。こうした企業制度が日本の風土に適しているのであろうか。8月21日の朝日新聞1面には上場企業の30代に心の病が成果主義の普及により急増しているとある。何と30代社員の61%が心の病を抱えているとある。

少子化・男女共同参画対策担当として内閣府特命担当大臣などという聞いたこともない役職を特設してまで、多くの税金を使って政府が躍起になっている少子化対策ではあるが、根本的な原因さえ分からずに小手先の対策をいくら重ねても何の役にも立たないであろう。

私たち国民が安心して将来設計の出来る社会を作ること、それに尽きる。安易な日雇い雇用制度を改め、安定した人生設計のできる雇用を回復することが先決ではないだろうか。働き口もない若者たちをニートやら引きこもりと責め立てる無責任を問いたいと思う。

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